K-POP絶好調を支える「オンラインライブ」儲けのカラクリ | FRIDAYデジタル

K-POP絶好調を支える「オンラインライブ」儲けのカラクリ

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防弾少年団のライブの様子。18年10月にパリで行われた「韓国・フランス友情コンサート」にて
防弾少年団のライブの様子。18年10月にパリで行われた「韓国・フランス友情コンサート」にて

全都道府県の緊急事態宣言解除が目前に迫っている。が、変わらず“3密”回避は求められるため、アイドルや歌手は生命線ともいえるライブ活動が当分できそうにない。ファンを失うのではないかとやきもきしているのではないだろうか。

そんな中、韓流エンタメ業界は商魂のたくましさを発揮。東方神起やNCT127など人気アイドルグループを抱えるSMエンターテイメントは、オンラインコンサートを活発におこなっているのだ。これがなかなか感心する上手さなので、詳しく紹介したいと思うーー。

韓流ファンには広く知られたストリーミングサービスに、「VLIVE」というものがある。これはLINEの親会社であるNAVERが運営しているもの。防弾少年団(BTS)など人気韓流スターが、ちょっとしたオフシーンやパフォーマンス映像などを配信しており、視聴は基本的に無料だ。

このVLIVEがコロナ禍の中、新たに「Beyond LIVE」なる、有料のオンライン専用のコンサートを始めたのである。

具体的にどのようなものかというと、ごく簡単には、無観客の中アーティストが生でライブをおこなうというものだ。それだけならYoutubeやインスタライブなどでもできるが、Beyond LIVEはオンラインコンサート専用としてさらなる工夫がされている。たとえば本格的なデジタル映像を組み合わせた舞台演出や、ファンがチャットメッセージを書き込みそれをアーティストが瞬時に読んで反応する、など。

1回のライブで収益3億円

が、最大の特徴は、会場とファンをリモートでつなぎ、アーティストとファンが相互にやり取りする、というシステムにあるだろう。そのためライブ会場の壁面には、トークタイムになると、抽選で選ばれたファンの顔が無数に映し出される。そして、さらにその中から選ばれたファンは、アーティストに直接質問をし直接答えてもらえるのだ。

実際のコンサート会場では、座席番号で選ばれたファンがマイクを渡されアーティストに質問するというシーンがよく見られる。このチャンスが、会場に足を運ばなくとも世界のどこからでも得られるというのだから、ファン心理をがっちり掴める。

しかも1公演の視聴料は、使用する機器によっても違うが、3500円前後。なかなかいい価格だ。これに乗っかったのが、韓国の最大手事務所・SMエンターテイメント。お抱えのアイドルグループを使って、Beyond LIVEを積極的に開催し稼ぎまくっているのだ。

最近の韓流アイドルは、アジアを飛び越して全米進出に熱心だ。先陣を切ってBeyond LIVEをおこなったSuperMの場合、昨年、韓国からではなく先にアメリカからデビューを果たしている。そのためファンは全世界に広がっており、何とこのBeyond LIVEは7万5000人ものファンが視聴。視聴料を3500円とすると、単純に2億6000万円以上稼いだ計算になる。

さらにこのBeyond LIVEでは、同時にデジタルペンライトやTシャツなども販売しているので、その売り上げも加えると収益は3億円近くになったのではないだろうか。

その後はwayV、NCT DREAM、NCT127と、SMエンターテイメントの人気グループが続々とBeyond LIVEを開催。5月17日に開催したNCT127は10万4000人が視聴したというから、こちらも3500円として計算した場合、何と3億6000万円以上となる。しかもこのライブ、実際のコンサートほど大がかりな会場セッティングも必要ないし、コロナ禍ということもあってかバックダンサーやバンドもいない。経費がほとんどかからないため、視聴料はほぼ丸儲け状態だろう。かなり美味しい商売だ。

これに味をしめたのか、SMエンターテイメントはさらに、日本でも大人気の東方神起やスーパージュニアのBeyond LIVE開催も決定。東方神起は昨年の5大ドームツアーで60万人の観客を動員したというのだから、世界中のファンが視聴できるBeyond LIVEとなると、一体どれだけのおカネを稼ぎだすのだろう。K-POPビジネスの商才、あな恐ろしや、という感じだ……。

日本で浸透しない理由

かたや日本の大手アイドル事務所・ジャニーズは、延期や中止になったコンサートチケット代の返金に手間取り悪戦苦闘する日々。もちろん何も活動していないわけではない。「Johnny’s World Happy LIVE with YOU」と銘打って、Beyond LIVEほど本格的ではないが、人気グループが生ライブをおこないその模様を配信している。が、これは基本無料。

またMr. Childrenの櫻井和寿とコラボし「Twenty★Twenty」なるユニットを結成。チャリティソングをリリースする予定だが、これもあくまで社会貢献活動として。唯一、嵐が「嵐のワクワク学校」を有料でオンライン配信するが、こちらもその収益は医療従事者の支援に役立てるらしい。どれもコロナと戦うファンや社会を元気づけるためで、営利目的が主ではない。

K-POPといえば、国も後押しするほど力が入れられている業界。そのため多くの事務所はこれといった人材は幼い頃から練習生として囲い込み、徹底した練習と競争のもと育て上げ、満を持してデビューをさせる。それでも同様の実力を持ったグループが次々と現れるため、活躍できるのはごく一握りだ。競争の激しい市場とあって、国民の見る目も厳しい。アイドルたちは少しでもハングリー精神を失うと、あっという間に見抜かれ、その人気は失墜していく。

対してジャニーズは、様々な努力をもって、男性アイドル市場における一強体制を作り上げてきた。結果、ファンはそのパフォーマンスの精度を問うより、「長い目で成長を見守る」という傾向が強くなった。そのため、ちょっとやそっとのことでは離れていかない。そんな優しいファンたちに囲まれている事情も、日韓の差に現れている。

くわえてジャニーズは、稀にみるデジタル後進事務所だ。インターネットが普及してからも、長きに渡って所属タレント画像のネットへの転載を禁止していたし、所属タレントがSNSを用いて発信することも許可していなかった。いまだに全国のジャニーズショップでは生写真を販売し、それを求めて連日開店前からファンが行列する、というアナログぶりだ(店舗は現在臨時休業中)。最新のデジタル対応を望むのは酷というものだろう。

もちろんジャニーズにはジャニーズの良さがある。が、今回は、デジタルツールを用いて自分たちにとってもファンにとってもウィンウィンの商売をおこなった、韓流アイドルたちに軍配が上がった形だ。

  • 取材・文奈々子

    72年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。タレントのインタビュー、流行事象の分析記事を専門としており、連ドラ、話題の邦画のチェックは欠かさない。雑誌業界では有名な美人ライター

  • 写真ロイター/アフロ

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