30歳代女性の性の悩みと「6歳で両親離婚」トラウマの関係

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女性のための生活カウンセラー:鈴木セイ子が、とある女性から受けたデリケートな相談

「性」について密かに悩む女性は実に多い。人にはなかなか言えない悩みだけに、同じような境遇の人を知るだけでも女性は癒されるもの。また、様々な人生模様を知り、「自分らしく生きる」とは何かのヒントになればと思います。一人で抱え込まずに、女性だって“性”を解放していいはず(※手あたり次第セックスをするという快楽主義の意では決してありません)。どうかひとりで悩まないでください。〔取材・文:鈴木セイ子〕

写真:アフロ

母親に馬乗りになり髪の毛を引っ張って暴力を振るう父

さちえ(仮名)の両親が離婚をしたのは、彼女が小学校に入る前の6歳の時だった。

さちえは妹と二人姉妹。

両親は喧嘩が耐えず、姉妹はいつも肩を寄せ合って部屋の片隅で丸くなりながら時間が過ぎるのをただじっと待っていた。

父のDVだけでなく、母もモラハラ発言が多いヒステリックなタイプ。

さちえと妹は、そんな両親になるべく刺激を与えないように、親に甘えたい、これが欲しい、こんなところに行ってみたいなどの自分たちの欲求は常に我慢し、姉妹でのままごとやごっこ遊びで発散していた。家では毎日夕飯のあとにはすぐに入浴を済ませ、20時にはベッド入り、姉妹水入らずの時間がようやくほっと息をつける時間だった。

そんなある夜、姉妹がうとうと夢に入ろうとしていた時のことだ。

ガチャーン!と、ものすごい音でさちえは目が覚めた。

恐る恐るそっとドアを開けてのぞいてみると、そこには、母親に馬乗りになり母の髪の毛を引っ張って暴力を振るう父の姿があった。

さちえは怖くなって足がすくんだが、「このままではママが死んでしまうかもしれない…!」と、激しく喧嘩する両親へ割って入ったのだ。

「やめて! ママが死んじゃう! 毎日怖いよ! お願いだからもう二人とも離婚してよ! もうパパとママ別れてほしい!」

6歳の女の子は泣き叫んだ。

6歳といえば、「ものごころ」がようやく育ち始める年齢だ。

この両親は、そんな年頃子どもに「離婚してくれ」と言わせてしまったのだ。

6歳の小さな少女の方がよほど成熟した心を持っていた。

そんなさちえが、30歳を過ぎる頃に私・鈴木セイ子の前に現れた。

“バックが怖い”女性

「私、人に背中向けるとすごく怖いんです」

誰だって真後ろに人に立たれると妙に構えてしまうものです。

ただ、さちえさんの場合は、それだけではありませんでした。

「私、彼とセックスするとき、バックスタイルでできないんです。幼少期の両親の映像が突然頭の中に出てきて、そのころに引き戻される感じです。何か対処法ってあるんでしょうか」

思いもよらない言葉に私は大変驚きました。

さちえさんにとって“バックスタイル”は、“母親に馬乗りになって暴力を振るう父親の姿”という幼少期の両親の記憶がフラッシュバックしてしまうのです。

現在でもパートナーと愛し合う仲で、バックスタイルになったとたんに、急にカラダが震えてしまったり、突然涙が出てきてしまって中断するといいます。

対処法を模索しているということは、どうしてもその体位じゃないとダメな理由でもあるのか、そして、パートナーに話して理解してもらえないのか尋ねると、

「大好きな彼と愛を深めるのにバリエーションが少ないと飽きられてしまうのではないだろうか」

というさちえさんなりの心配と不安、そして、パートナーへの気遣いを語りました。

トラウマを取り除くのはそう簡単ではないし、とても時間のかかることです。何しろ、今まで20年以上ずっと心の中にあったものですから、それを整理整頓するのには、それ相当の時間がかかるものです。ですので、そこはカウンセリングの中でゆっくり整理整頓していくようにするのが望ましいです。

