春風亭昇太が語る「リモートでも絶対に笑点を続けるワケ」 | FRIDAYデジタル

春風亭昇太が語る「リモートでも絶対に笑点を続けるワケ」

放送開始から55年の歴史の中で、初めて『リモート』形式で大喜利に挑戦した『笑点』。なぜ収録を続けるのか、司会者の春風亭昇太を直撃!

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司会者が語る「リモート笑点」の舞台裏

春風亭昇太氏のインタビューは電話で行い、写真は奥さんに撮影していただいた。顔を合わせない”ステイホーム取材”だったが、インタビューでは落語界の今後について、電話越しでもわかる熱量で語ってくれた(提供写真)
春風亭昇太氏のインタビューは電話で行い、写真は奥さんに撮影していただいた。顔を合わせない”ステイホーム取材”だったが、インタビューでは落語界の今後について、電話越しでもわかる熱量で語ってくれた(提供写真)

「『笑点』の出演者はみんな高齢なので、コロナにかかれば、大変なことになってしまう可能性もあります。そういう事情もあってリモートで収録しているのですが、なんせみんなおじいちゃんですから。

操作の仕方が分からないことも多く、収録前になっても、いつも誰かの画面が真っ暗なんてことはザラにあります。スマホやパソコンも自分のものではなく、娘から借りているなんて人もいますしね」

電話インタビューでそう語るのは、『笑点』の司会者である春風亭昇太氏である。

感染予防のために各テレビ局の収録が中止になって放送内容が差し替えになるなか、変わらず毎週日曜日に放送を続けている『笑点』。お茶の間に笑いを届けるべく、収録の仕方にも細心の注意を払っているようだ。オンライン会議で使用されるZoomを使用して、前代未聞の『リモート大喜利』にも挑んだ。

「初めての試みでしたね。回答者が手を挙げたものの、画面から見切れていて、手を挙げているのか、何をしているのか分からないこともあります(笑)。

舞台上じゃなくてそれぞれが部屋にいるので、他の回答者の様子がわからずにひとりで笑点をやっている感覚になるみたいですね。出演者には緊張感が生まれ、いつになく積極的手を挙げたり、発言したりしてくれていますよ」

回答者も試行錯誤しているようだが、挑戦してみて司会者側にも反省点があったと昇太氏は語る。

「出演者がリモートになってしまうと、同じ会場にいないわけですから。話を振っても、いつもの慣れ親しんだ感じでは反応が返ってこないこともありました。

横にいれば目で合図をすることができるんですけどそれも難しい。 “いつも通りでない”ということも、結構大変でした」

落語家は壇上で観客席の暖まり具合を察し、その日に披露する題目を決めることもある。言わば、「会場の空気を読む」ことが重要だ。

しかし現在、『笑点』は会場から客が消え、ついにはリモートでの孤独な大喜利が余儀なくされる。普段と異なる状況下でも『笑点』の収録を続けるのは、いったいなぜなのだろうか――。

「『笑点』は55年という歴史ある番組なので、とにかく続けないといけないという気持ちはありました。暗い話題の多いコロナ禍においても、視聴者の皆さんの“いつも通り”でありたかったのです。

また、『笑点』で扱う題材は意外と時事ネタが多いんです。再放送ではそういった『笑点』の味が出なくなってしまうと考えていました。テレビ局側もかなり悩んでいたみたいですが、私たちの考えを尊重してくれていたようです」

”STAY HOME”でゲーマーに!?

予定していた仕事も軒並み中止に。「おうち時間」は昭和を舞台にしたゲーム『ぼくのなつやすみ』を満喫しているそうだ
予定していた仕事も軒並み中止に。「おうち時間」は昭和を舞台にしたゲーム『ぼくのなつやすみ』を満喫しているそうだ

『笑点』以外にも、ラジオやテレビのレギュラーを何本も抱え、大忙しの昇太氏。しかし、収録が続々と中止になり、必然的に自宅で過ごす時間が増えたという。自粛期間中は、趣味に時間を割いていたようだ。

「最近自宅では、ネットオークションやフリマアプリに出品されている昭和レトロ家電を漁っています。自宅にいる時間が長くなった人たちが、部屋の荷物を整理しているようで、使わなくなった昔の家電を売りに出している人が増えているみたいなんです。

僕は子どもの頃がすごく楽しかった記憶があるので、当時身の周りにあったモノを身近に置いておくことで、落ち着きを感じるんですよ。

あとは、昔ハマったPS2で『ぼくのなつやすみ』というゲームをずっとやっていますね(笑)。‘00年代のゲームなので、“なんで今さら!?”と思う人が多いと思うんですけど、このゲームの設定が昭和の田舎での日々なんです。子ども時代の頃が好きなので、当時に戻った気分になれるんですよ」

今は1日家で過ごすことも多いという昇太氏。そんな自宅の中で、キッチンにもこだわっているという。なんでも、料亭や小料理屋のカウンターを再現しているそうだ。昇太氏は、こだわりのキッチンで、昨年7月に結婚した奥さんに料理の腕前を披露しているようだ。

「僕が作るのは、至って普通の料理が多いんですよ。炒め物をしたり、魚を焼いたりします。いわゆる“おふくろの味”みたいな料理ですね。あと、僕は缶詰がすごい好きで、家中、缶詰だらけです。缶詰を簡単に調理して、出したりすることもあります。缶詰特集やるなら、ぜひ僕を呼んでください(笑)」

小料理屋のカウンターを再現したキッチンは、昇太氏のこだわりが詰まっている。得意の”おふくろの味”料理を奥さんに振る舞っているそう
小料理屋のカウンターを再現したキッチンは、昇太氏のこだわりが詰まっている。得意の”おふくろの味”料理を奥さんに振る舞っているそう

時代に即した”新たな落語の形”とは

自粛要請の影響をいちばん初めに受けたのは、落語や演劇などの観客と演者が対面する“生のエンタメ”である。社会が豊かにならないと、芸術文化の需要は生まれないと言われるほどで、今エンタメ業界にいる人間にとってこの状況は正念場。

落語芸術協会の会長も務める昇太氏は、落語界や自身の活動の今後について冷静に分析するとともに、メリットを生かした新たな可能性も見出している。

「確かに芸術でお腹を満たすことはできないので、以前のように仕事ができるようになるまでにはかなり時間がかかると思います。ただ、落語の場合は、他のエンタメと比べて、場所を選ばず、どこでもできるという強みもあります。

なので、この時代に合わせた落語の形を考えていかなければならないと思っています。また、第二波、第三波に備えて、非対面のオンライン寄席などできることも準備していかなくてはならないですね」

新型コロナウイルスの感染拡大によって笑いが少なくなってしまった昨今だが、いつもの放送を続けることで、世の中を少しでも明るくしてくれている『笑点』。その司会者であり、落語芸術協会の会長でもある昇太氏は、この状況をもいつの日か笑いにできるよう、「新たな落語家のあり方」を模索していたのだ――。

  • 取材・文村嶋章紀

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