コロナ第2波が来襲したら「中小企業壊滅」その根拠と防衛術

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写真:長田洋平/アフロ

新型コロナウイルスの感染拡大による都道府県の移動自粛要請は6月19日、全面解除され、プロ野球が開幕。一度は市民生活に安堵感が広がりつつあったが、7月5日には東京の感染者が新たに111人と4日連続で100人を超える感染者を記録。コロナ第2波来襲へ向けた緊張状態は増す一方だが、会社経営者や社員は何をどう対応したらいいのか。

元銀行員で現役の社会保険労務士の橋岡雅典氏に「新型コロナサバイバル術」を聞いた。

このまま第2波が来襲したら、日本の中小企業は壊滅する

「『売上げや収益がジェットコースターのように垂直下降する』。新型コロナの影響を受けた中小企業経営者は、そのような感覚だったのではないでしょうか。最悪のシナリオは第2波が来襲し、資金力の乏しい中小企業や大企業の倒産が相次ぐというドミノ現象です」

そう明かした橋岡氏はリーマンショック当時、人材派遣会社の専務取締役として約10億円の売上が、ゼロへ向けて突き進んだ恐怖体験を味わった。新型コロナの感染拡大で、当時の状況を思い出したという。

橋岡氏は現在、社会保険労務士として、飲食業、製造業、サービス業等、様々な業種の企業を相手に、雇用調整助成金(雇調金)の相談や申請手続きを行っている。新型コロナ感染拡大の影響を受け、4月~5月の売上が30%~70%減少している企業は、同氏が受けた40社超の相談件数のうち半数を超えるという。

企業の売上減少は即、資金繰りや収益に影響が出る。

例えば、月商1,000万円(年商1億2千万円)、営業利益100万円(月商の10%)の企業が、新型コロナの影響で、4月~7月の4カ月間の売上が平均50%減少(半減)したとすると、この4か月間の売上減少額は計▲2,000万円、それに伴う営業利益は計▲1,600万円の赤字という計算になる。経費(オフィスの家賃、福利厚生費、人件費などの支出額)が変わらないことを前提とした場合、中小企業にとっては大きなダメージを被ることになる。

経産省や国税庁などのデータによると、日本の全企業の99.7%が中小企業で、概ね3分の2が赤字法人という。例えば10000社の企業のうち、9970社が中小企業で、そのうち6,640社が赤字経営ということになるから、新型コロナが、財務基盤のぜい弱な中小企業群に与えたダメージはそのまま、日本経済が被った打撃と言っても差し支えないと言える。

月上旬の新宿の様子。経済を維持しようとすれば、人の往来は避けられず、新型コロナウイルスの感染者が増える。コロナ第2波はすぐそこまで来ている(つのだよしお/アフロ)

第2波に備えて中小企業に求められる「ONE TEAM」

いつきてもおかしくないと指摘されている第2波へ向けて、中小企業はどのような準備をすべきか。橋岡氏は、徹底した労務管理の整備と人事評価導入による人財育成強化を施し、既存ビジネスの見直しと新規事業に打って出る「攻めの経営」が必須だと指摘する。

「中小企業は、就業規則、労働条件通知書や賃金台帳などに不備があるところが多く見受けられます。これらの定められた書類が整っていないと、雇用調整助成金(雇調金)をはじめとする助成金や給付金などの申請がしづらくなります。雇調金などの支援が即座に受給できないと、経営リスクが高まります。助成金や給付金が素早く受け取れる会社は、社員にとって安心して働ける職場ということになりますから、優秀な人財をつなぎ止めておくことにもつながるのです。「人材」は企業にとって財産なので、私は『人財』と表現しています」

2018年の通常国会で成立した「働き方改革関連法」は、有給休暇や時間外労働の上限規制、不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)など、人財の活用や会社の仕組みの見直しを迫っている。人財育成に有効な人事評価導入も重要視されているものの一つであり、この人事評価が組織力強化に与える影響を橋岡氏はこう力説する。

「新規事業の開発など、スピーディーに攻めの姿勢へと転じる必要がある場合、社長と社員の信頼関係はマストです。例えば、業務の改善提案を1年で4件以上提出した社員はS評価、3件でA評価といった具合に、具体的な行動評価を基準にすると、何を目指してどこに進むのかという”道しるべ”が明確な形で見えてくる。これによって、社員のモチベーションが上がり、『この難局を乗り切ろう』というマインドに変化していくのです。

