自己破産も視野…芸能界「ウィズコロナ」を生きる人たちの苦悩 | FRIDAYデジタル

自己破産も視野…芸能界「ウィズコロナ」を生きる人たちの苦悩

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舞台やライブなど、客席を間引いて公演を再開した団体もあるが、客足が新型コロナ流行以前に戻るまでにはまだまだ時間がかかりそうだ(写真:photoAC)
舞台やライブなど、客席を間引いて公演を再開した団体もあるが、客足が新型コロナ流行以前に戻るまでにはまだまだ時間がかかりそうだ(写真:photoAC)

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除されてもなお、世の中はまだ憂鬱なムードが続いている。そんな状況の時こそ、エンターテインメントが果たす役割は大きいはずなのだが、そもそも芸能界がかつてないほどのダメージを受けている。

「コンサートや舞台、スポーツなどのライブエンタメ市場は中止や延期を余儀なくされました。来年1月までの1年間に受ける損失について、チケットなどの販売を行う『ぴあ』によれば、推計で6900億円に上り、年間市場規模の77%が失われという調査結果も。今後も入場者数の制限などの影響が続くことから、市場が完全に回復するにはまだまだ時間がかかるでしょう」(スポーツ紙記者)

このコロナ禍での暮らしについて、エンタメ業界に携わる人から話を聞いた。その現場は、私たちの想像以上に混乱している。将来に不安を抱える人もいれば、新たな活動の仕方を見つけた人もいるようだ――。

◆「契約書がないから仕事の激減が証明できなくて…」

笠井さん(=仮名/50代)は、企業の宴会やデパート、定期的に行われる寄席などでの営業を中心に活動する芸人である。芸歴40年のベテランでもある笠井さんにも、コロナショックは襲い掛かった。生活資金の見通しが立たず、不安な日々を過ごしているという。

「3月末から寄席がなくなり、同時期に営業活動も軒並み中止になりました。寄席は稼ぐためではなく、腕磨きのために出演しているので、生活的には問題ないのですが、デパートや宴会などで生計を立てていたので、呼ばれなくなったのがいちばん手痛いですね。

実際問題、当面の間、収入はゼロになりますし、政府の助成金をもらえるかどうかもわからないんです。芸人は仕事を引き受けるとき、契約書を交わさずに電話一本で決めることが多いんです。そのため、どれだけ仕事が減ったかを証明することが難しいですね。私の場合は貯金もないので、最近は自己破産したいという考えが頭をよぎります。生活保護を受けられるなら、今すぐにでも受けたいです。

今後、仕事が入ってくるのは、半年から1年後だと思います。企業が宴会などを開く余裕を持てるようにならないと、そもそも芸事をお願いされることはないからです。なので、これから先、長い辛抱が続くことになります」

◆「毎日もやし。自分でイベントを主催するしかない」

大野さん(=仮名/30代)は、テレビやネット番組出演、イベント司会など、幅広く活動しているフリーアナウンサーである。地方局出身の大野さんは、都内で地道に実績を積んで、ようやく多方面から仕事をもらえるようになっていた。そんな時に、コロナで仕事が激減し、先が見えず、生活が困窮しているという。

「フリーアナウンサーの稼ぎの中心は、結婚式や企業のイベントなどの司会業。ギャラが1本10万円〜20万円なので、めっちゃ稼げるんです。ただ、昨年4月には5本あったそういったイベントが、今年はゼロ。家賃を払えなくなるぐらい困窮しています。毎食もやしを食べていますがそれでも半年持つかどうか。今まで通りの食事をしたら、2か月も持たなくなるでしょう。

地方局で担当していたラジオ番組も、“東京は感染者数が多いから、地方まで来ないでほしい”ということで、なくなっています。最近ではこのまま仕事がほぼゼロの状態が続くのは不安なので、YouTubeで動画を配信したり、オンライン結婚式を主催したりして、自分でアナウンサーの仕事を作っています。そうでもしないと、稼ぐ場所がなくなってしまうと焦る気持ちしかないですね」