私はまず、さちえさんが今まで後回しにしてきてしまった「こころの整理」をするように促しました。

心の傷はカラダの傷の治りよりもずっと厄介で、年を重ねれば重ねるほど治りが悪くなるものです。

そして、さちえさんのお悩みの“バックスタイル”についていえば、世の中には昔から「四十八手」と言われるほどのたくさん体位があるのですから、わざわざ無理してバックスタイルにこだわらなくてもよいのではないか、パートナーが理解しているのであれば何も心配はないのでは、と促しましたが、さちえさんの中では、“バックスタイルを克服するということは、両親のトラウマを克服すること”と考えているようでした。

“条件付け”を少しずつ外していく作業

人というのは防衛本能が優れているので、無意識に記憶していることというのは実はとても多いのです。例えば、「夏の暑い日に熱中症で具合を悪くした」という経験のある人は、「夏」ということに既に不安を抱き、更に、「熱い」という体感を通して不安が助長され、特に体調が悪くなくても、“ある条件が揃う“と、経験と記憶で意識をしていないところで熱中症じゃないのに具合が悪くなったり、パニック発作や不安症状が出てきてしまったりします。

“バックスタイル”を克服したいさちえさんの“条件付け”を考えると、「父親が、母親に上から暴力を振るう」つまり、”背後に人”、”女性の上に男性が覆いかぶさる”、“大きな声(または音)や動作”という状況が揃うことです。もちろんその他には部屋の暗さや場所など細かなこともあります。

これを解体すると、「男性が上」を外すには、女性上位が良いでしょうし、それでバックスタイルをどうしてもというのであれば、女性上位の状態で後ろ向きになれれば、「条件付け」から外したところでの行動になるのでフラッシュバック回避とリハビリにはなるかもしれません。このポージングで大丈夫であれば「背後から」という条件は一つクリアするということになります。

筆者は性のスペシャリストではないので、果たして的があっているのかは正直自分でもよく分かりませんでしたが、さちえさんは熱心にメモをとりながら納得している様子でした。

ひとつクリア

二週間後、さちえさんがいらっしゃり、その後の経過をお話してくれました。

「先生があの時教えてくださった、“後ろ向きで上に乗る”って今までにない経験だったのですが、初めて後ろ向きになれました。しかも、フラッシュバックもなく、パートナーに集中できました。なんだ、大丈夫だな私って自信につながって嬉しかったです。終わってから彼も一緒に喜んでくれました! 勇気を出して相談してよかったです」

さちえさんは清々しい笑顔でした。

なにより、さちえさんに理解があり、一緒に乗り越えようと寄り添ってくれるパートナーがいるということはとても幸せなことですし、子どもの頃に親からの愛情を十分に受けられなかった分、いつまでもずっと幸せでいて欲しいと心から思いました。

トラウマの連鎖

さちえさんのように、トラウマというのはあらゆるシーンに現れるものです。

決して直接的な状況だけではないのです。感受性の強い方であればあるほど、連想ゲームのように、元のタネとはかけ離れたところまで連鎖してフラッシュバックしてしまいます。

人とは無意識のうちにいろんなことを、点と点で繋いでしまうものなのです。

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どんな小さなお悩みでも、打ち明ける場を見つけてください。お友達や家族にも言いにくい相談でしたら、メンタルクリニック内のカウンセリングや心理療法士など、皆さんの街で、いい先生を是非見つけてください。

鈴木セイ子

明星大学人文学部心理教育学科卒業。在学中より依存症患者の会や不登校問題の会などへボランティアとして参加し、カウンセリング実践をスタート。現在まで約20年間にわたり、主に女性のための生活カウンセラーとして携わっている。また女性をテーマにした映像プロデューサーなど活動の幅を広げる中、様々な女性を描く「女図鑑」というショートムービーをインスタで配信している。

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