SNSで声を上げ始めた、親からの「性的虐待」サバイバーたち

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今年3月、名古屋高裁は、実の娘への準強制性交等罪に問われていた父親(50)に対して、一審・名古屋地裁岡崎支部の無罪判決を破棄し、逆転有罪の判決を言い渡した。

一審で無罪が言い渡された昨年3月は、他の性犯罪事案においても無罪判決が相次いだ。これを受け、翌月に始まったのが「フラワーデモ」だ。各地で花を持ち、または花柄の服を身につけて集まった参加者たちは、過去に自身が受けた性被害について語ることもあれば、プラカードで思いを表明することもあった。

被害にあった当事者らがその体験を発信する機運はSNSにも見られ、これまで表沙汰になってきていなかった家庭内での性的虐待サバイバーたちが、過去の体験を様々な形で発信している。

魚田コットン氏のインスタグラム(@uotakotton)より

『母の再婚相手が色々とアウトだった話』もそのひとつだ。作者の魚田コットン氏は、かつて義父により性的虐待を受けてきた自身の経験を漫画にして、インスタやブログで公開している。

幼い頃に両親が離婚し、母と姉の3人で暮らしていた魚田氏。小学生の頃、母の新恋人と4人で暮らし始めた直後から、のちに“母の再婚相手”となるその男性から性的虐待がはじまり、それは10年の長きにわたり続く。

現在は義父や実母らと離れ、夫と3人の子供たちと暮らす魚田さんは、3年前に自身に起こった、ある辛い出来事がきっかけで「全部溜め込むのキツいな……いっそのことネットの海に投げてやろう」と思い、過去の体験を発信し始めたという。

今回、裁判傍聴をライフワークに、事件を通して人間の深い業を描いた著作の多い、ノンフィクションライター高橋ユキ氏によるインタビューが実現した。

「名古屋のニュースは、一審の無罪の時にSNSで知り、とても悔しい気持ちになったのを覚えてます。娘さんが立ち上がって被害を訴えたのに無罪になるなんてやっぱり日本は性犯罪を軽く見すぎているなと思っていましたが、逆転有罪になったと知りとても嬉しいです!

日本の性犯罪への意識がこの事件をきっかけに変わっていってくれるとそれだけでも被害者が救われると思いました」(魚田コットン氏 以下同)

——漫画では“母の再婚相手”による、長きにわたる性的虐待の内容が詳細に綴られていますが、成長に応じて、また魚田さんの態度を見ながら、その内容も変化しているように見えました。(高橋ユキ氏 以下同)

「最初のころは、お風呂で体を触られたり、寝ている時の強姦未遂など、肉体的な加害行為でした。直接触ってこられたのは、中学生の頃、洗面所で顔を洗っている時に胸を触ってきたのが最後ですね。

魚田コットン氏のインスタグラム(@uotakotton)より

それ以降も、触ってこようとする感じはあるんですけど、私が拒否していました。直接会話をしないようにしたり、2人きりにならないようにしたり……その態度を見て接触はなくなりましたが、卑猥なメールを送ってきたり、性的な言葉をかけたりするようなことは続いていました

——隙をついて何かしようとする雰囲気が常にあるんですね。子供にとってはホッとできるはずの家で、全く安らげないですよね。

「胸などを触る以外にも、じゃれてるふりをして、くすぐってきたりということもありました。いきなり抱きついてくるようなことは、他の家族がいる前でも普通にされていました。

私も他の家族がいる手前、あからさまな拒否はできないので、なんていうんですかね……よく女子が男子にからかわれて『やめてよ〜』という感じ、あんな感じでの拒否です。それでもやめてくれなかったら本気で怒ってそこから喧嘩になりました」

——他の家族が不在で、“母の再婚相手”と家で2人になっているときなどは、どのように拒否の態度を示し続けていましたか?

「自分から関わらない。話しかけないし、話しかけてきても『うん』と一言で終わらせる、そして2人きりにならないよう、自分の部屋にこもるようにしていました。相手がリビングにいるとわかると、部屋から出ず、他の家族が帰ってきたなとわかってから自室から出るような感じです。学校の話はほぼ母にしていました」

——小学生の頃の、直接的な加害行為のあと、魚田さんは常に“拒絶”の態度を示していましたよね。にもかかわらず、しつこく体を触ろうとしたり、卑猥な言葉をぶつけてきたりという……しつこさに驚かされました。

「嫌がる姿が面白いらしいです。『からかい甲斐がある』とよく言われていたので。相手にとっては、その延長だと思います」

——大学生になり、家族と離れて一人暮らししたのちに届いた『卑猥なメール』が最後の加害行為でしたが、それ以降、そして現在も、“母の再婚相手”との距離感は変わらず、極力関わらないようにしているのでしょうか。

