『行列の女神』に見る飲食店テイクアウト戦争で成功するヒント | FRIDAYデジタル

『行列の女神』に見る飲食店テイクアウト戦争で成功するヒント

飲食店の立て直しのヒントが満載のドラマだった!

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『行列の女神〜らーめ才遊記』に主演している鈴木京香。相変わらずの美貌は衰えていない
『行列の女神〜らーめ才遊記』に主演している鈴木京香。相変わらずの美貌は衰えていない

現在、新型コロナウイルスによる影響で各局のドラマ放送が中断する最中、すでに収録を終えて放送している『行列の女神~らーめん才遊記~』(テレビ東京系・毎週月曜22時〜)。最終話まで通常通りに視聴ができるという、今では貴重な作品だ。

ふと思った。敏腕フードコンサルタントの女社長が、次々にラーメン店を立て直していく内容には、飲食店にとって気づきにくい、忘れがちな再建のテクニックが潜んでいる気がする。営業時間の自粛、今まで経験のなかったテイクアウト、いつ営業を再開すればいいのかタイミングの摑めない休業。この状況下に突如置かれてしまった人たちに捧げるポイントをドラマで振り返りたい。

「お客様は情報を食べに来ている」

まずはドラマの簡単なあらすじを説明しよう。

“芹沢達美(鈴木京香)は日本一のラーメン店と言われる『らあめん清流房』のオーナーであり、フードコンサルティングを請け負う『清流企画』のやり手社長。経営困難に直面するラーメン店を次々に軌道に乗せていく。その『清流企画』に入社してきたのは、著名な料理評論家の母、そしてズバ抜けた料理センス持つ汐見ゆとり(黒島結菜)。この新入りを含めた社員たちとともに、芹沢はラーメンビジネスを開発していく。”

私のこのドラマの率直な感想は、鈴木京香は美しすぎて困ることである。ほんの少し前までは『グランメゾン東京』(TBS系・2019年)で、三つ星フレンチの腕を奮っていたシェフが、今はラーメンと向き合っているというギャップもなんのその。ドラマのキャラ設定である“クール”“毒舌”と美貌によって、また新しいフードストーリーを生み出しているのだ。

ラーメンといえば、カロリーの塊であることは百も承知しているが、彼女が麺をすするシーンを見ていると、不思議と罪悪感もなくなる。これも私は51歳とは信じがたい、彼女の圧倒的な美しさの為せる技だと思っている。
そして放送時間は小腹も空いてくる午後10時。思わずインスタントラーメンに手を出しそうになる、飯テロドラマでもあるのだ。

他にも見どころは、芹沢が社員にも自分にも厳しさを見せてくること。最近では、社員の汐見が自信満々だったコンペに負けた後にこう言った。

「料理が美味しいだけじゃ店は成功しないのよ。(中略)ほとんどの客は複数の店を食べ比べて美味しい方を選んでいるわけじゃないの。(中略)客のほとんどは保守的で、知名度や誰かの推薦を頼りに店を選んでいる。そこで食べた味に満足して帰っていく。つまり彼らは情報を食べているのよ」

情報を食べるという発想には、SNSでも大きく反響を呼んでいた。確かに私も行ったことのない店に出かける時は、そういう意識が働いているかもしれない。そしてこの重みのあるセリフを伝えてあげたい人たちがいた。

店の食事とテイクアウトは“別モノ”と頭に置く

現在の東京都内は、自粛期間中。客側が飲食店に出かけることを憚られている。結果、多くの店がテイクアウトやランチなど飲酒を伴わない形態の営業に取り組んでいる。中に飲食店を経営している私の友人たちもいて、話を聞くとやはり苦戦を強いられているのだとか。

私は食のプロではないけれど、出版社に入社してメディアで仕事をするようになって15年以上、ケータリングやロケ弁、差し入れの発注をしてきた。それだけに店で食べるのではない、テイクアウトに触れてきた経験だけはある。特に近年では、SNSによる見た目も栄養価も趣向を凝らした合戦が続いている。発注する私たちはそれに応じるかのようにモデルやタレントを喜ばせようと、たくさんの店を検索して、撮影現場に持ち込む。

その視点から考えると、テイクアウトと飲食店で食べるものは全く別物だ。それぞれにしか叶えることのできない美味しさや楽しさがある。

この自粛要請が始まってから、何店舗かの発泡スチロールに詰められたテイクアウトを購入してみた。確かに味は劣らないけれど、何かが違う。時間経過による見た目の劣化や、嚙みごたえなど、ちょっとした疑問を料理に感じてしまってから、徒歩10分圏内の店以外では購入を控えるようになってしまった。やはり『餅は餅屋』なのだ。

それでも飲食店にはやっぱり頑張って欲しいと願う。今、私たちは何もできないけれど、営業形態を変えざるを得ない今、芹沢の言う『料理が美味しいだけじゃ店は成功しない』のだとしたら、足元を見直してはどうだろう。ドラマの中では店舗の立地条件、客層のマーケティングなども常々、視点を変えて放送されていて、飲食店の基礎になるようなヒントが溢れている。

例えば居酒屋として人気を得ていた店であっても、テイクアウトを毎回常連客が買いに来ることを設定していては無理がある。居酒屋は近所の八百屋ではなく、馴染みの顔を見て飲んで癒やされるためのスペースだ。料理だけでは満たされないし、『知名度や誰かの推薦を頼りに店を選んでいる』のなら、他店の料理も気になって買ってみたくなる。

立地条件を見直して、家族向けのメニューなのか、ターゲットはどの年齢層なのか改めて確認することをお勧めしたい。実際に私の馴染みの店の一店が、閑静な住宅街に立つ小洒落た立ち飲み屋から、うどん店に業態やメニューを一新して、店を盛り上げている。このまま自粛解除をしたらどうするのかと聞くと、

「このままでは続けません。以前の業態に戻して、混雑する時間帯や客層を勘案して考えます。すぐに元のようには戻りませんから」

とのこと。そう、元の状態に完全に戻るまでには時間がかかる。今の状況は付け焼き刃ではなく、しばらくは続くものだと考えなくては厳しい。衛生面でも食品管理が厳しくなってくる今こそ、原点回帰をはかろう。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真Rodrigo Reyes Marin/アフロ

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