韓流ドラマ『愛の不時着』がコロナ禍でヒットした必然理由

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主演の一人ユン・セリを演じる女優ソン・イェジン。ソウル芸術大学を卒業した演技派の俳優だ。映画のプロモーションなどで何度も来日している。18年9月撮影

新型コロナウイルスによる外出自粛要請で、劇的に加入者を増やしたネットフリックス。その中でも注目すべきは、韓流ドラマ『愛の不時着』の異様な人気だ。韓国の財閥令嬢と北朝鮮兵士の恋愛を描いたものなのだが、「コロナが治まって海外旅行ができるようになったら、北朝鮮に行って兵士と出会いたい」と言う女性も出てきている有様だ。

ここ最近は、やや下火になっていた韓流ドラマブーム。それが『愛の不時着』によって、一気に息を吹き返したとまで言われている。なぜこの作品は、これほどまでに私たちの心に刺さったのか?

まずは物語を簡単に説明しておこう。韓国の財閥令嬢であるユン・セリ(ソン・イェジン)は、パラグライダー中、嵐に巻き込まれ北朝鮮に不時着してしまう。そこで出会った北朝鮮兵士のリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)は、何とか彼女を韓国に戻そうと奮闘する。そうこうしているうちに恋が芽生え……というもの。

まあハッキリ言って、設定だけ聞いたら「ウケる~」で終わってしまいそうなものだ。が、実際に見始めると、視聴前に抱いていた偏見などあっさり吹っ飛び、見終わった後はロスに陥るほどハマる人が続出しているのだ。

もちろんヒットの理由は複数あるだろう。主演の二人の美しさと演技力の高さ。あり得ないメロドラマ設定を、勢いと製作クオリティの高さで圧倒するという、王道の韓国ドラマであること。そして韓流ドラマの醍醐味である、男性主人公が女性にとっての理想像であること、など。しかしもう一つ、実はこれが一番大きな要因ではないかと思うものがある。それは、時世が大きく味方したのではないだろうか、ということだ。

背景に金正恩の重病説も

ネットフリックスによる『愛の不時着』の配信が始まったのは、2月23日。ちょうど新型コロナウイルスが広がり始め、人々が家にこもり始めた時期だ。

ドラマの前半は、北朝鮮が舞台である。それまでは何かと“あり得ない国”として見ていた北朝鮮。たしかにドラマでは、日が暮れるとしょっちゅう停電したり、村の人民班長とやらが頻繁に家のチェックに来たりと、日本では想像がつかないようなシーンが多く描かれている。しかしドラマを見終えてひとたび外に出てみると、まだ宵の口だというのに外出自粛で人気がほとんどない。

店の明かりも消え、隣近所には姿の見えない自粛警察が溢れ返っている。もはや何があり得る設定で、何があり得ない設定なのか分からなくなってくるのだ。それゆえ私たちは知らず知らず、平時ほど北朝鮮という世界を非現実的とは受け止めず、ドラマにすんなり入り込んだのではないだろうか。

そしてもう一つは、何といっても金正恩委員長の消息ニュースだ。金氏は4月11日を最後にぷつりと姿を見せなくなり、「コロナで亡くなったらしい」「心臓病手術が失敗して昏睡状態」など様々な憶測が飛び交い、世界中が関心を持った。

5月2日に、姿を現した証拠とする写真と動画が公開されたが、その情報をそのまま信じている人は少ない。それゆえ今、私たちの北朝鮮に対する関心は最大限に高まっている。比例して、舞台が北朝鮮というドラマへの関心も、いつも以上に高まったことは間違いないだろう。

配信スタートから3ヵ月近く経つ今も、日本のネットフリックス総合ランキングで1位を争い続けている『愛の不時着』。コロナ禍が長引きそうなこと、金正恩氏の消息がベールに包まれ続けていることを考えると、その人気はまだまだ続きそうだ。

北朝鮮兵との恋を夢見る女性たちにとっては残念なことだが……。

  • 取材・文奈々子

    '72年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。タレントのインタビュー、流行事象の分析記事を専門としており、連ドラ、話題の邦画のチェックは欠かさない。雑誌業界では有名な美人ライター

  • 写真Lee Jae-Won/アフロ

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