中村倫也、林遣都、吉沢亮、佐藤健「1人複数役」は演技派の証明!

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いい俳優の条件とは?

その答えは、人によって変わるだろう。ただ、優れた俳優にのみ挑戦権が与えられる役柄は、明確に存在する。実在の人物や感情の振れ幅が広いキャラクター……いわゆる、「難役」というやつだ。その中でも特にレベルの高い上級者向けの案件――それが、「複数役」

同じ作品の中で複数の異なる人物を演じ、それを観客に納得させることは、役者にとっては非常にハードルが高く、逆に演技力の見せ所でもある。ここを超えることで、役者の価値が抜群に上がる、と言っても過言ではない。今回は、そんな複数役にチャレンジした俳優と作品を、いくつかご紹介しよう。

中村倫也:『水曜日が消えた』

『水曜日が消えた』6月19日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー ©2020『水曜日が消えた』製作委員会

まずは、公開を迎えたばかり(20年6月19日〜)の映画『水曜日が消えた』。人気俳優の中村倫也が、1人7役を演じている。

幼いころに遭った事故の影響で、曜日ごとに異なる7つの人格が内在する身体になってしまった主人公。しかしある日、“水曜日”がどこかへ消えてしまった。7人の中で最もおとなしい“火曜日”は、自分たちの身に何が起こっているのか、調査に乗り出すが――。

本作で中村は、“火曜日”をメインに、全く別の性格を有する人物たちを演じ切った。ここで難しいのは、それぞれは“別人”ではなく、1つの人格が7つに枝分かれしたものだということ。つまり、1つひとつの人格がある固有の人格の欠片、というようなニュアンスで見せていかなければならない。

これまでのキャリアでおっとりした草食男子(『美人が婚活してみたら』 『長いお別れ』 など)から猛々しいヤクザ(『孤狼の血』)まで幅広く演じ分けてきた中村は、その微妙な感覚を見事にとらえ、「安定した不安定さ」を提示している。俳優・中村倫也の真骨頂を存分に感じられる一作だ。

撮影中は、1日で7役全てを演じる日もあったとか。中村の表現力の底知れなさには、恐れ入る。

林遣都:『世界は3で出来ている』

2018年10月ドラマ『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』(テレビ朝日系)ロケ現場での林遣都(撮影:堀田咲)

「ウィズコロナ」をテーマに掲げ、コロナ禍の“いま”を描き、話題を集めたスペシャルドラマ(フジテレビ:6月11日放送)。演技力に定評のある林遣都が主演を務め、緊急事態宣言による外出自粛が敷かれ、3ヵ月間会えなかった3つ子を演じている。

このドラマで驚嘆すべきは、同じ画面に3つ子が映ること。単純に考えれば、林が3回に分けて1人ずつ演じ分けているわけで、その途方もなさと、観ている分には一切違和感のない“つなぎ”の上手さには圧倒させられる。3つ子が丁々発止のやり取りを交わしたり、3人が「せーの」で動きを合わせるシーンもあり、「演技」「撮影」「編集」といった技術面に目を見張る作品だ。

また、本作で林が演じた3つ子は見た目で明確にキャラ分けされているわけではなく、余計に彼の演技力が浮き彫りになる状況。いわば「1人芝居」の発展形で、よくもまあこれだけの難役をものにしてしまったものだと絶句させられる。

うだつの上がらなかった次男がテレワークで出世した一方、懇意にしていた製麺会社が倒産してしまうなど、我々がコロナ禍で経験した悲喜が切なくも生々しく盛り込まれており、ドラマ面でも観ごたえは十分。

吉沢亮:『キングダム』

NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』打ち上げでの吉沢亮

続編制作が発表されたばかりのヒット映画。先日のテレビ放送をご覧になった方も多いだろう。我が国が誇る正統派美形俳優として人気も実力も急上昇中の吉沢亮は、本作で「玉座を奪われた若き王」と「王の影武者となる戦争孤児」という、正反対のキャラクターに扮している。

演じ分けには顔の筋肉の使い分けを重視したそうで、「王を演じる際は、必要な部分以外の筋肉を使わない。影武者を演じる時には、全身の筋肉を使う」という違いを意識していたそう。

また、中国でも大規模なロケを敢行した本作は、ダイナミックなアクションシーンも満載。ただ演じるだけでなく、殺陣もこなさなければならないなか、剣道有段者である吉沢は「野性味あふれるチャンバラ」と「型に則った魅せる剣術」の2つの剣技を使い分けていたという。

ちなみに吉沢は、アニメ映画『空の青さを知る人よ』で、同じキャラクターの18歳と31歳を演じ分けており、これもある種「1人2役」といえよう。

(C)原泰久/集英社 (C)2019映画「キングダム」製作委員会

佐藤健:『世界から猫が消えたなら』

TBSのバラエティ番組出演のため事務所の車からおりる佐藤健(撮影:西圭介)

社会現象化したテレビドラマ『恋はつづくよどこまでも』や映画『るろうに剣心』シリーズで、向かうところ敵なしの佐藤健。彼も、映画プロデューサー・川村元気の小説を映画化した『世界から猫が消えたなら』(2016年)で、2役に扮している。余命わずかな青年と、彼の前に現れた悪魔(!)だ。

余命わずかと告げられた青年の前に、自分とうり二つの悪魔が現れる。悪魔は、この世から何か1つを消す代わりに、寿命を1日延ばすと持ち掛ける。主人公は、どんな決断を下すのか――。

物静かで気弱な青年と、軽薄でせっかち、終始不気味なオーラを放つ悪魔。“人でないもの”を説得力をもって演じるのは至難の業だが、佐藤は絶妙な異物感を漂わせつつ、ある種の怪物を体現している。2つの役で発声法から話すスピード、身体の動かし方や姿勢に至るまで一切を変えており、“受け”の演技と“攻め”の演技の両方を堪能できる点がポイント。

ただの2役ではなく、他の作品ではなかなかお目にかかれなさそうな役どころを選ぶあたり、目利きの佐藤らしいチョイスだ。


今回挙げた作品・俳優は一例だが、この並びをみただけでも、人気と実力を兼ね備えた面々がチャレンジしてきたことがわかるだろう。複数役をオファーされること自体が、役者にとっての誉れと言えるのかもしれない。次にこの栄誉を手にするのは誰なのか、注視したい。

SYO:映画ライター 公式サイト Twitter

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画情報サイトでの勤務を経て、映画ライターに。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント、トークイベント登壇等幅広く手がける。

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