シーナ&ザ・ロケッツ鮎川誠 コロナ禍も「ロックは心のワクチン」 | FRIDAYデジタル

シーナ&ザ・ロケッツ鮎川誠 コロナ禍も「ロックは心のワクチン」

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50年来の相棒 ギブソン・レスポール・カスタム片手に「ステイホーム! ステイロック!」の鮎川氏
50年来の相棒 ギブソン・レスポール・カスタム片手に「ステイホーム! ステイロック!」の鮎川氏

“めんたいロック”の先駆けとなったブルース・ロックバンド「サンハウス」を博多で結成して50年。‘78年には今は亡き妻・シーナと、バンド「シーナ&ザ・ロケッツ」を結成。一昨年、朝ドラ『半分、青い。』(NHK)で大ヒット曲「ユー・メイ・ドリーム」が劇中歌に選ばれ、話題を呼んだことも記憶に新しい――。

日本のロック界を半世紀に渡って牽引してきたギタリストの鮎川誠。黒い革ジャンに身を包み、サングラスをかけたルックスは今も変わらない。

そんな鮎川が”コロナ禍”で自粛が叫ばれる音楽シーンを、どう見ているのか。ギター片手に、電話インタビューに答えてくれた。

「シナロケは”シーナの命日”に当たる2月14日にニューアルバム『LIVE FOR TODAY!』をリリース。それに先駆けてプロモーション活動はしとったけど、4月以降に予定していたライブツアーはすべてキャンセルして、僕は4月1日からステイ・ホームしとるよ」

そんな中、YouTubeライブなどアクションを起こすミュージシャンも多いが、鮎川はそうした活動を評価しながらも、「動けば人を巻き込む」とした上でこんな話をしてくれた。

「50年もやっていれば、1か月、2か月仕事がないことなんて良くあること。活動再開の日まで、しっかり準備しておくことが僕らの務めやと思う。コロナは未知のものやから、犬の散歩以外は、一切外には出よらん。お陰様で”シナロケファミリー”は皆、元気です」

ステイホームしながら今まで観たかったYouTubeやCDやレコードを夜が明けるまで聴き、納得できるまで調べ、気が済むまでギターを弾く毎日を送っているという鮎川。そんな中、”ステイホーム”のこの期間に、大きな発見もあった。

「フェイスブック・コミュニティの仲間から教えてもらい、おそらく日本で一番古いブルースの動画を見つけた。‘71年9月にNHKで放送されたイギリスの撮影クルーが撮影した『黒人の魂ブルース』ちタイトルの番組。シカゴの街並みと共に、ライブハウスで歌うバティ・ガイやマディー・ウオーターズが紹介されてね。当時ブルースは日本版のレコードがやっと出始めた頃。伝説のブルースマンの動画は、生き神様を見るようやった。これにはぶったまげたな」

さらに話は5月9日、87歳でこの世を去ったロックンロールのバイオニア、リトル・リチャードにも及んだ。

「牧師になってロックをやめていたリトル・リチャードが‘62年にカムバックする際の前座は、あのビートルズ。そしてサポートメンバーに若き日のジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)がいたことからも、リトル・リチャードの偉大さは理解してもらえるだろ。

僕は中学2年の時、『ジェニー・ジェニー』『ルシール』を聞きたくてレコードを買いに行ったち、思い出してね。当時のロックンロールを徹底的に聞き込んだ。ステイホームの期間は、中学時代から始まった自分の音楽人生をじっくり振り返る良い時間になっとるね」

‘15年に亡くなった妻・シーナさんの思い出の詰まった家は当時のまま。今もキッチンから顔を覗かせてくれそうだと話す
‘15年に亡くなった妻・シーナさんの思い出の詰まった家は当時のまま。今もキッチンから顔を覗かせてくれそうだと話す

しかしコロナ禍は、ミュージシャンから音楽だけでなく生活までも奪っている。そんな現状について鮎川は、こう憂う。

「音楽や演劇は、人に集まってもらって成立するライブ。今は音楽だけでなく、すべてがてんてこ舞い。『コロナがはよ、退散するように』ち祈るしかない。ライブハウスも閉めるところがあって、辛いよね。なんとか、持ちこたえて欲しいと願ってる。

音楽仲間やライブハウスのスタッフ達ともやり取りする中で、『お互いに元気でおろう。READY TO ROCK』。お客さんの安全を一番に考えなきゃならんが、ライブが再開したらたとえ3分の1のお客さんでもやりたい。すぐ“ぶっ飛ばすぞ”ち思うとる」

安倍首相の会見などでも、文化芸術に対する支援の話がやっと聞かれるようになったが、

「音楽は不要不急だからだいぶ後になるかもしれない。そのあたりでモヤモヤする気持ちもある」

と話す、鮎川。しかし、気持ちを切り替えて、こんな思いも口にする。

「大声を出さなくても、みんなの心や生活の中に音楽がある。ロックは素晴らしい。元気を出させてくれる。ぜひ日頃、時間がなくて聴けなかったロックを存分に聞いて欲しい。音楽でエネルギーをチャージして欲しい。ロックは心のワクチンやから」

そう語りかけ、最後にこんな本音も飛び出した。

「シーナが亡くなった年の4月7日から始まった『シーナの日』には、亡き妻を偲ぶ仲間が集う追悼ライブを毎年行ってきた。今年は7月4日に延期。この日からライブを再開できれば嬉しいち思うとるよ」

“ステイホーム! ステイロック!”と、電話口でギターをかき鳴らし、語りかけてくれた鮎川誠、72歳。”ぶっ飛ばす”準備は、すでに万全のようだ。

 

鮎川 誠(あゆかわ まこと ‘48年5月2日生 福岡県出身)
ボーカル、ギタリスト、作曲家、俳優。ロックバンド「シーナ&ザ・ロケッツ」のリーダ。‘70年代、博多を中心に勃興した“めんたいロック”の草分けの一人で、日本ロックのパイオニアとして知られる

  • 取材・文島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

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