メディアに「黙殺された」候補者たちも…22人のアツイ都知事選
7月5日に迫った東京都知事選。無名候補の中にもキラリと光る政策がある。全候補を徹底紹介
小池百合子 (こいけ ゆりこ)(67) 現都知事

新型コロナウイルスの影響が懸念されるなか、告示前には「盛り上がらないのではないか」と心配された東京都知事選挙(7月5日投開票)。
しかし、フタを開ければ史上最多の22名が立候補。まさに、「都知事だョ! 全員集合」の様相を呈している。
言うまでもなく、選挙は民主主義の根幹だ。選挙に出る人がいなくなれば、有権者は選択の機会すら失う。それゆえ、すべての候補者は「民主主義社会の宝」とも言える存在だ。しかし、新規参入者に対する世間の風当たりは強い。
新聞・テレビなどのマスメディアは、あらかじめ「主要5候補」と「その他の17候補」の間に大きな溝を作る。全候補者の顔写真が出るのは、せいぜい告示日とその翌日。選挙戦が進めば進むほど「その他の候補者」は黙殺され、メディアに露出する機会は奪われていく。
あまり知られていないことだが、「その他の候補」が訴える政策の中には、キラリと光るものもある。先進的すぎて受け入れられなくても、後になって実際に採用された政策もある。優れた政策の種を社会が共有して磨き上げ、取り込んでいくことも選挙の役割の一つではないか。
情報が足りないと、有権者の意識は大きな影響を受ける。名前だけしか報じられない候補者たちは、世間から「売名目的」「ふざけている」「当選する気がない」「金持ちの道楽」などという、いわれなき批判の声を浴びせられる。
しかし、全候補者を取材している者として筆者は断言したい。すべての候補者は命がけで立候補している。他人の理解が得られるかどうかは別として、それぞれが強い思いを持っている。
メディアに報じられないだけで、熱心な選挙運動を展開している者もいる。立候補を届け出た後に、記者たちからの連絡を完全無視して沈黙を守り続ける候補者もいる。社会を構成する人たちが多様であるように、立候補者も千差万別だ。情報が届かないからといって、一様に「やる気がない」と決めつけないでほしい。
都知事選の立候補者は、300万円もの供託金を等しく納めている。なかには多額の借金をして供託金を準備した者もいる。しかも、供託金は「有効投票総数の1割以上」の得票がなければ全額没収される。それが最初からわかっていても、彼・彼女たちは立候補したのである。
すべての候補者は、経済的、心理的なハードルを飛び越えた勇者たちだ。せめて一度は全候補の主張を聞いてほしい。判断するのは、それからでも遅くない。
次の東京都知事は、この22名のなかからしか生まれない。私たち有権者に欠けているのは、「候補者を見守り、育てる」という視点ではないだろうか。
内藤久遠 (ないとう ひさお)(63) 元陸上自衛官

長澤育弘 (ながさわ やすひろ)(34) 薬剤師

沢(さわ) しおん(44) 作家

平塚正幸 (ひらつか まさゆき)(38) 国民主権党首

石井 均 (いしい ひとし)(55) 元東海銀行員

後藤輝樹 (ごとう てるき)(37) 自営業

牛尾和恵 (うしお かづえ)(33) 元会社員

市川浩司 (いちかわ ひろし)(58) イベント企画業

齊藤健一郎 (さいとう けんいちろう)(39) マネジメント業

立花孝志 (たちばな たかし)(52) N国党首

関口安弘 (せきぐち やすひろ)(68)建物管理業

小野泰輔 (おの たいすけ)(46) 元熊本県副知事

七海(ななみ) ひろこ(35) 幸福実現党役員

服部 修 (はっとり おさむ)(46) ミュージシャン

西本 誠 (にしもと まこと)(33) 歌手

込山 洋 (こみやま ひろし)(46) 元介護施設職員

押越清悦 (おしこし せいいち)(61) NPO代表

竹本秀之 (たけもと ひでゆき)(64) 元朝日新聞社員

桜井 誠 (さくらい まこと)(48) 日本第一党首

宇都宮健児 (うつのみや けんじ)(73) 元日弁連会長

山本太郎 (やまもと たろう)(45) れいわ新選組代表

『FRIDAY』2020年7月10日号より
撮影:鬼怒川毅、畠山理仁