テイラー・スウィフト「大統領選でトランプ落とす」発言の深層 | FRIDAYデジタル

テイラー・スウィフト「大統領選でトランプ落とす」発言の深層

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アメリカの人気シンガーソングライター、テイラー・スウィフトが、トランプ米大統領を名指しで批判している。テイラーによる11月の選挙であなたを落とす」という強烈な怒りに満ちたツイートは、投稿後わずか10時間で138万もの「いいね」を集めた。その数は今も増えていく一方だ。

自分の影響力、周囲にかける迷惑など、様々なことをふまえて政治的な発言を控えていたテイラーだが、トランプ大統領に意見せずにはいられなかった。写真:REX/アフロ
自分の影響力、周囲にかける迷惑など、様々なことをふまえて政治的な発言を控えていたテイラーだが、トランプ大統領に意見せずにはいられなかった。写真:REX/アフロ

米ミネソタ州ミネアポリスで無抵抗の黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官に取り押さえられ、膝で首を圧迫された末に死亡する事件が起きたのは、現地時間525日のこと。その様子を為す術なく傍観していた一般市民が、その一部始終の動画をSNSに投稿したことにより、全米で白人警官への批難が噴出した。

全米で抗議活動が拡がる中、ミネアポリスでは激しい暴動が発生。スーパーなど小売店では略奪が起き、警察署は放火された。市長や市警察は暴徒を制圧するため、ゴム弾や催涙ガスで応戦した。

こうした状況を受け、トランプ大統領はツイッターに以下のコメントを投稿する。

「アメリカの偉大な都市ミネアポリスでこんなことが起きるのを、ただ見ているわけにはいかない。リーダーシップが失われている。非常に頼りない極左派のジェイコブ・フレイ(ミネアポリス市)市長が立ち上がり、街をコントロール下に収めるか、あるいは私が州兵を送り、シゴトするかのどちらかだ

この悪党らは、ジョージ・フロイド氏の思い出を不名誉なものにしている、そうはさせない。ティム・ウォルズ(ミネソタ州)知事に、いつでも軍をつけ支援すると伝えた。困難があろうと我々は必ず主導権を握る、略奪が始まれば銃撃が始まる。ありがとう!」

前後に分けて投稿したこのつぶやきのうち、後半部分は「暴力の美化」であるとして、ツイッター社によりフィルタリングが行われた。

海外セレブの多くも黒人男性の死亡事件に対する抗議の声を上げていたが、テイラーはトランプ大統領のツイートから約10時間後に、激しい怒りのコメントを投稿する。それがこちら。

「白人至上主義と人種差別の火種を煽って大統領に就任したくせに、暴力で威す前に道徳的であるフリをするの? 略奪が始まれば銃撃が始まる”??? 11月の選挙であなたを落とすわ」

テイラーによるトランプ大統領への痛烈な批判ツイートが多くの「いいね」を集めている背景には、黒人男性の死亡事件への抗議と政治的発言を解禁したテイラーへの賛辞があると言えそうだ。

カントリー歌手としてデビューしたテイラーは、2018年まで政治的発言を徹底的に避けていた。トランプが当選した2016年の大統領選挙では、ビヨンセやマイリー・サイラス、ケイティ・ペリーら大物シンガーたちが反トランプを表明し、SNSで盛んに政治的な発言を繰り返していたのに対し、テイラーは沈黙するばかりだった。

アメリカのショービズ界、とくにハリウッドでは、歴史的に民主党支持者が多数。人権を重視し、人種差別、性差別を問題視し、多様性を唱えるリベラルな人々にとって、正反対の政策で保守派の支持を集めるトランプには批判的な立場だ。

2016年の大統領選挙でも、保守層に支持される共和党、中でもトランプを応援していたのはアンジェリーナ・ジョリーの父親ジョン・ヴォイトをはじめとするごく一部の高齢な俳優たちと、トランプと個人的に親しいパリス・ヒルトンぐらいで、ほとんどのセレブは反トランプを表明した。

何も語らないテイラーに対し、「彼女はトランプを支持しているのでは?」との声も高まったが、テイラーは肯定も否定もせず。テイラーのトランプ支持者説はますます色濃くなっていった。

その一方で、テイラーが政治的発言をしない理由として、テイラーがカントリー歌手であったことも指摘されていた。

彼女の出身である南部地域は保守派の共和党支持者が多数であること、それと同時に、共和党支持者はカントリー・ミュージックを好んで聞く層でもあり、彼女が歌手として大成できた背景には、彼らによる応援があったからとも言われている。テイラーが反トランプ発言をしないのは、これらのファンを失うリスクを避ける意図があるのではないか、というものだ。

そんなテイラーが初めて政治的な意見を発したのは、2018年の中間選挙目前のこと。

「できるだけ女性に投票したいと思っていましたが、私が投票するテネシー州の女性候補は共和党であり、到底支持できそうもありません。私は民主党のフィル・ブレザン氏とジム・クーパー氏に投票します」

このようにはっきり支持政党まで明らかにし、ファンに向けて有権者登録を行い、必ず選挙に参加するよう呼びかけると、直後から若者による有権者登録が激増! わずか24時間で10万人以上もの有権者登録が行われ、大きな話題となった。結果、民主党は下院で過半数の議席を獲得。トランプ政権に大打撃を与えることとなった。

この発言の裏に大きな葛藤があったことは、Netflixで配信されたドキュメンタリー『ミス・アメリカーナ』に記録されている。

当時、#MeToo運動が活発化し、LGBTQに寄り添おうという気運が高まっていた。にも関わらず、トランプ大統領を筆頭に共和党の議員たちが、DVやストーカー、レイプから女性を守るための法案や、男女同一賃金、LGBTQの人権保護の成立を阻止しようとしていた。テイラーにとって許せないことであった。

過去にカントリーグループのディクシー・チックスが政治的発言により一大バッシングを受けた例もあり、政治にまつわる意見を控えるべきだと周囲にたしなめられていたというテイラーだったが、「正しいことをしたい」との一心で、支持政党を明らかにすることを決心。テイラーを心配する実の父には大反対されたが、2016年の選挙で何も言えなかったことを深く後悔していたテイラーの決意は固かった。

そして2020年。再選を狙うトランプ大統領に、真っ向から「No」を突きつけたテイラー。増え続ける「いいね」の数が、テイラーが信じる「正しいこと」への支持数だ。選挙が行われる11月までに、テイラーがどのような政治的行動を起こすのか、目を逸らさずに見守りたい。

  • 原西香

    (はら あきか)海外セレブ情報誌を10年ほど編集・執筆。休刊後、フリーランスライターとして、セレブまわりなどを執筆中

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