『エール』窪田正孝&二階堂ふみは見方を変えればWヒロイン…? | FRIDAYデジタル

『エール』窪田正孝&二階堂ふみは見方を変えればWヒロイン…? 

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NHK朝ドラの主人公といえば“女性”が定番。過去100作中男性主人公は10作と、圧倒的に女性主人公が多いのは、主な視聴者層である主婦の共感を意識したものだろう。

そういう意味で今期放送の『エール』は、玉山鉄二主演の『マッサン』以来6年ぶりの男性主人公ということで放送前に話題になったが、意外にも、そんな性差について強く意識することなく、フラットな視点で楽しめるドラマになっている。その理由を考察してみた。

2020年2月、映画「初恋」記者会見での窪田正孝 写真:つのだよしお/アフロ
2020年2月、映画「初恋」記者会見での窪田正孝 写真:つのだよしお/アフロ

主人公・裕一は昭和少女漫画的な受け身型ヒロイン?

新婚生活スタートで「キャッキャウフフ」とじゃれたり、カフェーで働く妻・音(二階堂ふみ)を心配して玄関前で帰りを待っていたりと、東京編が始まってから、窪田正孝が演じる主人公・古山裕一の“かわいらしさ”が止まらない!

幼少期にいじめられたり、家庭の事情で養子に出され、大好きな音楽から一時的に離れなくてはいけなかったり、念願の音楽留学が中止になったりと、周りの状況に流され続けてきた生い立ちは「ザ・昭和ヒロイン」的だ。

さらに裕一のヒロイン性を感じるところが、温和な性格。悪く言えば「ぼーっとしている」、良く言えば「ほんわかした」様子で、人と争ってまで我を通すことはほとんどない。しかし本当に譲れないことは、守り通す芯の強さもある。第5週「愛の狂騒曲」第21話で、音に「私のことなんて忘れてください」と言われても、「ひとときだけでもいいので、一緒にいさせてください」と言うけなげさは、恋に一途な乙女そのもの!

極めつけは、異性を前にするとポーッと舞い上がってしまうほどの恥ずかしがり屋な癖に、結婚相手には愛情タップリでいつも仲良しなところだ。特に第9週「東京恋物語」第42話のラストで見せた、音の帰りを玄関先で待つ姿は、まるでご主人様の帰りを心待ちにしているペットのよう。こんな、結婚してもかわいい“理想のお嫁さん”みたいな姿に、観る者の保護欲が刺激されてしまうのだ。

こう書くとかなり女性的に感じるが、男性的な強さもきちんと持ち合わせているのが、裕一の大きな魅力だ。自分をいじめていた相手でも、良い所を認めて友情を育むことができる、広くて優しい心。悩んでいても人に八つ当たりすることはなく、ひたすら自分と向き合う姿勢。音と結婚したときのように、覚悟が決まったらきちんとアクションを起こす勇気と行動力。

剛健な男らしさではなく、風になびいて倒れても起き上がる“しなやかな強さ”が、裕一のキャラクターを唯一無二のものにしている。つまり、男女どちらでもお話が成り立つ「主人公像」なのだ。

夢に向かって力強く突き進む、冒険型ヒロインの音

「歌うことが楽しい」という気持ちで声楽家を目指して邁進する音は、裕一と対照的に「好きなものは好き」とはっきり主張する性格の持ち主。音楽学校の記念公演『椿姫』で主役の座を射止めるため、恋愛の機微を学ぼうと男女の社交場カフェーで働くなど、己の行動原理で突き進む「現代型・自立ヒロイン」タイプだが、裕一が隣にいることで“力強いヒーロー”の役割も担っているところがおもしろい。

主張はきちんとするが、決して自分勝手ではなく、自分にとっても周囲にとっても最良の道を諦めずに探す。音は、自分の夢を諦めないのと同じくらい、人にも夢を追い続けて欲しいと願う心の持ち主なのだ。そんな音だからこそ、一度は音楽を捨てようとした裕一を奮い立たせることができたのだろう。

音の献身ぶりがよくわかるのが、第8週「紺碧の空」。コロンブスレコードで不採用が続いた上、日本を代表する作曲家・小山田耕三(志村けん)にけんもほろろの扱いを受け、自信をなくして自暴自棄になった裕一を、アノ手コノ手で立ち直らせたエピソードだ。特に愛情深いと感じたのが、第38話で泣き叫ぶ裕一を、後ろから黙って抱きしめるところ。励ましたいけれど言葉が出ない、そんな音の心が伝わってくるような名シーンだった。

音は強い女性だが、亭主の尻を叩いて動かすタイプではなく、実は良妻賢母型。「あなたならきっとできる」という信頼を寄せ、夫の側で励まし続けて支えている。ときに裕一に甘えるかわいらしさもあって、見ていて微笑ましい気持ちになるのが、古山夫婦なのだ。

このように、見方を変えればWヒロインとも捉えられる裕一と音。中性的な裕一が主人公であることと音楽を題材にしていることも相まって、女性視聴者も感情移しやすくなっている。セリフや動作が漫画的で、時にコントのように見えるシーンも多いけれども、笑顔の裏にある真剣な気持ちや暗さをきちんと感じさせてくれるので、深読みせずにストーリーを追うことができるのだ。

なによりも、演者たちのコミカルな演技を見て素直に笑えるところが、『エール』の持ち味だろう。

  • 取材・文中村美奈子

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