『エール』最高視聴率更新の原動力?「紺碧の空」を巡る早慶場外戦 | FRIDAYデジタル

『エール』最高視聴率更新の原動力?「紺碧の空」を巡る早慶場外戦

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早大OGの私、歓喜!

「朝ドラ、見てる? 見てるッ!?」

先週、社内でばったり会った50代男の同僚やら上司から、次々とこんな言葉をかけられました。そうです、5月18~22日の朝ドラ『エール』は「紺碧の空」週でした。

NHK『エール』公式ツイッターより
NHK『エール』公式ツイッターより

早稲田大学第一応援歌「紺碧の空」は、主人公・古山裕一(こやまゆういち)のモデル、古関裕而(こせきゆうじ)氏が、最初に作ったヒット曲と言っても過言ではないでしょう。作曲した当時の古関氏は、まだ21歳。なんと学生たちと同じ年頃だったんですね。

「紺碧の空」といえば早慶戦。ヒットが出て塁が埋まれば「コンバットマーチ」、そして見事得点すれば「紺碧の空」…これが1塁側スタンドで声を枯らし、(無駄に?)青春を燃やした早大生のお約束です。私もその一人。声をかけてきた同僚や上司も皆、そんな感じのワセダOBたちでした。

彼らのなかの少なからぬ人数が、今も時折(人によっては何十年と続けて)、早慶戦になれば神宮球場に足を運んでおります。ただ暗黙のルールでOBは学生スタンドに入らず、バックネット裏で〝こころなしか1塁側〟に座っているのです。

1年前の春季早慶戦。〝こころなしか1塁側〟の内野特別席に座るOBたち。このシーズンから早大は元プロ野球選手・小宮山悟氏が監督となりました。学生時代、彼の〝号泣敬遠〟をスタンドで見届けた私にとっては感慨ぶかいものがあります
1年前の春季早慶戦。〝こころなしか1塁側〟の内野特別席に座るOBたち。このシーズンから早大は元プロ野球選手・小宮山悟氏が監督となりました。学生時代、彼の〝号泣敬遠〟をスタンドで見届けた私にとっては感慨ぶかいものがあります

正直に白状すると、私は先週まで『エール』の熱心な視聴者ではありませんでした。ですが、前週金曜日(5月15日)朝、偶然ついていたテレビから「私は、早稲田大学応援部5代目団長、田中隆ち、言います!」という大声が聞こえてきて、思わずリビングに駆け込んだ瞬間、「あっ、『紺碧の空』作曲か!」と気がついたのでした。もしかしたら、私と同じような人間もけっこういるかもしれません。NHK、ナイス戦略です。

全学の中で早慶戦に通いつめる学生は、実を言うとそう多くはありません。というか、両極端に別れます。「一回も行ったことない」派と「毎回行く」派。私の在学中は、劇中の状況とそっくりで、慶應に連戦連敗、4年間で1度も優勝できない「早稲田大学野球部・冬の時代」でした。そのため残念ながら「行ったことない」派が多かった。

しかし『エール』の視聴率を「紺碧の空」週で下げるわけにはいきません。急に早慶戦フリークだった、数十年前を思い出した私は、かつて「くたばれ慶應」という揃いのトレーナーを作った友人達にLINEで檄を飛ばし、「今週だけでも『エール』を見よう!」と呼びかけたのです。

「紺碧の空」で視聴率が22%越え!

幸い「紺碧の空」週は、月曜日に『あさイチ』の近江友里恵アナが「紺碧の空が好きすぎて、1年の時に応援部に入ったけれど、練習がハードで途中で辞めてしまった」と自らの黒歴史を明かしてくれたことでスタートダッシュ! 三浦貴大さん演じる応援部団長・田中隆の博多弁も「ワセダあるある」です。

実際に古関氏に作曲を依頼した団長も福岡出身でしたが、私が大学に入学したときも、「五木寛之の『青春の門』を読んで早稲田大学を目指しました!」という同級生がいたなぁ…。九州男児とワセダは相性がいいのですよね。

▲『エール』劇中の早稲田大学応援部。後列左端と右から2人目の方は〝リアル応援部OB〟だそうです

在学中、応援部のリーダーの友人もいた私にとって、ぴんと伸びた背筋と後ろ手の組み方、「フレー」のエールで肩から手の先まで一直線に伸びた腕など、「よく再現してるなぁ」と感心しきり。「紺碧の空」週の第一回目を終わって調べたら、やはり早稲田大学応援部が全面協力していたのでした。

