民放のYouTubeは“2強”か 鍵を握るのは「女子アナ」動画

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昨年10月に開設されたテレ朝のYoTubeチャンネル「動画、はじめてみました」

「美女路線」で攻めるテレビ朝日

緊急事態宣言が解除されても自主的にステイホームする人が多く、テレビ番組、動画配信サービス、YouTubeなど、エンタメコンテンツへの接触時間が増えている。なかでも、この機にジワジワと浸透しつつあるのが、民放各局が手がけるYouTube動画。これまでは番組宣伝用の1分前後のものばかりで、オリジナルコンテンツはParavi、FOD、Huluなど有料の動画配信サービスばかりだったが、このところYouTube公式チャンネルへの公開も増えている。

ただ、その取り組みにはバラつきがあり、まずは各局のコンテンツを確認しながら、それぞれの狙いを探っていきたい。

民放各局の中で最も意欲的なのはテレビ朝日。主に番組宣伝を行う公式チャンネル「tvasahi」に加えて、昨年10月にオリジナルコンテンツを公開する「動画、はじめてみました」を開設し、2つのチャンネルを使い分けている。

オリジナルコンテンツの中心となっているのは、女子アナを中心にした、いかにも再生数が獲れそうな美女路線。絶対的な人気を誇る弘中綾香アナが刀剣エクササイズ、令和版ビリーズブートキャンプ、『鬼滅の刃』禰豆子コスプレなどに挑戦する動画のほか、「三谷紬アナが本気でダイエットしたら」「斎藤ちはるの今でしょフィットネス」などの女子アナ動画シリーズが、それぞれ数十万回もの視聴を獲得している。

さらに、バラエティ『かみひとえ』の「夏菜&朝日奈央のツインテール姉妹」、上坂すみれや鬼頭明里など美人声優の出演動画もあり、いずれも男女を問わず人気の顔ぶれであるところが強みだ。

次に注目すべきは、テレビ東京の充実ぶり。今年4月に『内村のツボる動画』が月1回2時間のレギュラー放送化され、歌のうまい住職、ウグイス嬢、自衛官などが登場する「歌うまシリーズ」や、「職人技シリーズ」「大食いシリーズ」などの多彩な動画が集まるようになった。

さらに、入社2年目の森香澄アナが「紅蓮華」「サイレントマジョリティー」「マリーゴールド」「宿命」などを本気で歌うシリーズ、田中瞳アナが「筋トレ格言集」「ウルトラマン名セリフ集」などを朗読するシリーズなどのアナウンサー動画も好評。

番組関連を見ても、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』番外編「作ってみた世界のヤバい飯を再現・出家飯」などの異色コンテンツから、『孤独のグルメ』『勇者ヨシヒコ』などの連ドラ、アニメ『ポケットモンスター』、赤ちゃん向け番組『シナぷしゅ』などを惜しげもなく公開している。

テレ東のYouTubeチャンネルはチャンネル登録者数88.5万人。特に田中瞳アナと中垣正太郎アナの歌ってみた企画が人気

日テレとフジは「様子見」の段階か

一方、視聴率における絶対王者の日本テレビは、「他局や世間の反応を見ながら様子を見ている段階」という印象。ドラマの予告映像、ニュースの24時間ライブ配信、『キューピー3分クッキング』などの定番をメインにしつつ、徐々にオリジナリティの高い動画を混ぜはじめている。

なかでも中心となるのは、やはりアナウンサー動画。アナウンサーたちが早口言葉に挑む「局アナのプライド」、「日テレアナウンサー絵本よみきかせ」、人気ナンバーワンの水卜麻美アナとバーチャルランチを楽しめる「おひるごはん一緒にたべませんか」が好評を博している。

その他にも人気番組を編集した「さんま御殿 再現VTRコレクション」、コロナ禍に対応した「自宅で簡単エクササイズ!ティップネス“運動応援”チャンネル」なども見られ、今後はさらに充実化させていくだろう。

フジテレビの動画配信はFOD中心で、YouTubeに関してはまだ活発とは言えない。もともと他局のようなアナウンサー関連の動画を手がけてきた歴史は長く、現在もFODで期間限定・無料配信している。ただ、YouTubeの『めざましテレビチャンネル』で久慈暁子アナと井上清華アナが地雷メイクに挑戦した動画が話題になるなど、他局の動きを見ながら変わっていきそうな兆しを見せている。

同様にTBSも現状ではオリジナルコンテンツが少なく、番組宣伝以外で目立つのは、アナウンサーによる「えほんよみきかせ」と「『東大王』からのクイズ出題」程度に留まっている。

ここで各局のチャンネル登録者数を見てみると、テレビ東京が88.5万人、テレビ朝日が55.2万人(合算)、日本テレビが50.6万人、TBSが35.5万人、フジテレビが23.9万人。さらに、開設時期こそ異なるものの視聴回数を見ると、テレビ朝日が約3億3700万回(合算)、テレビ東京が約3億1000万回、日本テレビが約1億7500万回、フジテレビが約8100万回、TBSが約2800万回。

あくまで各局の名前を冠した公式チャンネルでの単純比較であり、費用対効果などは別の話になるが、YouTube動画の影響力としては「テレビ朝日とテレビ東京の2強」と言っていいだろう。

テレビとYouTubeのボーダーレス化

現状は良くも悪くも「事実上の自社タレント」と言えるアナウンサー、とりわけ“女子アナ”関連のコンテンツに頼っているところが大きい。ただ、テレビ局にとってアナウンサーはバリューがあると同時に、無理をさせられない存在であり、一定以上の責任を背負わせることは難しいはずだ。

その意味で鍵を握っているのは番組連動コンテンツであり、未公開映像、スピンオフ、地上波では放送しづらいシーン、最初からYouTube用に撮影した映像などをどれだけ公開していけるかが成否を左右するかもしれない。また、今後ますます本腰を入れていく段階で、局のチャンネルと各番組のチャンネルを連携させて相乗効果を狙うことも必要だろう。

テレビマンの間に、かつてのような「YouTubeは敵だ」という見方はかなり減っている。しかし、まだ「どう利用して番組に還元し、どう収益につなげていくのか」というポジティブ思考というより、「今やらなければマズイ」という強迫観念が大きいのではないか。

ネット接続が前提のスマートテレビがじわじわと浸透するなど、すでに「テレビ画面で、テレビ番組とネットコンテンツのどちらを見るか」という争いがはじまっている。だからこそ、「各局のYouTubeチャンネルを見てもらい、それに連動したテレビ番組の視聴につなげる」という戦略が欠かせなくなっていくだろう。

すでに若年層の中には、「今見ている映像がテレビ番組なのかYouTube動画なのか分からない」という人が少なくないという。数年先、テレビ番組とYouTube動画がボーダーレスな存在となっていても驚かない。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月20本強のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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