秋田の天才花火師が作った「アマビエ花火」がスゴすぎて… | FRIDAYデジタル

秋田の天才花火師が作った「アマビエ花火」がスゴすぎて…

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疫除祈願花火の札が貼られたアマビエ花火は14cm玉。アマビエ花火を含めた10発セットは5万円(税別)で販売され、時に出張打ち上げ(費用別途)にも応じるという
疫除祈願花火の札が貼られたアマビエ花火は14cm玉。アマビエ花火を含めた10発セットは5万円(税別)で販売され、時に出張打ち上げ(費用別途)にも応じるという

6月1日、日本各地で悪疫退散のための「サプライズ花火」が打ち上げられて話題となった。

「現代の花火大会はエンターテインメント、人が集まる娯楽イベントという位置づけです。でも花火は、もともとは五穀豊穣や悪霊退散、鎮魂を祈る神事。日本で一番古い隅田川花火大会の起源は江戸時代の享保18年、前年に大流行したコレラの悪疫払いと亡くなった人たちの供養のためだったと言います。コロナ禍のこういうときこそ、神事を大切にしてほしいと思います」

こう話すのは、イベントに参加した全国163社のうちの1社、秋田県大仙市にある「北日本花火興業」の今野義和社長(56)だ。同社は1899年創業だが、今野さんは老舗の4代目という肩書きとは別の異名で知られる。「型物(かたもの)の天才」だ。

型物とは、球形の菊や牡丹の大輪などを描く伝統的な「割物(わりもの)」花火に対し、リボンやトンボ、あるいは文字やキャラクターなどの図柄を天空に描く花火を指す。

そんな今野さんが、自粛中に作り上げた新作が、コロナ禍ですっかりおなじみになった「アマビエ」の花火なのである。

自社工場内で完成した「疫除祈願花火アマビエ」を手にする今野義和さん。「花火の色は火薬や薬品の配合比によって決まっていますが、私はアナログ人間なので、自分のイメージや感覚を大切にしています」という。それも花火界で「型物の天才」と言われる所以なのだろう
自社工場内で完成した「疫除祈願花火アマビエ」を手にする今野義和さん。「花火の色は火薬や薬品の配合比によって決まっていますが、私はアナログ人間なので、自分のイメージや感覚を大切にしています」という。それも花火界で「型物の天才」と言われる所以なのだろう

今野さんがアマビエのことを知ったのは、山形県に住む長女が「お父さん、コロナ除けのお守りにして」と携帯にアマビエの画像を送ってくれたことからだった。

「しばらくは携帯電話の待ち受け画面にしてただけだったんですが、秋田市内のお菓子メーカーがアマビエをかたどった和菓子を販売したと聞いて。それならコロナ退散の願いをこめてアマビエの花火を作ろう、と」

コロナ禍のため県内外の花火大会はほとんどが中止となり、工場職人たちは休業させている。試作は今野さんと妻、長男、妹夫婦の家族5人で行った。

「アマビエは他のキャラクターに比べると、そんなに難しいデザインではありませんが、どれだけシンプルな線でアマビエを表現できるかを考えました。打ちあげたとき誰が見ても、アマビエだ! とわかるデザインにすることが重要で、特徴的な突き出たくちばしは上のくちばしを下より少し長くしたりと、私なりにこだわりましたね。本当は凝ってウロコもつけたかったのですが、花火玉の容積の問題で無理なのであきらめました」

打ち上げたときの花火の形を決めるのは「星」と呼ばれる火薬の粒の配列だ。打ち上がりをイメージして半球形の玉皮の中に火薬を並べていく「玉込め」は、花火作りの最も重要な作業。アマビエ花火では、今野さんと長男のふたりが担当した。

できあがった試作品は14cm玉2発。型物は見える角度によって形が違って見えるため、正面と横位置から観察できるように打ち上げる。試作の打ち上げは人が集まらないように、ごく内輪の家族や関係者だけで行った。夜空に浮かび上がった今野さんのアマビエは長いくちばしと赤い目がユーモラスで笑いを誘う。

▲アマビエ花火(正面)

▲アマビエ花火(横向き)

今野さんは言う。

「このアマビエを見て、笑っていただければうれしいです。型物はユニークさが特徴で、お年寄りから小さいお子さんまで、皆が一緒に笑える花火。だから私も観る人たちの笑顔を想像しながら、このアマビエを作りました」

今野さんの会社がある大仙市は、日本中の花火師たちが腕を競う『大曲の花火』大会の開催地としても知られている。大仙市は1月1日のニューイヤー花火で1年が始まり、毎月花火が打ち上げられ、どこにいても花火の音が聞こえる「花火の町」だ。

だが、今年は新型コロナ感染予防のため、毎月の花火も中止が続いた。8月29日に予定されている『大曲の花火』だけは、何としても開催したいと地元民は熱望しているが、その開催可否は6月下旬まで決定が持ち越されている。

地元というだけではない。今野さんが得意とする型物を駆使した「創造花火」という種目を花火大会として正式に採用したのは、『大曲の花火』が初めてだった。花火にテーマ性と具体性を持たせた創造花火の第一人者として、今野さんは度々、賞を獲得してきた。2011年には福島復興の願いをこめて「カエル帰る、きっと帰る、無事帰る」という花火を打ち上げている。

「花火は悪疫退散と同時に見る人に元気をもたらします。毎年、夜空に打ち上がった大花火に湧く大歓声を聞き、大勢の人たちの笑顔を見るにつけ、私も花火師としてやりがいを感じてきました。今夏、『大曲の花火』が開催されたならば、このアマビエ花火でスタートしていきたい。コロナウイルスを退散の願いをこめて、アマビエに露払いを務めてもらいます!」

2019年、『大曲の花火』大会準備の様子。会場となる雄物川河川敷に、花火玉や打ち上げ筒、機材などがトラックで運びこまれる。打ち上げ筒の角度がわずかでも違えば花火の見え方も変わってしまうため、入念なチェックが繰り返された。今年もこの風景が見られるだろうか
2019年、『大曲の花火』大会準備の様子。会場となる雄物川河川敷に、花火玉や打ち上げ筒、機材などがトラックで運びこまれる。打ち上げ筒の角度がわずかでも違えば花火の見え方も変わってしまうため、入念なチェックが繰り返された。今年もこの風景が見られるだろうか

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