早慶戦フリークとして嬉しかったのは、慶應の応援歌「若き血」のエピソードもあったことです。昭和の大歌手・藤山一郎(劇中では山藤太郎となっています)が「若き血」を歌っていることは知っていましたが、歌唱指導もしていたんですね。

たぶん3塁側(=慶應側。早慶戦はずーっと早稲田が1塁側、慶應が3塁側と決まっています)の人々も同じだと思うのですが、早慶戦の間はお互いにグラウンドと相手側応援席に向かって声を張り上げているため、早稲田の応援席にいると大音量の「若き血」が聞こえてきて、自然と覚えてしまうものなのです。

今回、久しぶりにチェックしたら、私は「若き血」だけでなく「慶應義塾塾歌」も歌える自分を発見しました。それにしても「若き血」、いい歌です。

こうして慶應も巻き込んだ描かれ方をしていたせいか、5月19日には22.1%とそれまでの最高視聴率を更新! そして、ここで慶應義塾大学応援指導部が、Facebook上で粋な〝エール〟を送ってきました。

以下、慶應義塾大学応援指導部のFacobook、5月22日の投稿から抜粋。

地上波で『紺碧の空』の注目を集めている早稲田に対して、我々が長年積み上げてきた縦の繋がりで『若き血』を世間に注目させたいと考えております。
【5月24日(日)19時】までにこちらの投稿の【シェア&いいね】を是非お願いいたします。
『若き血』と『紺碧の空』どちらが熱く影響力のある応援歌なのか、Facebook上で早稲田と競い合いましょう。そして皆さんの力で『若き血』を世界の果てまで届けましょう!

第一応援歌慶早戦〜早稲田大学応援部への挑戦状〜現在放送中である、NHK連続テレビ小説「エール」にて宿敵早稲田の第一応援歌『紺碧の空』の誕生秘話が描かれ、全国の方々に大きな注目を集めました。しかし、世間の方々の中には、我々慶應義塾が…

慶應義塾大学應援指導部さんの投稿 2020年5月22日金曜日

キター! 実は早慶戦というのは、応援部が自虐を含めてお互いを挑発することで客席を沸かせるというのも醍醐味の一つ。私の時代には新札となった1万円札(福沢諭吉)をリーダー長が皆の前で破り捨てるというパフォーマンスもありました(新入応援部員=我が友人=が「あとで拾っとけよ」と言われていたのはナイショです)。

コロナ禍でも「早慶戦」の高揚感が味わえた

上記の文言で早稲田OBのツボに入るのは「我々が長年積み上げてきた縦の繋がり」という部分。これは早慶戦でも鉄板のネタで、慶應は記念行事などのための寄附金があっという間に集まるのに対し、早稲田はいつも寄附金の目標額に達したことがない。

たしかに早稲田OBはへそ曲がりが多いというか、〝在野の精神〟がありすぎて「大学当局の言うことなんか聞かないもんね」という意地もありつつ、「チッ、慶應のカネ持ち坊ちゃんどもめ!」と悔しがっているのは確かなのです。

しかし相手はたかがFacebookです。「いいね!」と「シェア」ならタダだ!

【第一応援歌早慶戦】皆さんご存知のとおりNHK連続テレビ小説「エール」にて早稲田大学の第一応援歌『紺碧の空』の誕生秘話が描かれ、全国の方々の大きな注目を集めました。しかし昨日真の応援歌は『紺碧の空』ではなく『若き血』だ、と慶應義塾大…

早稲田大学応援部さんの投稿 2020年5月22日金曜日

2分後にすかさず反応した早稲田大学応援部の「挑戦状が届きました」「若き血を返り討ちにしてやりましょう!」という投稿に、私が急いで「いいね!」と「シェア」をしたのは言うまでもありません。

エール「紺碧の空」週は、そのおかげもあってか週間平均視聴率も前週を上回る21.8%と番組最高を記録。なんだかNHKと早慶両校の応援部の手のひらの上で踊らされていたような気もします。

ですが、この高揚感こそが早慶戦です。残念ながら新型コロナのため東京六大学の春季リーグは中止となってしまいましたが、少しだけあの雰囲気を味わうことができたのでした。

えっ、第一応援歌早慶戦の結果? どうぞそれは両校応援部のサイトへ。

【※慶應大の第一応援歌名に誤りがありました。正しくは「若き血」です。お詫びして訂正いたします】

  • 取材・文花房麗子

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