プロのスカウトが注目する今秋ドラフトの目玉 超高校級「金の卵」
明石商の中森俊介、来田涼斗、横浜の松本隆之介らスカウトが熱視線を送る選手たち!
明石商業 来田涼斗(写真右) 中森俊介(写真左)
史上最年長で200勝を達成した元中日のレジェンド左腕・山本昌氏が語る。
「僕が一番注目しているのは、明石商業高校(兵庫県)の中森俊介です。右投の美しいフォームから繰り出される150キロの速球に加え、変化球も多彩。ドラフト1位は間違いないでしょう。甲子園でその勇姿は見られませんが、きっとプロの世界で活躍してくれるはずです」
5月20日、日本高野連が夏の甲子園の中止を決定した。高校野球ファンにとっては残念だが、球児たちはすでに、〝次の舞台〟に向かって進んでいる。
今秋のドラフトの目玉は、どんな選手なのか。甲子園で見られない代わりに、本誌が「金の卵」たちをご紹介しよう。
ドラ1最有力として真っ先に名前が挙がるのが、明石商業の中森だ。昨年の甲子園では2年生ながらエースピッチャーをつとめ、チームをベスト4へと導いた。20年以上にわたりドラフト候補生の球を自ら受け続けてきた「流しのブルペンキャッチャー」ことスポーツライターの安倍昌彦氏が評する。
「速球や変化球もさることながら、中森の売りはクレバーさ。緩急で相手バッターのタイミングを外すセンスがずば抜けている。ホームランになるようなスイングでも、タイミングをズラすことで外野フライに抑えることができます」
明石商業の狭間善徳(はざまよしのり)監督が中森の将来性について語った。
「多くのスカウトの方から連絡があり、『早くみたい』『ドラフト指名候補でしょう』と言われますが、まだまだだと思います。股関節や肩まわりがかたく、体幹もさほど強くない。ただ、中森は意識が高く、必要なトレーニングを継続してできるタイプ。正しく鍛錬を続ければ、今後、楽しみな選手だと思います」
本誌の取材にも、
「奥川(恭伸・現ヤクルト)投手のような勝ち続けられるピッチャーを目指しています。最終的には、プロで投げることができればと思っています」
と、生真面目に答えてくれた中森。7球団以上が指名に意欲を見せているが、なかでも巨人はスカウト3人態勢で視察にくるなど、熱視線を送っている。
頭脳派ピッチャーの中森に対し、パワーピッチャーとして注目を集める選手もいる。今夏の甲子園で優勝候補と目されていた中京大中京高校(愛知県)の不動のエース・高橋宏斗(ひろと)だ。
「右投で145キロのストレート、140キロの変化球をコンスタントに投げられる安定感と、試合開始から100%のパワーで投げても最後まで投げ続けられる持久力がある。次の田中将大や松坂大輔になりえる逸材です。大学進学希望との報道もありますが、地元の中日が一本釣りを狙っています」(安倍氏)
横浜高校(神奈川県)の松本隆之介や木更津総合高校(千葉県)の篠木(しのぎ)健太郎も、注目の選手だ。
「松本の強みは、何と言っても190㎝近くある長身の左腕から繰り出される投球。手足が長いとボールコントロールが難しくなるんですが、彼の場合は指先が器用で5~6種を投げられる。素材は抜群ですね。篠木はスライダーが一級品。高校生ではなかなか打てないレベルで、ドラフト上位指名はかたいでしょう」(安倍氏)
バッターにも、「金の卵」たちはひしめいている。まずは、同世代トップの右スラッガーと評される花咲徳栄(はなさきとくはる)高校(埼玉県)の井上朋也だ。
「1年生で出場した甲子園では、徳島の強豪校・鳴門(なると)高校相手に決勝打を決め、〝スーパー1年生〟ともてはやされた。勝負強さが持ち味で、ここ一番というときの集中力は、今まで見てきた高校球児のなかでトップです」(同前)
花咲徳栄の岩井隆監督は、井上についてこう語る。
「4月くらいに話したとき、プロ志望届を出すと言っていました。井上は普段はおっとりしていて優しい。主将として周りに気を配って、自分は目立とうとはしない。それが、大事な試合でバッターボックスに立った瞬間に豹変するんです」
井上本人も驚異的な集中力に自覚があるようで、「バッターボックスに立つと〝ゾーン〟に入る」と本誌に話してくれた。
前出の中森がいる明石商業には、第二の柳田悠岐と目される来田涼斗(きたりょうと)もいる。
「中学のヤングリーグで全国制覇を果たし、約30校からスカウトされていた。しかし、それらを蹴り兄が通っていた地元の明石商業に進学しました。1年生でスタメン入りし、去年のセンバツで先頭打者本塁打とサヨナラホームランを放つ快挙を成し遂げました」(スポーツ紙記者)
中日や楽天で本塁打王を獲得した、野球解説者の山﨑武司氏も激賞する。
「左打の来田のバッティングはとにかく思い切りがいい。柳田に似て、本能だけで打てるセンスがあります。足を豪快に上げて振るから、ピッチャーにタイミングをズラされるんだけど、それでも打っちゃう。しかも、50m走5秒台の俊足と聞いています。名選手の素質があります」
来田自身、柳田選手を目標としているという。また、好きな球団を聞くと、
「ソフトバンクか、監督が優しそうな日ハムが好き(笑)」
と話してくれた。実際、ソフトバンクから熱烈なラブコールを受けており、上位指名は確実だ。
東海大相模高校(神奈川県)の右バッター・西川僚祐(りょうすけ)も忘れてはならない。2年秋の時点で、高校通算本塁打53本をマーク。その長打力はスカウトも目を見張る。
「あれほどまで雄大な放物線を描いて飛ばせる選手はなかなかいない。得難い素材ですね。得意のレフト方向への長打だけでなく、バックスクリーンに届くようなホームランもプロの試合では見たいです」(安倍氏)
星陵高校(石川県)の内山壮真も172㎝と小柄ながらパンチ力に定評があり、日ハムの中田翔を彷彿させると評判だ。
近い将来、「甲子園中止世代」の彼らがプロを席捲する日が来るかもしれない。
横浜高校 松本隆之介
木更津総合 篠木健太郎
東海大相模 西川僚祐
星稜 内山壮真
花咲徳栄 井上朋也
『FRIDAY』2020年7月17日号より
- 写真 :加藤 慶 小松寛之 朝日新聞社