<figure id="attachment_114627" aria-describedby="caption-attachment-114627" style="width: 808px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="140d31a4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/154e4db44876ac19d876a0acdbca28a3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114627" class="wp-caption-text">『Life &amp; Death』　画面はPC/DOS版のもの　(C)The Software Toolworks</figcaption></figure>
<p>&nbsp;</p>
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<h3>新型コロナウイルスは医療ゲームの創始者の命すらも奪い去った&#8230;&#8230;</h3>
<p>未知のウイルスがもたらす脅威は、人間の立場や知名度を問わず、誰にでも平等に降りかかる。映画スターだろうと、コメディアンだろうと、 一介の労働者だろうと、ウイルスは分け隔てなく、誰もが平等に感染する可能性がある。そんな最中の2020年４月11日、<span class="strongInContent">イギリスでジョン・コンウェイ氏(82歳)が新型コロナウイルス(COVID-19)による感染症で亡くなった。</span>ぼくはそのことに大変なショックを受けた。</p>
<p>&#8230;&#8230;ところで、<span class="strongInContent">ジョン・コンウェイって誰？</span>世間ではそうクビをひねる人が大半だろう。それは無理もない。</p>
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<p><span class="strongInContent">ジョン・ホートン・コンウェイ(John Horton Conway)</span>は、イギリスの天才数学者だ。その分野でいくつもの輝かしい受賞歴を誇る存在だが、<span class="strongInContent"> 彼の名前が一般に知られるようになったのは、他ならぬ「コンピュータゲーム」でのことだった。</span></p>
<figure id="attachment_114615" aria-describedby="caption-attachment-114615" style="width: 944px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7183f630"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/93f72eb9befceb49422c7851f291bc5b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114615" class="wp-caption-text">『LIFE』　この画面だけを見てもゲームとは思えないだろう　(C)John Horton Conway</figcaption></figure>
<p>コンウェイは<span class="strongInContent">1970年に『LIFE』</span>というゲームプログラムを発表した。それは<span class="strongInContent">フィールドに細胞状の生命体がドット(点)で描かれたもので、プログラムを起動すると、これらがアルゴリズムに従って増殖と消滅を繰り返し、生命の営みをシミュレーションしてみせる。</span>今のゲームと比べたら非常に原始的なグラフィック表現だが、コンウェイが提示したプログラムは現在のAI(人工知能という概念)の始まりであり、コンピュータの中に生命を宿らせるという意味では、コンピュータゲームの原点のひとつ、とも言えるものだ。</p>
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<h3> 現実では無理なことを疑似体験できるのがコンピュータゲームのいいところ。たとえば外科手術さえも！</h3>
<p>コンピュータゲームには現実のシミュレーターとしての側面があり、これまで戦争、スポーツ、遊び、あるいは様々な職業がゲームの題材に選ばれてきた。そのうちのひとつに「医療」もある。<span class="strongInContent">『LIFE』</span>が、その後のコンピュータゲームに与えた影響は計り知れないが、その<span class="strongInContent">直接的な影響下にあるのが「医療ゲーム」というジャンル</span>だろう。</p>
<p><span class="strongInContent">1982年に発表された『マイクローブ』(Synergistic Software)</span>は、<span class="strongInContent">極小の潜水艦で患者の体内に入り込み、治療のため患部を目指す</span>というゲームだ。潜水艦は異物とみなされ、白血球からの攻撃を受けるなどして、 治療は一筋縄ではいかない。</p>
<figure id="attachment_114618" aria-describedby="caption-attachment-114618" style="width: 800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="68cc6832"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/2b07ddf27dd6f4bbf5e7af90344ce959.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114618" class="wp-caption-text">『マイクローブ』のパッケージ写真　(C)Synergistic Software</figcaption></figure>
<p>小型化して人間の体内に入り込むとは非常に大胆な発想だが、これには<span class="strongInContent">元ネタ</span>がある。1966年に公開され大ヒットしたSF映画 <span class="strongInContent">『ミクロの決死圏 』</span>だ。脳に深刻なダメージを負った政府要人を救うため、開発されたばかりのミクロ化技術で潜水艇とドクターを縮小して患者の体内に送り込み、脳の内部から治療を試みるというものだ。映画としても心躍る設定だが、ゲームでは、それを実際に自分の手で操作できるのだからたまらない。</p>
