人気女優も指導「エイベックス演技講師」が大学と泥沼訴訟のワケ | FRIDAYデジタル

人気女優も指導「エイベックス演技講師」が大学と泥沼訴訟のワケ

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「歌手や俳優を目指す子たちを演技指導していて感じるのは、貪欲さです。みなエンターテイナーのプロとしての成功を求めている。昨年指導した、安斉かれんもそうでした。対して一般の学生は、当たり前かもしれませんが、最初は『単位が取れればいい』という気持ちの人が大半でした。

それが講義を重ねるたびに、みんな自己表現をどんどんしてくれるようになった。教える側として、こんな嬉しいことはありません。大学の学長からも、『ぜひ専任になってください。よろしくお願いします』と言われて、非常勤講師から特任教授になりました。

それなのに、突然教授として働くことが出来なくなってしまいました。とても納得できないため、損害賠償請求の裁判を提訴することにしたのです」

憤る気持ちを抑えながらそう語るのは、山口県下関市にある「梅光学院大学」で文学部特任教授を務めてきた相原幸典氏(60)だ。

相原氏は、浜崎あゆみやAAAらが所属する「エイベックス・マネジメント」が運営するタレント育成スクール「エイベックス・アーティストアカデミー」東京校の演技講師も務めており、昨年演技指導した安斉かれんは、浜崎あゆみ誕生秘話を描いた話題のドラマ「М」でアユ役を演じ、注目を集めている。

「相原氏は、エイベックスグループの松浦勝人氏の信頼が厚く、松浦氏の発掘した『金の卵』の演技指導を長年任されていました。アカデミー発足前はエイベックスに新人開発部があって、その当時から演技講師をしています。AAAの演技指導も任されていました。今でも相原氏と松浦氏は、強い信頼関係で結ばれています」(音楽業界誌ライター)

相原氏は昨年11月には、これまでの演技指導の経験をまとめた『実践表現講座・演技の気持ち』という本も上梓している。相原氏の演技指導は、長年の実績に裏付けされたものなのである。

その相原氏が特任教授を務めていた「梅光学院大学」は、ミッションスクールを前身とする学校法人・梅光学院が運営。大学のほかに大学院・高校・中学・幼稚園が併設されている。

地域に根差した大学と、エンターテインメント業界で確固たる地位を築いてきた相原氏ーー。両者の関係は良好であるべきはずだが、相原氏は昨年8月に大学側から雇用契約の終了を告げられたという。

相原氏側は大学と学長ら執行部職員を相手に損害賠償請求の裁判を起こしたが、一方、大学側は相原氏とは退職についての確認書を交わしており、それをもとに相原氏が同大学の従業員ではないことを確認する訴訟を起こしている。まさに「泥沼の様相」を呈しているのだ。一体なぜこんなことに――。

裁判に至る話の前に、特任教授に就任した経緯を相原氏に語ってもらった。

「2016年に、文学部の非常勤講師としてこの学校に赴任しました。私は静岡県の熱海市に住んでいるのですが、いつも一緒になる温泉仲間から『知人に梅光学院大学の学長がいて、最近辞めた特任教授の代わりになる人を探している。知名度があり、教育に関心のある人がいいので、相原さん、興味はないですか?』と、聞かれたことがきっかけです。

私には以前から、『演技』というのは、プロを目指す人だけのものでなく、一般の若い人たちや学生にも、自己表現、自己アピールの向上のために役立つという思いがありました。生きた教育の現場に立てることは、またとない機会だと思いました」

大学との雇用契約は1年間。実際に請け負ったのは夏季の集中講義だったという。

「講義は4日間集中で、テーマは『スピーチ法』。話し方や表現の基礎を教える授業でしたが、学生の反応に手ごたえがあったうえ、講義の様子を見にきていた大学の樋口紀子学長も評価してくれたようで、『来年もお願いします』と、翌17年も夏季集中講義を頼まれました。樋口学長は学院の学院長も兼ねており、学院のトップから評価されたことはたいへん嬉しかったです。雇用期間は、同じ1年間でした。

翌年も同様の方法で授業を行い、これも参加学生からの好評をいただきました。『来年はぜひ専任でお願いします。これからは大学の改革にも手を貸してください』と樋口学長から頼まれたので、もちろん引き受けました。

特任教授は通年です。『エイベックス・アカデミー』の演技指導の仕事もありましたので、大学の講義は毎週水、木、金というスケジュールで東京と下関を行き来するようになりました」

