逃亡協力者の逮捕で現実味を帯びるカルロス・ゴーンの“身柄拘束”
日産元会長のカルロス・ゴーン被告の近況について、『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』] 著者で、仏のジャーナリスト、レジス・アルノー氏はこう話す。
「レバノンに住む知人に聞いたところ、ゴーン氏は国内のスキーリゾートを訪れたり、上流階級と大好きなトランプゲームの『ブリッジ』に興じたりと、派手な暮らしを送っています。2月17日夜には、ベイルートを見下ろす高級ホテル『アル・ブスタン・ホテル』のパーティーに妻のキャロル氏と出席したそうです。
ところが、レバノンでも新型コロナが猛威をふるい、外出が厳しく規制されるようになった。そのため、ゴーン氏も以前のようには出歩けなくなりました」
衝撃の国外逃亡から約半年。自由になったはずのゴーン被告は新型コロナによって再び「幽閉生活」を余儀なくされているようだ。そんななか、ゴーン被告の逃亡に協力したとされるマイケル・テイラー容疑者とその息子が米司法当局に逮捕された。これによって事態が動く可能性がある。アルノー氏が続ける。
「日本と米国は犯罪人引き渡し条約を結んでおり、米政府は引き渡す予定がない容疑者を逮捕はしません。テイラー容疑者は引き渡されないように法廷で戦うでしょうが、最終的には日本に送られると思います。なお、ゴーン氏に近い情報源によると、テイラー親子はゴーン氏を脱出させるミッションに対して、報酬をもらっていないということです」
報酬を受け取っていないのであれば、ゴーン被告に義理立てする必要もない。テイラー容疑者が、謎のベールに包まれた脱出計画のすべてを明かす可能性もある。関係者の逮捕で、ゴーン被告の包囲網は着実に狭まりつつあるのだ。
3月には義家弘介法務副大臣がレバノンを訪れ、ゴーン被告の身柄について交渉を行った。今後、ゴーン被告は日本に送還されるのか。元レバノン大使の天木直人氏がこう解説する。
「レバノン政府にとってゴーン氏を日本に引き渡すメリットは何もありません。日本政府の交渉は、徒労に終わるでしょう。ただし、米国政府が高度な政治的取引を持ちかけた場合はわかりません」
ゴーン被告が政情不安の続くレバノンに長く留まり続けるとは思いがたい。新型コロナが収まり、国外に出た時が、ゴーン被告の年貢の納め時となりそうだ。
『FRIDAY』2020年6月19日号より