「ディズニープラス」参戦で激化する動画配信バトルの行方

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「マンダロリアン」© 2020 Lucasfilm Ltd. ディズニープラスで配信中

我々の生活に、打撃と変化を与えた新型コロナウイルス。映画・ドラマ業界においても、公開延期や撮影中止など、甚大な被害が出る一方、緊急事態宣言に伴う外出自粛によって「巣ごもり期間」が設けられたことで、動画配信サービスの利用者が急増した。アメリカでは、Netflixの利用者が30%以上増えた、という報道もある。

6月1日からは都内でも映画館が営業可能になったが、「ソーシャルディスタンス確保のために従来の50%の座席しか使えない」「消毒や検温などの作業を挟むため上映回数を減らさねばならない」といった諸問題により、制作スタジオや作品によっては配信時期を早めたり、公開方法を映画館から配信にスライドしたりと様々な動きがみられる 。

6月18日からNetflixで配信されるアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』は、もともとは劇場公開予定だったものが延期となり、最終的に配信による公開に変更したもの。

劇場公開が下火になり、配信がさらに隆盛を迎えるかもしれない状況――。そんな中、非常に気になるサービスが日本上陸した。ウォルト・ディズニー・スタジオによる動画配信サービス「Disney+(以下、ディズニープラス)だ。

本国アメリカから7ヵ月遅れの6月11日に日本でローンチした「ディズニープラス」は、他の動画配信サービスと比べるとかなり異端な存在だ。

「Netflix」しかり「Amazon Prime Video」しかり、大手の動画配信サービスはほとんどが配信プラットフォーム先行で、コンテンツを各映画スタジオなどから集め、そこにオリジナル作品が追随する形。対してディズニープラスは、映画スタジオであるディズニーそのものが配信サービスに乗り出したケースだ。

メリットを挙げると、すでに固定のファンがいるため、安定した流入が見込めること。デメリットを挙げると、コンテンツの脆弱性だ。配給・製作会社主導のプラットフォームとなれば、競合である他社作品は当然流せない。プラットフォーム先行の配信サービスと比較した際、どうしても作品数やバリエーションに差が出てしまう危険性がある。

ただ、このサービスを立ち上げたのが「ウォルト・ディズニー・スタジオ」だというのがここで効いてくる。ディズニープラスは5つの柱を掲げており、「ディズニー」「ピクサー」「マーベル」「スター・ウォーズ」、そして「ナショナルジオグラフィック」だ。自社・または提携作品だけでこの豪華度。「アバター」(続編を撮影中)や「猿の惑星」などのヒット作を擁する20世紀スタジオ(旧・20世紀フォックス)も新たに傘下に加え、もはやコンテンツ力不足の懸念などどこ吹く風だろう。ちなみに2019年のアメリカ映画界での市場シェアは、ディズニー・スタジオが33.2%、フォックスが5%。全体の3分の1を大きく超える恐るべき占有率だ。

さらにNetflixなどライバルの各動画配信サービスから自社作品を引き上げ、ディズニープラスに集中させたことで、「見放題でディズニー作品を楽しむにはディズニープラス」に入るしかない状況に。加えて『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフドラマ『マンダロリアン』など、人気作の新作を続々と投入。

『アラジン』や『美女と野獣』など自社アニメの実写化も成功を収めているが、実写版『わんわん物語』をディズニープラスのオリジナル作品としてリリースした。今後も、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)や『スター・ウォーズ』の新作の配信が予定されており、ファンにとっては入るしかない体制が敷かれている。

日本でも人気のピクサーの新作短編も充実しており、『トイ・ストーリー』の新作短編もディズニープラスで配信。ディズニー・スタジオができるまでや、ディズニーのものづくりの裏側に迫るドキュメンタリー作品までもラインナップされている。

「ディズニーの舞台裏」© 2020 Disney ディズニープラスで配信中

もともと日本では「ディズニーデラックス」という独自の見放題サービスが運用していたが、ディズニープラスに統合されたことで、よりサービス内容が強化された形だ。

ちなみにディズニープラスの料金は、月額700円(税別)。

Netflixが800円(税別)、1200円(税別)、1800円(税別) ※画質や使用可能機器の数によって3パターン用意。

Huluが1026円(税込)。

Amazon Prime Videoが500円(税別)。

AppleTV+が600円(税別)。

となっており、ちょうどよい金額感といえるだろう。

会員数で比較すると、Netflixが1億8000万人超、Amazon Prime Videoが1億5000万人超、Huluが2800万人超といわれている。現在、日本ではAmazon Prime Video、Netflix、Huluなどが人気で、特に強いのがAmazon Prime Videoだ。

Amazonの「お急ぎ便」や音楽配信サービスと一緒に月額500円(税別)で楽しめるお得感は圧倒的である。

Netflixはオリジナル作品の豊富さで話題を集め、日本オリジナル作品として『全裸監督』などの攻めた題材を取り上げ、『攻殻機動隊 SAC_2045』『日本沈没2020』など、アニメ分野にも積極的に取り組んでいる。

ディズニープラスは「ディズニー作品にまったく興味がない」という人はメリットを見いだせないサービスではあるが、もはやそういった人の方が珍しいのではないか。日本でのディズニー人気を見るにつけ、ディズニープラスが先行する配信サービスの列強の中に割り込んでいく未来は、想像に難くない。ユーザーが重視する「料金の安さ」「コンテンツの充実度」の2つを、しっかりとカバーしているからだ。

そのため、ディズニープラスの使用イメージとして有力なのは、ユーザーにとってメインの選択というよりもサブ、あるいはオプション的な利用だろう。NetflixやAmazon Prime Videoにすでに加入している人々が、作品見たさに加入する形が予想される。

子どもがいる家庭であれば、月額700円で延々とディズニー/ピクサー作品を流し続けられるのは、かなりリーズナブルではないだろうか。仮にDVDやブルーレイの価格が3000~4000円前後、レンタルの価格が500円前後として見ても、お得感は強い。

新型コロナウイルスが加速させる、動画配信サービス戦国時代。新参者のディズニープラスは、どのような風を起こすのだろうか。動向を注視したい。

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画情報サイトでの勤務を経て、映画ライターに。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント、トークイベント登壇等幅広く手がける。

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