◆「リモートで仕事、普通にできるじゃん!」

今ではネットの会議システムを利用して、自宅にいながらオーディションが受けられるようになったという(写真:photoAC)
今ではネットの会議システムを利用して、自宅にいながらオーディションが受けられるようになったという(写真:photoAC)

企業のプロモーションや雑誌を中心に活動するフリーモデルである七尾さん(=仮名/20代)も、新型コロナウイルスの影響を受けているひとり。モデル業のほかにも、ナレーターやインフルエンサー案件、YouTube出演などの仕事もこなしているが、需要はかなり減っているという。しかし彼女は、そんな中でも仕事ができる“新たな芸能活動の在り方”を見出したようだ。

「撮影はできないので、モデルの仕事はほとんどなくなってしまいました。そのため最近は、オンラインで応募できるオーディションに参加しまくっています。例えば、IT企業が手がけるアプリの宣伝動画、YouTube動画のナレーター、企業のプロモーション動画などのオーディションにエントリーしました。

自分で動画を撮影して、それを送るだけで応募が完了します。その後、Zoomでの面接という流れでした。出演するといっても、自宅で撮影できるように配慮してくれるということだったので、このご時世でも働けることをありがたく思いましたね。

おかげさまで仕事は継続的になんとか得ることができていますので、今のところ生活資金面では、そこまで心配はしていません。むしろコロナのおかげで、“自宅にいてもオンライン環境があれば、芸能活動できるじゃん!”と思えました。また、インフルエンサーやオンラインサロンなどを始めれば、遠隔の仕事をどんどん増やすことができると分かったので、今後は今まで以上にオンラインでの芸能活動に力を入れていこうと思っています」

◆「マスクで汗だく。メイクさんに負担も」

小川さん(=仮名/30代)は、有名な劇団の舞台に客演として多数出演し、舞台をメインに活動する俳優である。大きな舞台へ向けて、稽古を始めた矢先に、政府からイベント自粛要請が出たため、それ以降の舞台はスケジュールが大幅に変更になってしまった。概ねは中止になってしまったという。

「役者やスタッフはみんなで舞台を成功させたいという方向にベクトルが向いていますが、今回の事態ばかりはどうしようもないです。延期することになりましたが、本当に開催できるかわからないので、中止になったも同然だと考えると、一度そこで舞台への意識は途切れてしまいました。

僕が参加している舞台は、テレビドラマや映画で引っ張りだこの俳優さんが看板になることが多く、今回もそうでした。となると、舞台を強行して万が一クラスター感染の温床になってしまえば、“あの人気俳優が出ていた舞台で〜”と枕詞が付き、看板役者さんにマイナスなイメージがついてしまう。それは避けなければなりませんでした。ですから中止になったことも、諦めざるを得ないです」

緊急事態宣言解除後にスタートした現場も、“新たな方法”で観戦予防を行いながらの撮影となっている。

「最近ではようやく舞台の稽古やドラマの撮影前の打ち合わせが再開されました。ドラマの撮影現場の入り口にはサーモグラフィーが設置され、体温の測定が義務付けられています。あそこを通るたびに、引っかからないかなと不安になりますね(苦笑)。

また、人が集まらないようにスケジュールの調整やシーンの変更などの対策が取られています。以前はたくさんの人が集まっていた衣装合わせも、今は最小人数のみが現場にいます。他の人はZoomを利用して遠隔で確認ができるようにしていました。今までよりも“密”を避けるために物理的な虚栄があるぶん、コミュニケーションは“密”に取らなくてはいけないなと思いましたね。Zoomの画面越しでは伝わらないこともありますから。

撮影前のドライリハーサルではマスク着用を義務付けているため、本番前にかなり汗をかいてしまいます。メイクさんにはかなり迷惑をかけてしまっていますが、収束まではこのように丁寧な予防が必要です。作品を通じて、明るい気持ちを届けられるようになれば嬉しいですね」

少しずつ動き出した芸能界。以前のように元どおりになるまでには時間がかかりそうだが、そんな中でもエンタメ畑の人々は「新たな生活」を模索している。暗いニュースがエンタメによって明るく照らされるのは、もう間も無くかもしれない。

  • 取材・文村嶋章紀

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