爆問・田中が新MCの『ケンミンSHOW極』なぜ一人勝ちできた? | FRIDAYデジタル

爆問・田中が新MCの『ケンミンSHOW極』なぜ一人勝ちできた?

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
『秘密のケンミンSHOW極』の公式サイト
『秘密のケンミンSHOW極』の公式サイト

新型コロナウイルスの影響で、春の新番組が内容変更や無期延期に追い込まれる中、放送13年目の大リニューアルを行った『秘密のケンミンSHOW極』が快進撃を見せている。

同番組は今春からMCがみのもんたから田中裕二に交代して、4月9日にリスタート。世帯視聴率は、9日が11.6%、16日が13.2%、23日が13.0%、30日が13.8%、5月7日が13.6%と時間帯トップの高水準を記録し続けている(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

リニューアル前は10%前後を推移していただけに、わずか1ヵ月で約3%以上アップしたのだから、関係者は「してやったり」という心境ではないか。放送内容がほとんど変わっていない上に、「コロナ禍で新たなロケができない」という危機をはね返していることも含め、今春最大の勝ち組と言っていいだろう。

なぜ『秘密のケンミンSHOW極』は、リニューアルからわずか1ヵ月あまりでここまで支持を集めているのか。その理由を読み解いていきたい。

「田中=転校生」設定がドハマり

まず外出自粛で在宅率が上がっていることは加味すべき事実だが、そのチャンスを結果につなげているのは、やはり田中の存在が大きいのではないか。

MCが、みのから田中に変わったことで、いい意味で番組がいったん“ふりだし”に戻った。田中は「東京出身で地方のことは知らない」というポジショニングを取り、1つ1つのローカルトークに驚いて久本雅美から「いちいち引っかかってたら前に進まないでしょ」とツッコミを入れられ、スタジオゲストからは非難の声を浴びて「転校生イジメないで!」とフォローされている。

その田中を“転校生”とみなす演出が番組を若返らせているように見えるのだ。前任の、みのと比べるまでもなく田中は小柄な見た目も、一人だけ知らないというリアクションも、転校生というフレーズがフィットする。

制作サイドはそれをわかった上で、「ケンミンビギナー田中 春期講習祭り!」「想像以上にスゴかった衝撃の実態を大公開 わかっちゃいるけどスゴかった祭り」「転校生 田中裕二 春期集中講座」「新MC田中の真価を問う!ケンミン検定」などのコーナーを企画。これまでに放送したローカルネタを田中にぶつけていくという構成は、視聴者が田中と一緒に振り返りながら楽しめるとともに、新たなロケが難しい現状を打破するものとなっている。

さらに田中は大阪府民から「大阪でおもろいか言うたらおもんないような気も」「笑ったことはないかな」とバッサリ斬られても苦笑いするだけで気にしない。また、「他の出演者に言い負かされるシーンで映像上の姿を小さくされてしまう」などのイジリを笑い飛ばすおおらかさを見せている。

この番組は郷土愛を爆発させるあまり対抗意識を燃やすものの、けっきょく互いに「凄い、ウマい、面白い」と言い合う牧歌的なムードで進んでいくというのがお約束。そんな牧歌的なムードと、それを好む視聴者層に、田中の姿がハマっているのは間違いないだろう。ともあれ、「山梨の名物は?」と聞かれて即座に「トシちゃん(田原俊彦)」と返す自然体の田中が、マンネリが叫ばれがちだった番組に鮮度をよみがえらせたのは確かだ。

新MC・田中裕二を“転校生”とみなす演出が番組を若返らせている/写真 アフロ
新MC・田中裕二を“転校生”とみなす演出が番組を若返らせている/写真 アフロ

制作は大阪・読売テレビ

もう1つ見逃せないのは、制作サイドのコロナ対策。5月7日と21日の放送は、「大阪1県SP」と掲げ、2週に渡って大阪だけをフィーチャーしているが、これが示唆に富んでいる。

当番組の制作は日本テレビと思われがちだが、実は読売テレビであり、大阪は地元。大阪府民とその文化、さらにこれまで繰り返してきた大阪イジリは、番組のシンボルだっただけに、最も自信のあるネタを投入して勝負を賭けたのではないか。

大阪出身の久本とケンドーコバヤシが熱っぽく語り、それに田中が「ぜんぶおかしいよ。何考えてんの大阪」と強めに返して盛り上げたのは、そんな制作サイドの意図を汲んだからだろう。現在は苦しい時期だが、ここで“東京の田中vs大阪の人々”という図式を作り上げてしまえば、今後はさらなる看板企画になっていきそうだ。

話を冒頭の世帯視聴率に戻すと、この番組はもともと10%前後ではなく13%以上のポテンシャルを秘めている。関東エリアを除く全国の道府県にとっては、地元が全国放送で採り上げられる誇らしさがあり、一方で東京に住む人々の中にも地方出身者が多いだけに親近感を抱いて見てもらえる可能性が高い。

さらに言えば、東京では大半のご当地料理が味わえるほか、全国のアンテナショップも人気スポットとなっている。本来、47都道府県すべてにネットワークを持つNHKが手がけるようなスケールの番組であり、それをキー局の日本テレビではなく大阪の読売テレビが制作していることが何とも意義深い。

まだ思うようにロケやスタジオ収録ができない苦境が続いているが、全面解禁されたら、日本各地の人々が元気な姿を見せ合う、これまで以上に活気のある番組になるだろう。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本強のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

Photo Gallery2

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事