「食い物」にされている韓国の元慰安婦たちの悲痛な手紙を公開
16年前から告発されていた支援団体の“銭ゲバ”ぶり
「元慰安婦は利用された。私たちを裏切って、国民を裏切って、全世界の人々を裏切って騙した」
5月、このように挺対協(現・「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」)を告発したのは、元慰安婦・李容洙(イヨンス)氏だった。挺対協とは在韓日本大使館前で「水曜集会」を主催していることで知られる、韓国の元慰安婦支援組織だ。
李氏の会見以降、韓国では連日、挺対協と前理事長である尹美香(ユンミヒャン)氏を巡る疑惑が報じられる事態となっている。
「とくに李氏が強く主張したのが、挺対協が集める多額の募金の使途が不透明だったことです。実は、集められたお金が元慰安婦のために使われることは稀(まれ)だったのです。挺対協の疑惑については韓国検察も動き出しましたが、捜査が始まった途端、挺対協関連施設の所長が自殺。彼女が最後に電話した相手が尹氏だったと報じられ、その疑惑はますます深まっています」(ソウル特派員)
実はこのような疑惑は16年前から存在していた。
’04年、沈美子(シンミジャ)氏(故人)ら13人の元慰安婦が挺対協を相手取り「募金行為及びデモ禁止の仮処分申請」を申し立てる裁判を起こした。元慰安婦のリーダー的存在であった沈氏は、日本人支援者に宛てた手紙(下)で次のように挺対協への不信感を露(あらわ)にしている。
〈挺対協は慰安婦のために募金活動をしています。しかし、そのお金の全てを横取りしている。強盗と同じです。被害者のハルモニ(おばあさん)達を食い物にしているのです(中略)挺対協にどれだけお金が入っているのか、ハルモニの前で明らかにすべきです〉
沈氏の指摘は、今回の李氏の記者会見とまったく同じ内容だ。
だが、挺対協は沈氏の告発を受け入れなかったばかりか、後に「沈美子は元慰安婦ではない」と公言するようになる。この根拠のない反論に対して、「元慰安婦の人権を軽んじている」(支援者)と批判の声が上がっている。
様々な疑惑が噴出している挺対協だが、その最も〝大きな罪〟は日韓関係を悪化させ続けてきたことにある。
慰安婦問題を解決しようと日本政府は’95年7月に「女性のためのアジア平和国民基金」を作り、’16年には日韓合意の下に「和解・癒やし財団」を発足させた。これらに対して挺対協は「日本の汚い金は受け取るな」と激しい反対活動を行い、問題解決への取り組みを拒絶してきた。

元慰安婦の金紅玉(キムホンオク)氏(90代・仮名)は、韓国の文喜相(ムンヒサン)国会議長宛に書いた手紙(下)の中で、妨害行為についてこのように暴露している。
〈’15年に日本から10億円をもらって元慰安婦のおばあさんたちに1億ウォン(約900万円)ずつが渡されることになりました。尹美香から電話が来て、こう言われました。『おばあさん、日本のお金はもらわないでください』。元慰安婦がお金を絶対に受け取れないように働きかけた。私は悔しくて『受け取る!』と反論しました〉
長年、元慰安婦の支援活動を行い、韓国国内で慰安婦問題の重鎮とされる金文淑(キムムンスク)氏(挺身隊問題対策釜山協議会理事長)は、私の取材にこう語っている。
「(水曜集会で)少女像の周りで大騒ぎするだけの団体は大嫌いです。挺対協は金儲けを第一に考えている団体です。カネ・カネ・カネばかりで、いずれ彼女らはおカネに圧し潰(つぶ)されてしまうんじゃないかと思う。これ以上、慰安婦問題をおかしなものにしてはいけません」
挺対協が常に慰安婦問題の解決を妨げようとしたのは、募金などから得られる収益源を確保し続けるためだったという疑念が強まっている。はたして疑惑追及の行方はどうなるのか。
「検察は証拠が固まり次第、尹美香を召喚するという姿勢を見せており、逮捕・立件もあると見られている。ただ問題は、文在寅(ムンジェイン)政権と挺対協が思想的同志という間柄にあること。今後の捜査に政治的配慮がどう影響を及ぼすのかにも注目が集まっています」(韓国人ジャーナリスト)
元慰安婦を食い物にしてきた〝罪〟は大きい――。


『FRIDAY』2020年7月3日号より
写真:アフロ 赤石晋一朗取材・文:赤石晋一郎(ジャーナリスト)