「賭けマージャン」報道の黒川氏 愛犬の散歩中見せていた笑顔
本当は定年して穏やかに趣味である愛犬との散歩を楽しみたかったのでは――。いま振り返ると、3月に本誌が撮っていたこのときの笑顔が物悲しい。
安倍官邸にベッタリと言われている黒川弘務東京高検検事長(63)の定年延長が閣議決定されたのは1月31日。それから3ヵ月半。事態はさらに混迷している。
5月8日、検察幹部の定年を内閣の判断で延長できるようになる検察庁法改正案が、国会で強引に審議入りしたのだ。
これに対して、ツイッター上では小泉今日子や浅野忠信などの大物芸能人が「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを付けて次々と投稿。その影響力は凄まじく、法案に反対するツイート数は500万超を記録している。
法案に抗議のツイートをした一人、落語家の立川談四楼はこう手厳しい。
「マスク2枚もまともに届けられないのに、改正案は超スピードで進める。なぜ黒川検事長の定年を延長したのか、ちゃんと答えない。人生百年、定年延長は別にかまわない。でも、最初が、官邸と仲良しだったことが知られている黒川さん。コロナに本気じゃないからこういうことができる。順番を間違えています」
作家の島田雅彦氏はこう語る。
「首相の原稿棒読みとは違って、問題意識を持つ人たちが自分の言葉で抗議し、共有されている。中東の独裁政権を倒したのも最初はSNSから。検察が政権の犯罪を見逃しても、市民は見逃さない。共有されたツイートの総数が選挙に反映されれば、無能な無法者を政権から追い出すことは容易です」

だが、当の安倍晋三首相は反対の声を無視し、国会で「適切」と繰り返すばかり。黒川検事長と任官同期で元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士が語る。
「結局、黒川検事長の定年延長を事後的に正当化することが目的としか考えられません。傲慢そのものです。検察の権限は強大です。だからこそ政権とは距離を置かなければならない。検察が人事を介して政権の意向を忖度しながら捜査を行うようになったら大問題です」
ジャーナリストの青木理氏も言う。
「森友・加計学園問題、『桜を見る会』問題など、数えきれない疑惑があるなか、黒川検事長と政権の間で何か密約があるのかと勘ぐりたくもなります。河井克行前法相の公職選挙法違反事件をめぐる広島地検の捜査も大詰めを迎えていて、政権が検察を抑え込もうとしていると思われても仕方ないでしょう」
多数の批判を受け、政府は今国会での検察庁法改正案の成立を見送った。さらに黒川検事長は、「週刊文春」の賭けマージャン報道を受け5月21日までに辞意を表明。国民が本気で怒っていることに、安倍首相は忖度したほうがいいのではないか。
『FRIDAY』2020年5月29日号より
撮影:濱崎慎治写真:時事通信社