ピンチを力に!東ちづるがコロナ禍で取り組む「オンライン映画館」

3か月の自粛期間で受けた大打撃。それをもろともせずに発見した“新たな活動”の方法とは?

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顔を合わせない今だからこそ必要な意識の共有

インターネット会議のアプリを使っての取材に応じてくれた東さん。1日に複数のインターネット会議に参加する日もあるという

「変わったことですか? 激変ですよ。外出は10日に1回、食材を買い出しに行くくらい。仕事はほぼ全滅ですね。かなりビクビクしていた時期もあったんですけども、今は、情報も割と整理されて来ているので、自分が感染しないようにというだけでなく、“もしかしたら自分が保菌者かもしれない”という意識を持っています」

オンライン会議の画面越しにインタビューに答えるのは、女優でタレントの東ちづるさん(60)だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で政府が『緊急事態宣言』を発出して以降、東さんも例に漏れず打撃を受けていたようだ。

「この3ヶ月は本業の女優業、イベント、講演なんかもなくなりました。原稿を書いたりはしていて、ラジオはリモートで出演したり、電話取材を受けたりはしていますが……。これは私だけではなく、エンタメ業界のみなさん同じなんでしょうけどね。

今までは“仕事=お金を生産する”ということにあまりにも偏っていたなあ、という気がしますね。だから、こういう状況になった時に、収入がなくなると不安になりますし、私にとって仕事ってなんだろう、経済ってなんだろう、そういうことを調べたり、考えたりする時間になりました。

出演する側もスタッフさん側も、今は本当に辛い状況ですよね。先行きが見えないというストレスもあります」

夫の堀川恭資さんも、新型コロナで打撃を受けたひとり。以前は飲食店を経営していたのだが、今年の1月から雑貨ショップ『HOLLY’S GOLF MARKET』(ホリーズ・ゴルフ・マーケット)をオープンさせた。ところが同時にこのコロナ騒動が発生。東京都の自粛要請に従ってクローズしたが、6月より再開した。

東さんは、この機会にライフスタイルについて見つめ直すことができたと言う。

「この状況の中で、『良し悪し』をいっぱい考えました。例えば今まで、実際のミーティングにしても時間とお金と労力を使って、フェイストゥフェイスでやっていたものを、こんなふうにオンラインでスムーズにできるということもわかった。ただやっぱり実際に会わないと温度感が伝わらない、ということもありますよね。

新型コロナウイルスは、人と人を物理的に離すものなんですね。感染予防のために他人と距離をとらないといけない。けれど、仕事も活動も余暇も、より社会と人とはつながらなければと痛感しました。顔を合わせられなくても温度感や意見を齟齬なく共有してこそ気づきもあるし、アイデアも生まれます」

誰も排除しない、されない社会

仕事がない中でも、東さんはやるべきことを見つけて粛々とこなしている。彼女が代表を務める一般社団法人『Get in touch』のミーティングや新たな活動、その記者発表などを行なっているのだ。

「Get in touchは、普段はアートや舞台、映像、音楽などのエンターテインメントを通じて、誰も排除しない『まぜこぜ』の社会を目指して活動しています。普段から全国の福祉施設と繋がりながら活動していますので、福祉の現場ではマスク不足についてなかなか声を上げられないという実情を知ったのです。医療現場の崩壊は取り沙汰されていましたが、福祉現場の崩壊はほとんど知られていませんでした。

そこで、マスクを福祉現場に届けるプロジェクト『#福祉現場にもマスクを』を一般社団法人障害攻略課さん、NPO法人D-SHiPS32さん、株式会社ヘラルボニーさんとGet in touchの4団体でタッグを組み、立ち上げました。

そのマスクプロジェクトを展開中に、株式会社中部日本プラスチックさんから“大量にマスクを入手できるので、社会に役立てたい”という相談がありました。売る人も、買う人も、使う人も笑顔になれるような仕組みができないかと、考えたのが『おすそわけしマスク』です」

この取り組みは、前述の4団体に、株式会社中部日本プラスチックと株式会社小国士郎事務所も加わってパワーアップしてのプロジェクトとなった。

大人用・子供用マスクを55枚分の費用で購入すると、購入者の手元に50枚分のマスクが届き、残りの5枚は福祉関連施設に寄付される、という仕組みになっている。これまでに、すでに60万枚を超えるマスクを、1,500を超える福祉現場に届けることができたと言う。

「マスクを届けることも重要ですが、『全ての人が幸せになる権利がある』、そのために福祉があるということを伝えるプロジェクトでもあります」

コロナ禍で模索した「新たな試み」

映画館での放映が難しいということで、新型コロナウイルスの自粛期間中に新たに導入したのが、自宅で映画を鑑賞できるシステムだ(Get in touchシアターホームページより)

Get in touchの活動でも、コロナの影響はあったらしい。

「『月夜のからくりハウス まぜこぜ一座』は様々な特性(障害)を持つプロのパフォーマー達と繰り広げる摩訶不思議なエンターテイメント舞台です。今年のパラリンピックの時期に、神田明神で開催予定だったのですが、来年のパラリンピックの時期に延期することになりました」

Get in touchでは、2本の映画を制作している。1つは、LGBTをテーマにした『私はワタシ over the rainbow』。そしてもう1つは前出の舞台「月夜のからくりハウス まぜこぜ一座」の記録映画だ。

「映画館で上映したり、上映会をしたりしていましたが、この事態で中止に。そこでオンラインでの上映を決めました。多くの方に観てもらえるし、お家にいながら観られる。一人で観たいという方もいますしね。このピンチをチャンスにしていく、ということが肝心だなと思ったんです。

今は便利なシステムがたくさんあります。オンライン映画館を「Vimeo(ヴィメオ)」で実現させました。その名も『Get in touchシアター』です。ワンコイン500円で72時間レンタルができるコースと、300円分の寄付ができる800円のチャリティコースがあって、好きな方を選んでもらえます。

新しいことを始めるのは大変でしたが、こうして“新たな生活様式”を生み出せたのは、コロナ禍だったからこそかもしれません。今改めて振り返ると、気づきの多い期間だったな、とも思いますね」

そう締めくくると、東さんはとびきりの笑顔を見せてくれたのであった。

  • 取材・文小泉カツミ

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