Jリーグ再開 元監督・風間八宏が語る「コロナ禍で変わること」

~無観客、5人交代、観客数の制限……それでも数字以上に大事なもの~

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6月28日、京都・サンガスタジアムで無観客で行われたJ2京都サンガFC-ジュビロ磐田戦(アフロ)

新型コロナウイルスの感染拡大によって中断していたサッカーJリーグは6月27、28日J2が再開、J3は開幕となった。最上位リーグのJ1は1週間遅れの7月4日に再開される。

リモートマッチ(無観客試合)としてリスタートするコロナ禍でのJリーグは、選手や監督、観る側にどのような変化をもたらすのだろうか? 川崎フロンターレや名古屋グランパスで指揮を執り、現在は指導者や育成年代の指導にあたる風間八宏氏に、見どころを聞いた。

サポーター不在が選手に及ぼす影響は大

今週土曜日から再開されるJ1は、リモートマッチとしては2試合を予定していますが、誰もいないスタンドが選手に与える影響は大きいと思います。ピッチでプレーする選手の立場からすると、スタジアムはサポーターありき。ホームの大きな声援は選手の気持ちを後押ししてくれますし、絶対に負けられないという強い責任感も生まれます。アウェーのチームに与えるプレッシャーも計り知れません。それほどサポーターの力は絶大なのです。

コロナ禍で9試合戦い、リーグ戦を終えたドイツのブンデスリーガでは、ホームチームの勝率が下がっています。平均観客数4万人超、世界一お客さんが観にくるブンデスリーガでは、実際に無観客の影響が大きく出ているのでしょう。プロのサッカー選手とはいえ人間がやっていることですから、感情で動かされてしまうことが少なくありません。

サポーターのエピソードで忘れられないのが、2004-05シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝のACミラン対リバプールです。私は仕事で現地で観戦しましたが、前半を0-3で終えたリバプールが後半に同点に追いつき、その後PK戦を制して優勝。「イスタンブールの奇跡」と称される伝説の(ACミランにとっては最悪の)試合ですが、試合後のリバプールサポーターはさぞや興奮しているのだろうと思ったら、無言の放心状態(笑)。

裏を返せば、応援する側もそれほど命を懸けているんですよね。Jリーグでも、最近はそれに近い状況になってきていると感じています。無観客が選手にどのような影響を与えるのか、再開するJリーグでも注目ポイントのひとつです。

コロナの影響として加速しそうなのは、昨年のラグビーワールドカップでも試験的に導入された、5Gを活用した新しいスポーツ観戦の動きです。自宅にいながらにして、スタジアムにいるかのような臨場感を味わうことができる。それが国内にとどまらず、世界的な人気を誇るバルセロナなど海外サッカーもバーチャルな観戦が可能になるということです。

もちろんサッカーが面白ければファンは集まってくれますが、そうでなければ他のスポーツにファンを奪われることにもなりかねない。コロナ禍で再開するJリーグは、勝った、負けただけでなく、内容もエンターテインメント性が求められるシーズンになると思います。

お客さんを呼べる選手が出てきてほしい

風間八宏氏はバルセロナに所属するメッシのような、世界中の人が見に来たくなるような選手の台頭を期待している(アフロ)

7月10日からはスタジアムにお客さんを入れられますが、新型コロナの感染拡大の観点から、上限は5000人と定められました。注意したいのは、「5000人」という数字に踊らされないことですね。

人数が限られたことでスタジアム観戦がこれまで以上に価値のあるものになって、サポーターだけでなく、これまでサッカーを観たことがない人が「スタジアムに行ってみたい」という思いに駆られることもあるでしょう。初めてJリーグに行く人がどんなチームを観たいかといえば、それは「おもしろいチーム」であり「魅力的な選手」です。

お客さんを呼べるようなチームや選手が、いまのJリーグにどれほどいるのかということを、改めて考えなければいけないと思います。中村俊輔や遠藤保仁、小野伸二らがリーグに現れたころは、彼らのような顔のある選手を目当てにしたお客さんがスタンドを埋めていた。若いうちに海外へ飛び出してしまう現状もありますが、そういった選手たちがJリーグでももっと出てきてほしいと思います。

これは指導者側の課題もあります。私自身の話でいえば、高校二年の時に国体の代表に選ばれても練習試合でさえ使ってもらえないことがありました。そんな時、周りにいた多くの先生方からの助言で試合に出場できるようになり、その国体でワールドユース日本代表に選ばれた。のちにドイツやJリーグでプレーすることができました。私の育った清水では、指導者がチームの垣根を超えて大きな目で選手たちを見守ってくれていたことで、多くの選手の成長が助けられてきたと思います。

今は昔より小さい頃から人材を見つけるシステムは整っていますが、大人が目先の結果を急いで同じチームにいい人材が集中しすぎて、思ったほど選手たちの成長につながっていない傾向があります。「スタジアムに見に行きたくなる選手」を一人でも多く輩出できるか。コロナ禍で変化が不可欠なサッカー界に求められています。

「スタジアムに見に行きたくなるような選手」の育成を目指して子供たちを指導する風間八宏氏

交代枠「5」で試されるチーム力

チームの戦い方という観点からいうと、交代枠の使い方が非常に大事になってきます。国際サッカー評議会(IFAB)が決定した「1試合の交代枠を各チーム5人に拡大する」というルール改定を受けて、Jリーグも2020シーズンはこのルールを採用することを決めました。

5人ということは、ゴールキーパーを除いたフィールドプレイヤーの半分を交代できるということ。交代した選手がチームに勢いをもたらして試合の流れを好転させる可能性がある一方で、先発の11人だと高いレベルでできていたけど交代したらクオリティが下がってしまう、ということも十分考えられます。

12月まで続く厳しいシーズンを戦うなかでは、平日の試合も増えて連戦になるので、選手の疲労も考慮しなければなりません。監督からすれば、過密な日程を乗り切ることを考慮して単純に5人を起用すればいいのではなく、どの場面でどんな選手を投入するのか、その選手はチームにどんなことをもたらすのか……。そこを考え抜いて交代カードを切りますので、一筋縄ではいかないんです。けが人が出ることも避けられないので、選手の数自体が十分に揃わなくなる可能性も考えられます。メンバーを入れ替えながら戦っていく必要がある今シーズンは、どのチームも総力戦になることは間違いないでしょう。

同じレベルの11人を2チーム揃えていれば強いに決まっていますが、残念ながらJリーグにはまだそのようなチームはほとんど見当たりません。カギを握るのは、選手層、監督の采配も含めたチーム力。コロナ禍で様々な制約がある中でスタートしますが、見方を変えれば新しい時代の到来でもあります。無観客、5人交代といった数字的な側面以上に、選手の「顔」が見えるサッカー、新時代のスターが出現することを期待しています。

 

◆風間八宏(かざま・やひろ)
1961年10月16日、静岡県生まれ。名門・清水商業高校、筑波大学を経てドイツ・ブンデスリーガでプレー。その後帰国し、Jリーグではサンフレッチェ広島を主将としてチームを牽引した。引退後は指導者の道へ進み、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を務め、攻撃的なサッカーでファンを魅了した。

  • 企画・構成奥山典幸

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