元阪神マートンの激励動画に豪華選手勢揃い!仕掛人が明かす舞台裏

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阪神で現役時代のマートン。日本では6年間活躍。真面目な性格で日本人コーチにもすすんで指導を受けNPB通算1020安打を記録した。14年には首位打者のタイトルを獲得

今も日本国内は新型コロナウイルスの影響を受け、スポーツ界はプロ、アマ問わず、ほとんどの競技で再開の目処が立っていない状況だ。

もちろん日本野球機構(NPB)も例外ではなく、未だにシーズン開幕日すら決定できないまま、遂にオールスター戦を中止する事態に追い込まれている。

こうした暗いニュースばかりが目立つ野球界に、実は水面下で大きなムーブメントが起こり始めているのだ。しかもその動きはリーグの垣根を越えて、日本のみならず米国や韓国にまで広がっているのだ。

GW明けのことだが、SNS上にプロ野球ファン向けにあるビデオメッセージが投稿されているのをご存じだろうか。2分20秒に及ぶこのビデオは、NPB選手を中心に現役MLB選手などを交え、計36人の選手たちが言葉を繋ぎ、新型コロナウイルスにともに立ち向かい一緒に戦おうという応援メッセージが届けている。

現在日本プロ野球選手会の会長を務める炭谷銀仁朗選手から始まり、柳田悠岐選手で締めくくられたビデオに登場する選手たちは、坂本勇人選手、山崎康生投手、吉田正尚選手、山本由伸投手ら現在の侍ジャパン主力組に加え、藤川球児投手、青木宣親選手らのベテランや、超有望株の佐々木朗希投手まで加わり、まさに球界を代表する顔触れが勢揃いしている。

しかもデニス・サファテ投手、スティーブン・モヤ選手、スペンサー・パットン投手、デビッド・ブキャナン投手(元ヤクルト、現サムスン)の助っ人外国人選手に加え、ジェームス・マッキャン選手やスティーブン・マッツ投手の現役MLB選手まで加わっているのだ。

どう考えても、普通に集まれるメンバーではない。当然のごとく疑問が生じてくるのが、なぜこのメンバーが集まり、このようなビデオメッセージを制作できたのか、という点だ。

そこで何とかビデオ公開までの裏話を取材したいと考え動き出したところ、意外な事実を知ることができた。

筆者がこのビデオを最初に発見したのは、元阪神のマット・マートン氏のツイッターだった。彼は5月9日付けで、「together」のハッシュタグをつけ、「仲間と共にメッセージビデオを作りました」というメッセージを添えビデオが投稿されていた。

どうやらマートン氏が中心人物の1人だというのは間違いなさそうだったので、早速関係者にコンタクトをとったところ、以下のような答えが返ってきた。

「マートンとは頻繁に連絡を取り合っていて、彼は常に日本のファンの人たちのことを気にかけており、いつも2人で何ができるかを話し合っていました。

そんな中で新型コロナウイルスが起こり、マートンも彼1人で自分の家で撮ったビデオメッセージをツイッターで公開したりしていて、それがいい反響があってアメリカでインタビューを受けたりしていたみたいです。

それ以降も(新型コロナウイルスの終息に)時間がかかっているので、彼から何かできないかという相談があり、機会があればやっていこうという話になりました」

こう証言してくれたのは、吉岡祐介氏だ。彼は阪神時代のマートン氏と親交を結び、その後もずっと深い交流を継続。昨年、一昨年とマートン氏が来日してチャリティーイベントを行った際も、サポートしてきた人物だ。

吉岡氏はワシントンDCに本拠を置くある財団で働いており、米国やアジア諸国を飛び回り慈善活動に従事している。マートン氏ともそうした活動を通じて知り合うことになった。

ドジャースのエースも「やりたい」

吉岡氏には個人的な友人に、選手会長の炭谷と親交のある人物がいた。その人物を通して炭谷にマートン氏の思いを伝えたところ、好感触の返事が戻ってきたという。そこから一気にプロジェクトが具体化していった。吉岡氏が続ける。

「炭谷選手1人でもよかったんですけど、彼は選手会会長ですし……。せっかくマートンも一緒に何かやりたいということもあって、海外と日本の選手を一緒に集めて1つの言葉、メッセージにして日本の野球ファンに届けられたということになりました。

とりあえず少しでも早くメッセージを届けないということもあって、炭谷選手からも『誰にでも聞いてあげるよ』と言ってもらっていたので、こちら側で選手の指名させてもらって声がけさせてもらいました。でもほぼ9割方の選手が快諾してくれました。

外国人選手は、マートン繋がりで集まってくれました。彼はご存じのように敬虔なクリスチャンなので、そうしたクリスチャンの仲間もいますし、日本でプレーした時の仲間もいます。実はマートンの方からカーショー(ドジャースのエース左腕)とか他の選手にも連絡が取れ、やりたいと言ってくれていたんですけど、時間の都合もあって今回は無理でした。

結局発案からビデオを公開するまで1週間ちょっとでしたね。すぐにメッセージ(の全文)を作って、それを選手たちに送って、集まったビデオをすぐさま編集していきました。とにかく炭谷選手がすごかったですね。彼が声をかけてくれた途端、その日からすぐに(返事が)返ってきました。毎回ラインでお礼のメッセージを送るのが失礼なくらい、どんどん(選手たちのビデオを)送ってきてくれました」

こうしてマートン氏の思いに賛同した35人の選手、OBが集まった、繰り返すが,このような顔触れが集まったことは過去に例を見ない。しかも特筆すべきことは、リーグや球団を介することなく個人レベルで集まったという点だ。

今回は新型コロナウイルスの感染状況も考慮し、できる限り早い時期にビデオメッセージを届けるため、選手への呼びかけも制限するしかなかったが、すでにマートン氏の元には今回のビデオメッセージを確認した選手たちから「機会があれば是非参加したい」や「チャンスがあれば日本に一緒に行ってプロ野球選手やファンと交流してみたい」という声が届いているようだ。

「また何かをやろうということが決まれば、もっと幅の広い、もっとすごい選手たちを集めることができると思うので、そこはすごくいいスタートになったかなと思っています」

吉岡氏が指摘するように、今回のプロジェクトが国境、国籍、リーグに関係なく“野球”という共通言語の下に選手たちが集まれることを証明してみせた。

将来的に世界中の選手が集まり、日本で一大イベントができたとしたら…。想像しただけで高揚感を抑えることができない。

  • 取材・文菊地慶剛

    1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂英雄投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始める。20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技を取材。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、近畿大学で教壇に立ちスポーツについて論じている。

  • 写真時事通信社

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