もしいま巨大地震が起きたら…?複合災害時の対策をプロに聞いた

コロナ禍のいま、地震や水害などのさらなる災害が起こったらどうすればよいのか? 専門家の貴重なアドバイス!

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2018年、インドネシア・ロンボク島の大地震。考えたくもないがコロナ禍のいま、こんな地震が起こったら?

新型コロナウイルス騒動の最中の5月。2日間連続で地震を予測する、緊急地震速報をテレビやスマホが、あの忌まわしい音で知らせてきた。東日本大震災で、毎日のように聞かされて、ノイローゼになりかけた“あの音”だ。ふと、今ウイルスに汚染されている状況を振り返って

「(……もし今、地震が起きたら避難所は3密になってしまう……)」

こんな思いが浮かんだ。もちろん私だけではなく、他にも国内で恐怖を感じた人が同じようなことを思ったはず。これは専門家に話を聞いて相応の準備をして、情報を共有しておきたい。

避難所以外に自分が宿泊できるスペースを確保

ここから繰り返し登場することになる『複合災害』の意味を覚えておいてほしい。これは、ひとつの災害が起きて、復旧しようとしている最中にまた新たな災害が発生すること。つまり、今日本はその危機にさらされているというわけだ。

仮に、今地震が発生すると避難所は、コロナウイルス対策として禁じられている人の接触をすることになるので、リスクは高まる。備蓄があるとはいえ、マスクも消毒薬もまた手に入りづらくなるだろうし、病院にはさらに患者が殺到する。考えると恐ろしいが、覚悟だけはしておいたほうがいい。地震は

「今から震度7が起きます!」

と宣言をして起きるわけでもない。警報音が鳴っても数秒後には揺れる。このコラムを読んでいる瞬間に起きてもなんの不思議はないことを、私たちは震災で嫌というほど学んだはず。脳内でモヤモヤと考えていても仕方がないので、まずはエキスパートの意見を聞く。

今回、貴重な意見を聞かせてもらったのは危機管理教育研究所の国崎信江さん。災害はもちろん、犯罪などありとあらゆる危機に関して、深い造詣を持つエキスパート。全国各地で危機管理に関する講演を行い、関連する著書も多数、執筆している。

まずは3密を避ける状況下で、避難を要する地震が起きたらどうすればいいのでしょう?

「地震が起きた場合に避難所に行くべきかどうかを判断するところから始めましょう。通常であれば、即向かっても問題はありませんが、現在はウイルス感染を防ぐためにも避難所は最低限の人数に留める必要があるからです。それでは、避難所へ行く条件をお伝えしますと……

・自宅が損壊
・自宅に落下、破損したものが散乱している
・ライフラインが途絶えて日常的に不自由
・揺れへの精神的苦痛および不安から自宅での生活が困難
・要介護者で支援者が被災した場合
・地域に津波や土砂災害の危険があり避難指示

と、このような条件が基本だと捉えてください」

ただ、避難所に入れない場合を想定すると非常に怖いのですが?

「そうですね、その状況に備えて日頃から自分が宿泊できるところをいくつか確保しておく必要があります。被災地域に住んでいない親元、兄弟、親族、友人、知人、同僚の家に“疎開”をするということです。その他、ホテルなどの宿泊施設を探してみる。“みなし仮設”を見込んで空き物件を探して住むという手段もあります。実は自治体が賃貸住宅を避難所として“みなした”場合、家賃補助が出るんですよ。ただ物件は基本的に早い者勝ちなので、なるべく早く物件を探しましょう」

なるほど。例えばマンション住まいの場合は、避難所へ行かなくてもいいということを聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?

「マンションは都心部に建てられていることが多いので、被災人口も多くなります。その理由から、建物がしっかりしているマンション居住者は自宅で過ごしてほしいと、要請されることもあるでしょう」

ちなみに我が家は築20年以上経過していますが、それでも大丈夫ですか?

