在阪AVプロ社長が「自粛解除後」に抱くある不安

もしもこの世界に

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面接に来る女性は減ったけれど…

約2カ月続いた緊急事態が解除され、日本経済も少しずつではあるが、日常を取り戻し始めている。

そんななか、とある業界でも「コロナ前と同じ平穏」が戻りつつあるという。

「緊急事態宣言の直後は、本当に『面接』に来る女性が激増しました。経済活動の自粛が続くなか、夜の店が一斉に閉まってしまい、そこで働いていたホステスさんや風俗で働いていた女性が、なんとか収入を得て苦境をしのごうと駆け込みでやってきたんです。ようやくそういう『駆け込み希望』が減ってきて、コロナもひと段落したのかな、と感じています」

こう明かすのは、大阪でAVプロダクションを経営するA氏だ。A氏のプロダクションは、飲食店や漫画喫茶などに置かれる求人誌にAVモデル募集の広告を出し、この業界に興味のある女性に「一度面接に来てみませんか」と呼び掛け、数多くの女性を面接、デビューさせてきた。

コロナ禍、水商売の経験のある女性がたくさん面接に来た…とは少し意外な気もするが、A氏はこう説明する。

「実は、AVの世界で頑張ってみたいという女性は、普段は学生やフリーター、あるいは主婦といった人たちのほうが多いんですよ。風俗で働いている女性や人気のホステスなどは、夜の世界のほうが稼げることがよくわかっている。AVの世界は一部のトップ女優は稼げても、それ以外の方々はそこそこ…というのが実情ですから。

一方で、AVの世界に興味がある女性は、風俗で働いて不特定多数の男性と性交渉を持つことに抵抗感を持つような人が多い。つまり夜の商売は未経験という女性が本当に多いんです。

世間に顔を出すリスクはあるけれど、覚悟を決めてAVの世界で有名になりたい、挑戦したい…そう思っている女性がほとんどです」

5月後半になり、夜の店も営業を再開し始めたので、「風俗嬢やキャバ嬢、ホステスからの面接の問い合わせは、いまはほとんどなくなりました」とA氏は苦笑いする。

一方でA氏は、「これから日本経済が不況に突入する中で、仕事を失うことになる人も増えるでしょう。そうすると、4月のときのように、この業界を志望する女性が増えるかもしれない。ただし、漠然としたイメージだけでこの世界を目指すのはやめてほしいのです」と警告する。

「アフターコロナ」という言葉がよく聞かれるようになったが、A氏はこれを機会に、AVの世界に興味があるという女性や、偏見を持っている人たちに知っておいてほしいことがあるという。

「それは『簡単に成功する世界ではない』ということです。AVに出たらすぐに稼げるかと言えば、そんな単純なものではありません。うちはスカウトでの勧誘は一切やっていませんが、悪質なスカウトから『AVに一本出たら100万円もらえるよ』なんて甘い言葉につられて、そのままデビューしてしまう子もいますが、一本で100万円のギャラをもらえる女優なんて、一握りしかいません。

どのくらいのレベルならいくら稼げるのか、まずはしっかりとプロダクションの話を聞いて、現実を知るべきです」

目標を定めておいてほしい

A氏のプロダクションは、スカウトによる勧誘を一切やっていない。前述のとおり、求人誌に広告を出し、興味を持った女性が自分から連絡をして面接を受けるというスタイルを取っている。

「その広告を見て面接に来た子には、大体どのぐらい稼げるのかといったことや業界のルールについてしっかり説明します。逆に、こちらからは『なぜAVに出たいのか』という目的をしっかり聞きます。おカネが目的なら、いくらが目標額なのかを聞いて『じゃあ、その額を達成するには、大体これぐらいの期間働かないとダメだね。それで、目標額に達成したら引退しましょう』と、ゴールを決める。

『なんとなく稼げる』と思っている女性や『イヤになったら辞める』といい加減に考えている女性は、絶対にうまくいきませんし、精神的にもダメになっていくことが多い。目標を持っている女性でないと、ただツラい思いをして続けることにもなります。

あくまでうちを通じて仕事をした場合、という前提ですが、人気女優になれない限りは、一回の撮影で女性が受け取れるのは3万円~20万円といったところ。女性には、『大体ひと月分の給料ぐらいだと思ってください』と伝えています。これ一本で仕事ができるほど甘くはないから、できる限りいまの仕事をつづけたほうがいいよ、とも伝えています。

その程度なのか……と驚く人もいますが、そういう相場観を知ったうえで始めるのとそうでないのとでは、その後の覚悟が全く変わってきますから」

もちろん、ルックスが良いほうが人気も出やすいが、A氏は「顔がいいだけではこの仕事は続かない」と断言する。

「言うまでもなくAVの世界も人と人のつながりで出来ていますから、事務所や撮影のスタッフに明るく挨拶が出来たり、気遣いが出来たりという女性じゃないと、次の仕事がなかなか回ってこなかったりするのです。

また、継続的な努力も必要。いまならツイッターやインスタなんかでこまめに撮影の様子や日常を投稿して、少しずつファンの輪を広げていく。AVを制作するメーカーはこういう投稿もこまめにチェックしていますから、『これだけ努力しているなら、この子を次も使ってみようか』となります。

こういう話をして、『そんなに面倒な世界なんですか。それじゃいまの仕事と一緒じゃないですか』という反応をする女性もいますが、それもまた長続きしないタイプだと思います。よほどの突出した能力がない限り、どこの世界だって気遣いと努力が重要なんです」

A氏の話は、きらびやかな世界をイメージしている人にとっては、少しネガティブで、かつ夢のない話に聞こえるかもしれない。しかし、A氏は「可能な限り現実を知ったうえで、それでも興味を持った女性にだけ、門戸を叩いてほしい」と力を込めて言う。

「コロナの影響で、AV業界だってどうなるかわかりません。経費削減の波がやってきて、業界全体が苦しくなるかもしれない。一方で、仕事を失う女性も増えるでしょうから、そこに『AVなら稼げるよ』と甘い言葉で声をかけて、この世界に誘い出してくる人も出てくるはずです。

この世界に興味を持つ人が増えることは、自分の職業としては歓迎する反面、まったく実情を知らない女性がこの世界に入ってきて、思わぬ苦労をしたり、追い詰められたりする姿は絶対に見たくありません。

AVの世界は、そんなに甘くない。アフターコロナの選択肢の一つとして、もしもこの世界に入ることを考えている人がいたら、しっかりと情報を収集して、考えてからにしてほしい。そのために、こうしてできる限りの実情を伝えたのです」

A氏の切実な訴えが、必要な人に届くことを願うばかりだ。

  • 取材・文加藤慶

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