早慶などの有名私大が「いまでも全面解除できない」理由

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人がまばらで閑散とする早稲田大学。多くの学生で溢れ学内に活気が戻るのはいつになるのだろうか

「せっかく第一志望校に入学したのに、ほとんど大学には行っていません。授業はオンラインで行われ、外出する必要がないですから。家にこもりきりで、友達は一人もできませんよ。東京にいる意味がないので、大学が全面再開するまで実家のある九州に帰ろうと思います」

今年、早稲田大学政治経済学部に入学したAさんが語る。4月の入学シーズンから約3ヵ月。早稲田や慶応、明治など多くの有名私立大学は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、構内への立ち入り制限などを継続している。入学式は中止もしくはリモートで実施。授業の大半はオンラインで行われ、Aさんのように友達ができず引きこもりがちな新入生も多いという。

同じ教育現場でも、小中高を再開させた自治体は多い。入構制限などの全面解除に二の足を踏む大学との違いは、どこにあるのだろうか。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏が語る。

「小学校、中学校は義務教育で、高校への進学率も100%に近い。さすがに長期間、休校にしていては、子どもたちの教育や成長に支障が出ます。またオンラインで授業をするにも、子どもたちにネット環境を整えろと指示するのも酷でしょう。小中学校は地域に根ざしているので、子どもが外出しても親の目も届きやすい。対面での授業が再開できる要因が整っているんです。

一方の大学は、大勢の学生が構内に集まる機会が多い。クラスターが発生する可能性は高いと言えます。東京や大阪など都市圏の大規模校は、特に危険です。地方出身者も多く、感染者が出れば帰省した際に全国へ拡大することも考えられるでしょう。

個人のパソコンを持っている学生も多く、リモートで授業をしやすいのも大きな要素です。早稲田大学などは7億円の学生支援をし、一部をオンライン環境の整備にあてています」

トラウマになった二大学の“事件”

有名大学が全面解除に踏み切らない理由は、コロナ感染拡大防止だけではない。大バッシングを受けた二つの大学の事例が影を落とし、トラウマになっているという。石渡氏が続ける。

「郡山女子大学(福島県郡山市)と京都産業大学(京都府京都市)のケースです。郡山女子大学では、70代の女性教授が2月にエジプトへのツアー旅行に大学に無断で参加。帰国後コロナに感染したことが発覚し、世間から非難されました。大学への抗議電話は100件以上。付属の女子校では生徒が通学中に『コロナ、コロナ!』と指をさされたため、制服での登下校を中止する事態となったそうです。

京都産業大学の件は、さらにバッシングがヒドかった。キッカケは、4年生たちが3月に行ったヨーロッパ旅行でした。帰国後に出席した卒業祝賀会でクラスターが発生し、70人以上が感染したんです。大学には『火をつけてやる』『感染者の住所を教えろ』などの電話が殺到。まったく関係のない学生も、飲食店などで『京産大生は入店お断り』などのイヤがらせを受けました。

中には京産大という名前を隠して、バイト先の面接を受けた生徒もいるそうです。本人たちに悪気はなくても、大学のイメージを相当悪くしたと言わざるをえません」

両大学への反響の大きさは、教育関係者の予想をはるかに超えるものだったようだ。学内からの感染拡大は死活問題ーー。以後、各大学はコロナ対策を徹底するようになる。

「大学の印象が悪くなれば、翌年の志願者動向、さらには在校生の就職活動にも影響を及ぼします。『自分の大学からは絶対にクラスターを出したくない』『安全性が確実に保証されるまでは全面解除に踏み切れない」というのが各校の本音でしょう。

政府の『緊急事態宣言』が解除され、会社など他の組織では人が戻りつつあります。ただ専門家は、コロナの第二波、第三波の襲来に警鐘を鳴らしている。多くの有名大学のオンライン授業は前期をメドに行われていますが、後期も継続される可能性が高い。こうした状態が続けば、友達もサークル活動もできない大学生活に失望し、大きなトレスを感じる学生がどんどん増えるのではないでしょうか」(石渡氏)

感染拡大に慎重になる大学の姿勢もわからなくもない。だが学校に行けない学生の心境を思うと、1日でも早い全面再開が望まれる。

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