「不安なら耐震診断を受けることをおすすめします。自治体の助成制度を調べて、条件に合えば利用しましょう。その上で建物が地震の揺れに強く、台風でも浸水の恐れがなければ避難する必要はないと思います。ただ、超高層階に住まわれている場合、揺れが大きいので室内の被害も大きく、精神的にもそこに留まることは難しいでしょうね」

一般的に車中泊という手段を聞きますが……。

「もちろん、車中泊も避難方法のひとつです。でも妊婦、高齢者、持病のある人、血流の悪い人などは車中泊には向かないケースもありますのでよく注意しましょう。覚えておいて欲しいのは、最終的には避難には自己責任・解決が求められるものなのです。政府や自治体が用意するものがありますが、見知らぬ人同士の生活はストレス、トラブルが発生します。特に今はウイルス感染の不安がありますので、移動距離がなるべく短い地域に宿泊できる関係性を持っておくのは大事です」

では、一般的に販売されている避難グッズの他に、複合災害に備えて準備しておいた方がいいものを教えてください。

「まずはヘッドライトを装着したヘルメット、止血パッド、エアギプス、三角巾、包帯などの応急手当て用品。救助は遅れる可能性があるので、自分でできる範囲で使用する、バール、のこぎりなど。電気が止まった場合の蓄電池とモバイルソーラーパネル、発電機。それから防塵マスク、ゴーグル、安全靴、給水袋、ランタン、卓上コンロとカセットガス、投げる消火剤が販売されていますので、あると火災時に使用できます。消火器があれば大丈夫です」

東京に住む私たちには、この収納スペースを確保するのは、なかなか厳しそうです。

「はい。できる範囲、と考えてください。ただ、耐刃手袋、ガラ袋、ほうき、ちりとり、ブルーシート、ガムテープ、粘着ローラーなどの掃除用具などは普段の生活に使用できるので置いておきたいですね。電気が止まっていれば、いつもの掃除機は使用できませんし、散らかった部屋の片付けができなくなってしまいます。あと避難所などで使用する、ワンタッチテントはウイルス感染を防ぐためにも用意した方がいいグッズです」

“水害”に備えた防災グッズ、用意していますか?

災害といえば、記憶も新しい水害がある。そろそろシーズンも迫ってきている今、私たちにできることはあるのだろうか。

「地震とは違う準備や注意を考えます。避難所に行くかどうかの判断は、先ほどお話をした地震時と条件とほぼ同じです。ただ揃えておいて欲しいものが変わってきます」

養生テープの用意と、お風呂場に水を張っておくだけでは足らない……ですよね?

「まずは多めにタオルを用意しましょう。とにかく水分を拭く。濡れたままで、風邪を引けば免疫も下がります。あとグッズは基本的に、水に強い、ということを前提にしましょう。防水、耐水製のライト、撥水加工されたウエアは必須です。もし、浸水エリアに住んでいるなら念のためライフジャケットをぜひ。必要になると売り切れますから、養生テープはもちろん水嚢、土嚢も考えておくほうがベストです」

地震の場合もそうですが、避難所に行かない場合に用意しておくべきものはありますか?

「マンション住まいではエレベーターが使えなくなるので、階段を登れる変形タイヤのキャリーがあると、水を運ぶのに便利です。トイレも流すタイプではなく便袋タイプの災害用トイレを多めに用意しましょう。戸建てであれば、発電機や蓄電池などやや大きめの設備を用意すると停電時に役立ちます。窓が多い分ですから、ガラスの被害も甚大になると想定して、飛散防止フィルムを窓に貼りましょう。あとは住居形態に限らず、水、食料を家庭内流通備蓄で多めにストック、停電に備えてソーラーで発電する製品を用意することをお勧めします」

災害が終わった後のことも考えた方が良さそうです。

「自然災害共済、保険への加入や見直しは、お勧めします。地震を中心に考えがちですが、水害の及ぼす怖さも近年でみなさん感じていると思うので、一度確認をしてみてください」

国崎さんからの一連のアドバイスを聞いて感じたのは、私たちの危機管理の薄さだ。複合災害に対して恐怖もあるけれど、どこかで

「(……どうにかなるんじゃないか?)」

そう思う油断がある。ただもし今、何かが起きても政府を含めた公的機関は即動くことはできないと、今回のコロナ騒動で学んだばかり。自分でできることは今日から始めて行こう。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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