コロナ感染者の妻の苦悩「迫害が恐くて実家に報告できない…」

濃厚接触で2次感染被害に怯えながら自宅で介護した女性の実録

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Aさんが毎日記録した夫の体温の変遷。2〜3時間おきに計り医師からは「大変参考になる」と言われたという

「親には、夫が新型コロナウイルスに感染したことを今でも伝えていません。実家は九州の小さな田舎町にあり、飲食店を営んでいる。コロナに感染したと言えばスグに話が広まります。『あの店の料理は危険だから行かないほうがイイ』と、妙な噂を立てられかねない……。風評被害が恐くて、親や地元の友人への報告もできないんです」

こう語るのは、都内に住む40代の主婦Aさんだ。Aさんの夫Bさんは、メーカーに勤める会社員。3月からテレワークが徹底され自宅でも元気に働いていたが、4月6日の朝、突然体調不良を訴える。のちの検査で分かったことだが、コロナウイルスに感染し発症したのだ。

以下は濃厚接触による2次感染の恐怖に怯え、風評被害に悩んだAさんの、1ヵ月にわたる介護実録であるーー。

「6日の朝、夫の熱を測ってみると38度ちょっと。少し高いなとは思いましたが、ダルそうなそぶりを見せながらもパソコンを開き仕事をしている。この時点では『明日には熱が下がってくれればイイな』くらいに考えていました」

だが、Bさんの体調は一気に急変する。翌日の明け方には、熱が40.3度まで上昇。激しい倦怠感を訴え、布団から起き上がれない。悪寒で歯をカチカチ鳴らし、食欲低下で口にするのはスポーツドリンクや水など液体だけとなった。

「『寒い』と言うのに猛烈に汗をかくんです。一晩に3回も下着とパジャマを変えましたが、まるでサウナから出てきたように汗を吸って重い。尋常ではありません。『まさかコロナにかかったんじゃ……』と、頭の中は真っ白。ウイルスが付着していると危険なので、着替えたパジャマはスグに洗濯しました。体温も2~3時間ごとに計り、記録するようにした(掲載写真)。4日間37.5度以上の高熱が続くと、コロナの可能性が高いと聞いていましたから」

丸一日たっても、Bさんの熱は下がらない。Aさんは心配になり病院に電話をかけるが、大手は「回線が混みあっております」という音声が流れるばかり。仕方なく近所の小さな病院を訪れる。

「夫はゼイゼイと息が荒い。10m歩くのに数分かかる状態で、ようやく病院にたどり着きました。院内感染を恐れたのでしょう。病院では、通常の外来とは違う入り口から入るよう指示されます。問診票を提出し20分ほど待たされましたが、高齢の医師からのアドバイスは『4日間様子を見て熱が下がらないようなら保険所に連絡してPCR検査を受けてください』という言葉のみ。解熱剤の処方箋をもらっただけで、自宅に戻りました」

夜中に「死んでいないか」と何度も確認

Aさんが書きとめていた夫の服用した薬や漢方薬。市販のモノはコロナウイルスにほとんど効果がなかったという

解熱剤を呑むと、Bさんの熱はいったん36度代まで下がった。ホッとしたのもつかの間。数時間すると再び39度まで上がり、Bさんは布団から起き上がれなくなる。

「解熱剤で熱が下がっても、しばらくするとブリ返します。夫は意識朦朧。悪寒の影響か手の指先が紫色に染まり、ツラそうです。死んでいるんじゃないかと思い、夜中に何度も夫の様子を確認しました。コロナに感染すると、短時間で体調が急変すると聞いていましたから。

医師からは『4日間待て』と言われましたが、その間に肺炎にでもなったら元も子もありません。藁にもすがる気持ちで保健所に連絡しますが、まったくつながらない……。何十回目かの電話でようやくつながりましたが、『診察を受け病院から連絡するようにしてください』との対応です。夫が苦しそうに喘ぐ姿を見ても、どうしてイイかわからない。不安で不安でたまりませんでした」

Aさんはネットで情報を集め、一般の病院でもPCR検査を実施している所があると知る。発症から5日目。そうした病院の一つで、Bさんはようやく検査を受ける。「陽性反応が出た」と連絡を受けたのは、発症から8日目の午前中だった。その間、Aさんは2次感染の恐怖と戦いながら自宅で介護を続けた。

「私たちは1LDKの夫婦2人暮らしですが、別々の部屋で寝るようにしていました。夫が使ったモノはスグに洗い、歩いた所はソク消毒。頻繁に換気し、トイレのドアノブなども服の袖を伸ばして手を覆い直接触らないようにしていました。それでも感染の恐怖は、ヒシヒシと感じていた。いくら注意したって、濃厚接触は避けられませんから」

幸いAさんが感染することはなかったが、もう一つ頭を悩ませたことがある。周囲への感染報告だ。夫が勤務する会社にはAさんが連絡し毎日体調をメールなどで伝えていたが、彼女自身の実家への報告はためらった。飲食店を営んでおり、風評被害にもつながる。高齢で一人暮らしの母親に、心配をかけるのもためらわれた。

「実家は九州の田舎町にあります。夫がコロナに感染したとわかれば『あの店の料理は危険だ』と、噂を立てられかねない。結局、母や地元の友人へは報告を控えました。本当は、都内に住む夫と共通の仲間にも知ってほしくなかった……。変に気遣われ、関係がギクシャクするのがイヤだったんです。でも会社に報告した以上、隠すワケにもいきません。幸い心配は杞憂になり、今まで通りのつき合いができています」

陽性結果を受けた保健所からの勧めで、Bさんが入院することになったのは発症から9日目だ。

「正直、ホッとしました。コロナで息も絶え絶えの夫が家にいても、私ができるのは汗を吸った重いパジャマを洗うことぐらい。重症化したら、どうしてイイかわかりません。入院すれば、常に医師が近くにいます。人工呼吸器もある。これできっと大丈夫だ。もう安心と、自分に言い聞かせていました」

Aさんの願いが通じたのか、入院してからBさんの体調は安定。熱も36度台に収まり、再び上昇することはなかった。

「体調が良くなったからでしょう。発症から15日目には、病院から都内のホテルに移り療養することになりました。ただ身体に異常が無くなっても、今度はメンタルの問題が出てきた。ホテルではPCR検査や弁当を取りに行く時以外、部屋を出られないそうです。密室で誰とも会うこともできない。

一日中やることもなく話し相手もおらず、相当ストレスが溜まるのでしょう。イライラしているのが、LINEのやり取りでもよくわかります。私は自宅のベランダに植えている花の写真などを送り、夫の気持ちが少しでも和むようにしました」

2回連続の陰性反応で、Bさんがホテルを出たのは発症から25日後。元気になり戻ってきた夫を、Aさんはいつものように「おかえり」と笑顔で出迎えた。

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