プロ野球「無観客で投手の調子が上向く理由」長谷川滋利が解説 | FRIDAYデジタル

プロ野球「無観客で投手の調子が上向く理由」長谷川滋利が解説

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開幕しても無観客試合が続いているプロ野球。打球音や選手の声がよく響き例年とはまったく違う雰囲気になっている
開幕しても無観客試合が続いているプロ野球。打球音や選手の声がよく響き例年とはまったく違う雰囲気になっている

日本のプロ野球が開幕しました。ここまで辿り着くには難しい決断が続いたと思いますが、関係者や運営サイド、そして辛抱強く調整を続けていた選手の皆さんにまずは大きなリスペクトを抱きます。

私もアメリカからテレビやwebで多くの試合を観戦していました。観客がいなくて寂しいという思いはありますが、各球団がファンからのリモート応援の様子をスタジアム内で紹介したり、開幕戦のチケットを持っていたファンのパネルを設置したりと、様々な工夫をしていて非常に勉強になりました。

そして何よりも、テレビで観戦していたファンがSNSなどで、無観客だからこそ「生の音、生の声」に注目していたことに感心しました。

実際に観戦していた方は感じたかもしれませんが、いつもの歓声や声援がないぶん、選手が発するチームを鼓舞する声、木製バットにボールが当たった音や、キャッチャーの捕球音などが多く中継では拾われていましたね。

試合中に選手の声が聞こえるのはファンにとっては単純に嬉しいものですし、その声の中に1プレーごとの思いやチームで勝ちに行く姿勢が滲んでくると思います。これは余談ですが、例年のグラウンドではヤジのような声も多少はあります。ただ、さすがに今季に限っては選手も中継に拾われることを意識して声出しをしているようです。ヤジは聞こえませんでした。ある意味では例年よりまっすぐに野球に向き合っているとも言えます。

音に関しても、打球音でも芯を食ったクリーンヒットと、詰まらされた内野ゴロでは音の質が違いますし、外国人などは特有のパワー溢れる重い音を出しています。捕球音にしてもストレートと変化球でキャッチャーミットの鳴り方が変わってきますし、いい捕手はどんなボールでもいい音を出すので、投手の立場からすればその音で「お、今日は俺、調子いいかもしれんな」と気分が良くなって投球にリズムが生まれる、なんてこともよくあります。

野球経験の有無は関係なく、これらは注意深く観察していると少しずつ分かってきます。無観客という残念な状況ではありますが、せっかくですから今季のプロ野球をポジティブに捉えて選手の言動や、どのバッテリーが痺れる捕球音を鳴らすか、なんていう風に普段は味わえない野球を見逃さず、聞き逃さずに楽しんでみてはいかがでしょうか。

「巨人vs.阪神」戦は視聴率10%超え

ポジティブに捉えるいう意味では、今季は試合数をはじめ、日本シリーズの日程、クライマックスシリーズはセが開催なし、パはファイナルステージのみの開催、と多くの変更がされました。他にも延長イニング数、外国人枠、登録選手数、トレード期間なども特例ずくめです。かなりイレギュラーなシーズンとなりますが、だからこそプロ野球、もっと言えば中止になってしまった甲子園も含め、日本球界という大枠を見つめ直すための好機なのではないでしょうか。

その一つとして中継および放映権があります。開幕戦の「巨人vs.阪神」などは全国ネットでも10%を超え、局地的には20%に迫る地域もあったと聞きました。他のスポーツがまだ開幕前であり、バラエティもリモート収録などという状況がありながらも多くの人が野球を待っていたことを裏付ける数字でしょう。

この数字をどう受け止め、分析して活かしてゆくのか。アメリカではMLB機構が大手キー局と締結しその分配金が各チームに振り分けられるケースと、各チームが地元テレビ局と結んでいる契約がそれぞれ存在します。日本とアメリカではファンの数も熱量もまた違ってくるので一概には比較できませんが、日本でもスポーツ専門チャンネルや、動画配信サービスが増えてきました。それらを包括しながら、今季の野球は放映権のあり方を再考する契機だと私は考えています。

近年のプロ野球の地上波中継は減少傾向にあり、そのぶん各球団はチケット収益を得るために球場に足を運ぶファンにサービスを厚くする企画を講じてきました。もちろんそれを継続しながら、今回のコロナ禍で改めて確認できた放映権やライブ中継の新たな価値と可能性を加えれば、日本のプロ野球はよりいい方向に進むのではないでしょうか。ファンの皆さんからの意見も非常に重要なので、どんどん発信していって欲しいですね。

  • 長谷川滋利

    1968年8月1日兵庫県加古川市生まれ。東洋大姫路高校で春夏甲子園に出場。立命館大学を経て1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。初年度から12勝を挙げ、新人賞を獲得した。1997年、金銭トレードでアナハイム・エンゼルス(現在のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)に移籍。2002年シアトル・マリナーズに移り、2006年現役引退

  • 写真ロイター/アフロ

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