「いまも、用事がない限り、私は関わらないようにしています。一番多感な思春期の頃はほぼ殺意のような感情を抱いていたんですが、あの頃に比べたらそういう気持ちは全然なく、ほぼ無関心というか。連絡を取り合うこともほとんどないです。

時々なんだかよく分からないLINEはくるんですが、性的なものじゃない感じのもので、ほぼほぼ無視しています。あと、実家から荷物が届いたりしたら、だいたい母に連絡してお礼を言うんですが、そのときに『あっちにも連絡しなさいよ』と言われるので、とりあえずLINEでお礼を送ります」

——家族がすごく嫌で、そこから離れたくても、特に学生の頃は“この人たちに生活の面倒を見てもらっている”ということから、完全に拒絶はできないという気持ちがあったのだろうと思いましたが……。

「ありましたね。両親の離婚後、母が昼も夜も働いていて、それで体調を崩したこともあったので。自分が被害を訴えたせいで親が離婚して、また同じように母が働きすぎて、今度は死んでしまったらどうしようという気持ちがあったんですよね。

なので、子供心に、自分が自立して、母の面倒を見られるようになって楽になるまでは……という気持ちでいたんですけど」

——仮に、友人からこうした被害を打ち明けられたり、身近に同じような被害にあっている子供さんがいると知った時、私たちは一体どうするのが一番良いのか悩みます。

「インスタグラムのほうにもそういった質問がきたんです。『そういう子を見つけたらどうしたらいいんですか』と。

同じ立場にあった自分からすれば、性的虐待は、普通の虐待と違って、死ぬわけじゃない。それさえ我慢すれば日常がそのまま続くけれど、もし事実を暴露したら、その生活が壊れるじゃないですか全部。その上、もしかしたら学校も変わらないといけなくなるかもしれないし、親とも会えなくなるかもしれないしって考えたら、多分子供は黙っているだろうなと思うんですよね。

インスタグラムのストーリーズで『こういうコメントがきたんですけどどう思いますか』と他のフォロワーさんに質問したんです。そうしたら同じ被害者の人たちが、ほとんどが『手を出さないでほしい』って言っていました。中途半端に手を出されて、自分がかわいそうな子供になるのも嫌だし、余計に悪化する可能性もあるから、助けるなら徹底的にしてほしいと」

——中途半端に介入されてもまたすぐ元の状況に戻されたりすれば、自分がその家や学校に居づらくなるんですね。

「そうですね。ツイッターでも以前、女子高生の子が義理の父親に盗撮されたりすると言っていて……児童相談所に一度保護されたけど、結局また戻されて、また同じようにされているというつぶやきを見たんです。

助けようとするなら、加害者の側を隔離してほしいと思います。被害者が全部請け負わなきゃというのが……」

——小学校の頃に、その意味をまだ理解していない中でされた行為を「変な感じがする」と思い、精一杯の拒否をしたと思うのですが、のちにその行為の意味を知ってからまた、“母の再婚相手”への態度は変わりましたか?

「さらに酷くなりました。拒否する気持ちも態度も。

意味を知ったのは小学校を卒業する前です。一番最初にお風呂に入ってこられた時は完全にわかっていないんですよね。純粋に親とお風呂に入っている気持ちだったんですが、なんかモヤモヤする。なんか自分が悪いことをしているんじゃないかという気持ちになるんですよ。

それでその後、寝ている時に……というのがあって……中学生ぐらいになったら、お風呂でのことも、あれもそうだったんだと確実にわかるようになったという感じですかね」

——それを家族の中で言うこともできないまま、ずっと過ごされてきたのも辛いです。

「多分そういう家庭の子は、子供として、自分が愛されているという絶対的自信がないことが多いから、『もし事実を言って、親に自分の存在を拒絶されたらどうしよう』という気持ちがある。自分がされていることはひどいことで、自分は完全に被害者なのに、『自分が悪い』と思っている子供のほうが多いかもしれないです」

——すでに解除されましたが、2ヵ月近い期間外出自粛や休校が続き、否が応でも家族との時間が増えていましたが、家族の虐待に悩むお子さんに魚田さんからのアドバイスはありますでしょうか。

「気にせず外に出よう、ですかね。そこにいて辛いなら、関係なく外に出ましょうと伝えたいです」

 

魚田コットン 漫画家・イラストレーター。3児の母。ブログ「甘辛めもりぃず」インスタグラムにて、“母の再婚相手”による性的虐待の漫画『母の再婚相手が色々とアウトだった話』を公開している。漫画雑誌「本当にあった愉快な話」にも連載中。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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