<p>『ミクロの決死圏』の原題をそのままタイトルにした<span class="strongInContent">『ファンタスティックボヤージュ』(20th Century Fox Games)</span>というゲームもある。発売元が20世紀フォックスなので映画の正式なゲーム化ではあるが、<span class="strongInContent">人体内で白血球やバクテリアなどを撃って進むシューティングゲーム</span>に仕上がっており、<span class="strongInContent">医療ゲームと呼ぶにはちょっと無理がある。</span></p>
<figure id="attachment_114621" aria-describedby="caption-attachment-114621" style="width: 860px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1acb5962"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/860c6468223dd5c2a7fe8af2021ae1ea.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114621" class="wp-caption-text">『ファンタスティックボヤージュ』　画面はAtari2600版のもの　(C)20thCentury Fox Games</figcaption></figure>
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<p><span class="strongInContent">1983年</span>には、<span class="strongInContent">日本</span>でも<span class="strongInContent">『バイオアタック』(TAITO)</span>というゲームが登場している。これは先の<span class="strongInContent">『ファンタスティックボヤージュ』をアーケード用に移植</span>したもので、ゲームセンターで遊んでもらうなら、むしろシューティングゲームであることが都合が良かったに違いない。</p>
<p>まったくの素人でも外科医の仕事を体験できるのが、ゲームのいいところだ。<span class="strongInContent">『サージョン』(1986年、ISM)</span>や<span class="strongInContent">『Life &amp; Death』(1988年、The Software Toolworks)</span>といったゲームでは、<span class="strongInContent">患者の腹部を切開して外科手術をする</span>ことができる。ただし、かなりリアルにシミュレーションされているため、遊び気分で取り組むと大変なことになる。ほんの些細なミスが患者を死に至らしめることになるのは、ゲームも現実も同じだ。</p>
<figure id="attachment_114625" aria-describedby="caption-attachment-114625" style="width: 966px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="16892280"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/86feb658074534782891e085501d690a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114625" class="wp-caption-text">『サージョン』　画面はアミーガ版のもの　(C)ISM</figcaption></figure>
<figure id="attachment_114627" aria-describedby="caption-attachment-114627" style="width: 808px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="140d31a4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/154e4db44876ac19d876a0acdbca28a3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114627" class="wp-caption-text">『Life &amp; Death』　画面はPC/DOS版のもの　(C)The Software Toolworks</figcaption></figure>
<h3> 家庭に居ながらにして生命の神秘と深淵に触れることもできる</h3>
<p>ここまではおもにパソコン用のゲームを取り上げてきたが、ファミコンが大ヒットして以降、ゲームは急速に一般家庭にも普及した。当然、<span class="strongInContent">家庭用のテレビゲームにも医療を題材にしたものが登場</span>するようになる。</p>
<p><span class="strongInContent">1999年にPlayStation 用として発売された『クリックメディック』</span>は、これもまた<span class="strongInContent">『ミクロの決死圏』</span>のように体内に入り込んで患部を目指すゲームだが、特徴的なのはその移動方法だ。インターネットのハイパーリンク構造を応用しており、<span class="strongInContent">体内の様子を描写したテキストの中から、 行き先や体内部位を示した単語(タグ)をクリックすることで、目的の場所へ移動</span>する。<span class="strongInContent">『かまいたちの夜』などのテキストアドベンチャーの体内版</span>、といったらわかりやすいだろうか。</p>
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<div class="column">
<p><span class="strongInContent">めでたく患部にたどり着くことができたら、今度はそこに巣食っている病原体(ゲーム中では“バクルス”と呼ばれる)との対決だ。</span>こちらの攻撃に対して増殖と消滅を繰り返すバクルスの動きは、まさにコンウェイの<span class="strongInContent">『LIFE』</span>を思わせる。</p>
