6月中断も二階堂ふみに期待 センセーショナルな朝ドラ『エール』

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若手演技派女優としての名をほしいままにしてきた二階堂ふみ。NHIKというフィールドで、どこまで個性を発揮できるか(‘19年)

映画『初恋』をひっさげで、去年カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩いた窪田正孝と、映画『ヒミズ』で‘11年ヴェネツィア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞に輝いた二階堂ふみ。朝ドラ史上最強ともいえるタッグを組んだのが『エール』(NHK)だ。

5月8日に放送された第30回で、この二人がついに結婚。天才作曲家の光と影を繊細に演じ視聴者の心を鷲掴みにする窪田と、主人公を支える太陽のようにパワフルな二階堂とのスリリングなやりとりに、心踊らせているのは私ばかりではあるまい。

「昭和を通して数々の名曲を世に送り出した作曲家・古関裕而(古山裕一)と、歌手としても活躍した妻・金子(音)をモデルにした今回の朝ドラ。”海外留学”と”音との結婚”、二つを失い追い詰められる裕一に『あなたに幸せになってもらいたい』と、涙ながらにエールを送る第29回の二階堂ふみの演技には、ネットでも絶賛するコメントが殺到。これまでの『エール』の最高視聴率も更新しています。‘18年の大河ドラマ『西郷どん』で愛加那役を演じ、西郷役の鈴木亮平に図らずも『感性の化け物』と呼ばれた二階堂の心揺さぶられる演技には改めて凄みを感じました」(ワイドショー関係者)

実はこの二人、「エール」での共演が最初から決まっていたわけではない。

「去年の2月、窪田の主演が発表された際、主人公の妻となるヒロインをオーディションで選ぶことが明らかになり、2802人に中から二階堂がヒロインに選ばれました。オーディションを振り返り、制作統括の土屋勝裕氏は『渾身の演技を見せてくれた。音という役より、音さんがそこにいるかのような感じがした』と選考理由を説明しています。二階堂クラスの女優が朝ドラのオーディションを受けること自体が稀。この役に対する彼女の並々ならない思いがあったようです」(前出・ワイドショー関係者)

「音がそこにいるかのように感じた」と制作統括に言わしめた二階堂。しかし彼女が、オーディションでそう言われたのは、今回が初めてではない。

「二階堂が日本アカデミー賞優秀主演女優賞に輝いた映画『私の男』(‘14年)でも、オーディション会場に現れた不機嫌な美少女を見て『(ヒロインの)花がいる』と熊切和嘉監督に言わしめています。二階堂には余人に変えがたい、存在感があるのかもしれませんね」(制作会社プロデューサー)

映画『私の男』は、桜庭一樹による直木賞受賞作が原作。‘93年に起きた北海道・南西沖地震で孤児になった主人公・花(二階堂)と引き取った浅野忠信演じる遠縁の淳悟(実は実父)がただならぬ関係に陥り、事件を引き起こし逃げるように北海道・紋別から東京に移り住むといったR15+指定された問題作である。

「この映画、二階堂が演じていなければ、見る人の倫理観を冒涜するだけの見るに耐えない近親相姦ものになっていた可能性もありました。現に重圧に耐えきれず、淳吾(浅野)は、壊れてしまいますが、花(二階堂)は『しちゃいけないことなんて私にはない』『私がすべて許す!』と言い放ち、近親相姦のタブーを犯す快楽ではなく、そんな意識すら持たずに自分の欲望の赴くままに生きる、そんな花を演じています。中でも、花の目線で描かれた血まみれともとれる真っ赤に染まる耽美的な情事の場面は秀逸。このシーンを演じる二階堂は、この作品でモスクワ国際映画祭・最優秀男優賞を獲った淳吾演じる浅野忠信を完全に凌駕しているといってもいいでしょう」(前出・制作会社プロデューサー)

原作とは異なり、花自身が自分の人生を選びとっているからこそ、この物語は美しい輝きを放つ。二階堂自身も『私の男』の”花”同様、女優として常に自分の人生を選びとって来た一人なのかもしれない。

23歳で挑んだ主演映画『リバーズ・エッジ』でも、そんな二階堂の女優魂がほとばしる。

「ベルリン国際映画祭でパノラマ部門のオープニング作品として上映された『リバーズ・エッジ』(‘18年)は、二階堂自身が高校時代に岡崎京子の同名漫画を読み衝撃を受け、映画化を切望した作品。ハイティーンの若者の繊細さと鈍感さが共存する特有の感覚を、23歳を迎えた二階堂が主人公・ハルナに当時の自分を投影して全裸になることも厭わずチャレンジしています」(放送作家)

クランクイン前には「自分がハルナを演じるにはもう時間がない」と心配していた本人も、撮影を終えて「口調や佇まいを過剰に意識することなく、その世界で生きることを大事にした」「この歳でやってよかった」と思いを明かしている。

そして25歳になった今、女優として選び取った役が朝ドラ『エール』の音だ。

「本人は『戦前、戦中、戦後に渡る物語で悲しい時代を経て今の明るい日本を作った人たちを役者として表現してみたい』『沖縄戦を経験した私の祖母に見てもらいたかった』と胸の内を明かしています」(番組関係者)

朝ドラの金字塔『あまちゃん』(NHK)の演出などでも知られる吉田照幸氏が、脚本も手掛けるなど話題満載の今回の朝ドラ。16歳で『ヒミズ』、19歳で『私の男』、23歳で『リバーズ・エッジ』と各世代でセンセーショナルを巻き起こして来た二階堂ふみが、25歳の『エール』でどんな爪痕を残してくれるのか。今後の展開が楽しみで仕方がない。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO島颯太

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