相原氏は、特任教授としてスピーチ法、演劇論、日本語表現法などを担当。親交のある現役漫画家にもオンライン通信で講義に参加してもらうなど、幅広い人脈を駆使した講義は学生たちに人気だったという。

「大学のクリスマス行事として行われた学生による教員の人気投票でも、全教員で2位になったこともありました。素直にうれしかったです。樋口学長からは、翌年(2019年)も特任教授を、と頼まれ、一層の情熱をもって学生の教育に当たっていく覚悟でお引き受けしました」

エイベックスという、日本を代表するエンターテインメント企業に関わることで培われた演技指導の経験と実績、学生の高い人気――相原氏にとっても大学にとっても、プラスにしか思えないような関係の中、なぜ相原氏は、大学を去るようなことになってしまったのか。

「去年の8月のことでした。樋口学長から、『来年(20年)4月1日以降の契約は更新しない』と言われたのです。『こうなったのは私が悪い』と言いながらも、『辞めてくれませんか』と何度も懇願されました。私には、自暴自棄になっているようにしかみえませんでした。

その理由として、思い当たることがあります。樋口学長が、非常勤講師の頃から私に好意を持ってくれていることは感じていました。一緒に仕事をしていく中で私も彼女に好意をもつようになり、交際を経て、特任教授になった2018年の夏には婚約に至っています。

最初は、執行部の人たちも二人の婚約を祝福してくれていました。それが、去年の春のことです。いつの頃からか、私のことを疎ましく思い始めたようなのです。これは推測ですが、私が学長と近づくことで、学校を乗っ取ろうと考えている……などと思った人がいたのかもしれません。

事実、今回の一件の理由として執行部が主張しているのも、私と交際するようになって学長の仕事ぶりが悪くなったなど、私の教員としての能力、資質とは無関係なことが目立ちます。昨年10月からは後期の講義も止められ、今年3月31日には働けない状態になっています。

結局、樋口学長との婚約も破談になりました。現在私は、熱海の自宅でひとり待機状態なのです」

梅光学院のホームページにも、相原氏の授業が紹介されていた
梅光学院のホームページにも、相原氏の授業が紹介されていた

6月8日、相原氏は法人としての大学と、学長以下執行部の計6人を被告とする「損害賠償請求裁判」を山口地方裁判所下関支部に提訴している。6月15日には、下関市の勤労福祉会館で記者会見も行った。

「お話ししたような、大学側のやり方に根拠がなく違法行為にあたるものか、私共の考えを弁護士同席の上で主張しました。

驚いたのは、大学側が私たちの会見より前に、私を被告として提訴したことです。『従業員たる地位の不存在確認請求』を求めた内容で、要は私が大学の従業員の地位にないことの確認を求めるというもの。開いた口が塞がりませんでした」

冒頭で触れた通り、現在は相原氏、大学側の双方が双方を訴えるという「泥沼状態」になっているのだ。

梅光学院側が裁判所に提出した資料によると、学院側の主な主張はこうだ。

<・大学側と相原氏とは、19年8月26日付で退職条件等に関する確認書を作成し、雇用契約を更新せず、2020年3月31日で退職とすることに合意している。相原氏側は確認書を無理やり書かされた、パワハラがあった、などと述べているが、いずれも根拠のない主張だ

・大学学長と相原氏は交際関係にあった時期はあるが、それを理由に雇用継続への合理的期待が生じないことは言うまでもない>

改めて、梅光学園側に本件についての見解を尋ねると、

「係争中につきコメントは差し控えさせていただきます」

とのことだった。たしかに相原氏は昨年8月、樋口学長から大学を辞めるよう求められた際、「確認書」という文書に署名している。ただしこれについて本人は、「学長の様子を見て、署名しないとその場が収まりがつかないと思ったから署名した。確認書の詳しい説明もなかった」と主張している。

相原氏の代理人弁護士の西野裕貴氏が言う。

「確認書の署名については、相原さんの言う通り、学院長、執行部から事前に内容について詳しい説明を受けておらず、また、相原氏を大学から排除しようとする一連の動きは、教員としての能力・資質と全く無関係な私的な出来事を理由に行われたものであり、不法行為に該当すると考えます」

この「確認書」が有効であるかどうか等が裁判の焦点になりそうだが、その行方に注目したい。

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