さよなら!パンダのタンタン 10年以上「お一人様」の悲しい事情
7月15日に中国に返還されるタンタン。二度の出産失敗、相方の死……波瀾万丈の半生を明かす
「神戸市の幼稚園、小学校で遠足と言えば、王子動物園に行くことです。タンタンが帰ってしまうと、パンダがいなくなり、子供たちが悲しみます」(来園者)
神戸のアイドルとして愛されてきた神戸市立王子動物園のジャイアントパンダ「タンタン」(メス・24歳)が、7月15日に貸与期限を迎え、中国へ返還される。
ようやくコロナショックが落ち着き、王子動物園は6月1日から段階的に開園。タンタンに別れを告げるため、多くの来場者が各地から訪れている。
「入園が事前申し込みによる抽選式となっているため、昨年に比べると来場者は少ないのですが、それでも、タンタンのおかげで、予約は殺到しています」(王子動物園広報担当・栗山聡史さん)
タンタンは今から20年前の’00年7月、阪神・淡路大震災の復興支援の一環として、オスのコウコウと一緒に来日した。その年の入園者数は198万人。前年と比べて2倍に増えた。その後も、今に至るまで不動の人気ナンバー1である。
だが、来園者から黄色い歓声を受け続ける陰で、タンタンには人知れぬ「涙の軌跡」があった。
当初から2世誕生を期待されたタンタン。だが、’02年にパートナーのコウコウが、繁殖能力が低いと判断されて、早々に帰国してしまう。驚くべきことに、その5年後、コウコウが実はメスで、双子の赤ちゃんを出産したというニュースが中国メディアで報じられた。
一方で、2代目コウコウが来日したが、悲しい現実が待ち受けていた。
「残念なことに、2頭は相性が合わず、自然交配が難しかったので人工授精を行いました。その結果、’07年と’08年の2度、妊娠に成功しました。ですが、1度目は死産、2度目は無事に出産できたものの、わずか4日目に赤ちゃんが亡くなってしまったんです」(栗山さん)
そして、さらなる不幸がタンタンを襲う。’10年、人工授精の麻酔中に2代目コウコウが急死したのだ。その後、神戸市は新しいオスの貸与を希望し、中国との交渉が続けられたが、日中関係悪化の影響もあって合意に至ることはなかった。
コウコウが亡くなって10年近く、タンタンはずっと「お一人様」で過ごしてきた。無心で笹を頬張る姿にも、そこはかとなく寂しさを感じてしまう……。
「今まで二度、貸与期限を更新し、今回も延長を希望していました。しかし、タンタンは24歳と高齢です(飼育下での寿命は20~30年)。高齢パンダの飼育に長けている中国の保護研究センターで過ごしたほうが良いということで、中国に帰ることになりました」(栗山さん)
タンタン、20年間もありがとう。故郷に帰ってもお元気で――。






『FRIDAY』2020年7月10日号より
撮影・取材・文:中西美穂(ライター) 写真提供:神戸市立王子動物園(3枚目写真)