<figure id="attachment_115035" aria-describedby="caption-attachment-115035" style="width: 1400px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9ec00995"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/ff4fbf2ae7310fe86d1395faee90b637.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-115035" class="wp-caption-text">『クリックメディック』 開発はあの『ポケモン』で知られるゲームフリークだ　(C)ソニー・ミュージックエンターテインメント(R)</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">ニンテンドーDS用</span>では、<span class="strongInContent">『研修医 天堂独太』(2004年、Spike)</span>や<span class="strongInContent">『超執刀カドゥケウス』(2005年、ATLUS)</span>といったゲームがある。携帯ゲーム機というカジュアルなプラットフォームにふさわしく、どちらもキャラクターのネーミングやデザインがしっかりと設定され、ヒットに伴ってシリーズ化もされている。</p>
<h3>ゲームと現実の境界が曖昧になってくる&#8230;&#8230;？ウイルスを蔓延させる ゲームもあった！</h3>
<p><span class="strongInContent">2011年に登場</span>して大きな話題を呼んだのが、<span class="strongInContent">スマホ用アプリの『Plague Inc -伝染病株式会社-』(Ndemic Creations LTD)</span>だ。</p>
<p>これまで医療ゲームといえば病気の克服を目指すのが当たり前だったが、これはそのまったく逆で、<span class="strongInContent">プレイヤーは患者に感染させた病原体を全世界に蔓延させ、人類の歴史に幕を降ろすことが目的</span>となる。もちろん、あくまでもゲームの中での架空の遊びではあるのだが、現実に致死性のあるウイルスが世界中に蔓延している今、振り返ってみると、そのあまりにも不謹慎な設定にはめまいがしてくる。</p>
<figure id="attachment_114632" aria-describedby="caption-attachment-114632" style="width: 1440px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0fe1f8f6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/c11ab286c13d8be27b96e8969152833d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114632" class="wp-caption-text">『Plague Inc -伝染病株式会社-』の画面　(C)Ndemic Creations LTD</figcaption></figure>
<p>ちなみに、<span class="strongInContent">開発元のNdemic Creations LTD</span>では、新型コロナウイルス対策への財政支援として、<span class="strongInContent">「COVID-19連帯対応基金」へ合計25万ドルの寄付を行うと共に、今後のアップデートでは病気から世界を救うモードも搭載する予定</span>だという。</p>
<p>&#8230;&#8230;というわけで、このように医療や病気を題材にしたゲームをひと通り見てきて心から思うのは、世界を脅かしているコロナ禍が「ゲームだったらよかったのに！」ということだ。</p>
<p>しかし、残念ながらこれは現実だ。だからこそ世界中の医療従事者たちは、一刻も早く事態を収束させるために、今この瞬間も最前線で頑張ってくれている。そして、われわれ一般の人間も、感染の拡大を食い止めるため自粛生活に取り組んでいる。</p>
<p>家から出られないことは、思いのほかストレスがたまるものだ。それを解消するために、みんな様々に工夫を凝らして楽しんでいる。テレビゲームで遊ぶこともまた、そのひとつの方法だ。『あつまれどうぶつの森』もいいけれど、現実に集まるわけにはいかない今は、医療ゲームをチョイスしてみることで、医療関係者の苦労に想いを馳せてみるのもいいかもしれない──。</p>
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<div class="column">
<h3></h3>
<figure id="attachment_114638" aria-describedby="caption-attachment-114638" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3f72de1d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/05/1fbee15c1ad97e42ffed7206ad19d3e6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-114638" class="wp-caption-text">医療従事者を讃える動きは全世界に広がっており、バンクシーも新作を寄せた（写真提供：STUART MARTIN/UNIVERSITY HOSPITAL SOUTHAMPTON/AFP/アフロ）</figcaption></figure>
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人はなぜ物を集めるのか？ コレクターの生態を研究し続けるプロコレクター。ゲームクリエイターとしての顔もあり、代表作には『メタルマックス』(データイースト)、『スクリューブレイカー 轟振どりるれろ』(任天堂)などがある。本文中に登場した『クリックメディック』ではシナリオを担当している。

とみさわ昭仁

医療ゲームの歴史は意外に古く、1970年に開発された『LIFE』がその原点のひとつ。体内に入り込んで外科手術を行ったり、ウイルスを蔓延させ、人類の滅亡を目指したり。奥深き医療ゲームの世界を紐解く。

実は長い歴史を持つ「医療ビデオゲームの世界」をご存じですか

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