これまで日本の中小企業は、社長が『こうするぞ!』と言って旗を振り、社員が黙ってついていく、いわゆる『トップダウン』型でしたが、コロナの影響下で生き抜くには、皆で知恵を絞り、『ワンチーム(ONE TEAM)』で戦い抜く体制が必要です。社員の意識ややる気、そしてスキルを『ボトムアップ』して初めて、第2波との戦闘態勢が整うのです」

今も大手、中小企業の関係者から問い合わせが絶えない橋岡雅典氏(撮影は新型コロナウイルス前の昨年9月の講演会時のもの)

コロナの影響で新しい施策を講じたある企業の成功事例

コロナ禍でも、労務管理と人事評価の導入で社員のモチベーションを上げ、経営を好転させた企業はあるのか。橋岡氏は、数多いクライアントの中から、広島市の成功事例を明かした。

「広島市の建設業『有限会社D・Uコダ』は、社員約10人の典型的な中小企業ですが、新型コロナの影響で対面営業ができなくなりました。これを受けた社員が、即座にYouTubeを活用したPR展開を社長に進言。約2か月前から動画配信をスタートさせ、すでに約130人のフォロワーを獲得しています。

実際にショールームを訪ねているかのように感じさせる動画配信は営業支援ツールとして機能し、同社は来期、売上げ増を見込んでいます。実は、新型コロナ感染拡大の影響が出る前の、昨年4月から人事評価制度を導入していた同社は、今、この難局を迎えたタイミングで、『人財』育成の成果を存分に発揮しました。

また、別の物流関係企業(社員数約30人)は、商品の仕分けや、物流倉庫からの荷物のピッキング(出し入れ)で業務の効率化を図ってきたノウハウを活かし、生産性向上のためのコンサル業を、倉庫会社などに対して開始しました。新型コロナの影響で商品の物流が減少し、売上げも大幅ダウンしたことを受け、素早く新ビジネスをスタートさせたのです」

橋岡氏は、組織を変える提案だけでなく、集客が激減したクライアントに対して、新規事業も提案している。

「中国地方の『道の駅』に対するコンサルティングで、特産品や土産物の通販対応として、施設や周辺の観光スポットの動画特典を付ける提案をしています。『道の駅』は今、観光バスツアーの来客が消え、売上も激減しています。

そこで、道の駅や周辺の観光スポットなどを撮影したDVDを『おまけ』として付ける提案をしました。自宅にいながら、届いた特産品などを味わい、映像を見て現地にいるような気分に浸れたら楽しいかなと…。この私の提案が実現するかどうかわかりませんが、とにかく発想を大幅にチェンジさせて、あらゆる試みに取り組むことが重要だと思います」

第2波へむけて、個人がすべきこと

企業だけでなく、私たち個人が生き残る方策はあるのか。橋岡氏が続ける。

「企業だけでなく、個人にとっても厳しい時代は近いうち必ず来ます。勤めている会社が倒産しても、次のステップに進める準備をしておいてください。例えば、自身の業務の成功事例を振り返り、『ノウハウ』として伝えられるものがあるか。築き上げてきた経験や実績の中に、キャッシュポイントになるものはなかったか。これらを発掘すること。探し当てることを意識して業務と向き合ってください。

私が相談を受けていた50代の男性で、転職に成功した方がいます。コロナ禍で厳しいこの時代に、転職活動を成功させることができたのは、業務で培ったノウハウをアピールできたからです。企業もその男性のスキルを、自社に必要な「人財」として認めて採用しました。日々の自分磨きを継続していればそのうち、大きな自信に変わり、その自信が非常に有効な武器として機能しだすのです」

直近の報道によると、米国の疾病対策センター(CDC)関係者は、新型コロナ感染者数が全米で2000万人を超える可能性があると明かしたという。今までも繰り返し言われてきたが、まさに心身両面において『自分の身の安全は自分で守る』ことが求められる時代に入った。そのためにあらゆる価値観を根本から変えられるか。勇気をもって、すぐに行動を起こせるか。この2点を実行できる人だけが、100年に1度の転換期で『ピンチをチャンス』に変えることができると言っても過言ではない。

  • 取材・文佐藤修

    1963年生まれ 産経新聞社では営業局や事業局を経て、取材記者に。千葉県警、千葉県政、千葉市政担当記者、サンケイスポーツ社会面担当記者として活躍。2012年10月からフリー。取材活動の傍ら、千葉市中央区で古民家カフェ「アオソラカフェ」を営む

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