小池都政2期目で気になる「東京・地下鉄延伸」の行方 | FRIDAYデジタル

小池都政2期目で気になる「東京・地下鉄延伸」の行方

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当選翌日の6日に記者会見にのぞんだ小池百合子都知事(時事通信)
当選翌日の6日に記者会見にのぞんだ小池百合子都知事(時事通信)

7月5日に行われた東京都知事選挙では、現職の小池百合子氏が約366万票を得て再選し、小池都政は2期目を迎えることとなった。新型コロナウイルスの感染拡大、2021年に延期された東京オリンピックの開催など、喫緊の政治課題は山積みだが、東京都の今後の鉄道整備計画の行方についても考えてみたい。

新型コロナウイルスの陰に隠れ、争点が明確化されないまま進んだ今回の都知事選では小池氏はどのような公約を掲げていたのだろうか。小池氏のオフィシャルサイトによれば、「都民の命を守り『稼ぐ』東京の実現」「『人』が輝く東京」「『都民ファースト』の視点で行財政改革・構造改革」の3つのテーマを掲げ、項目を列挙しているが、そのうち鉄道整備について触れている項目は「6路線やベイエリアの交通網・環状道路などの交通ネットワークの強化」だけだ。

ここで掲げられている「6路線」とは、「羽田空港アクセス線(田町駅付近~羽田空港)」「新空港線(蒲田~京急蒲田)」「有楽町線延伸(豊洲~住吉)」「大江戸線延伸(光が丘~大泉学園町)」「多摩都市モノレール延伸(上北台~箱根ケ崎、多摩センター~町田)」の5路線6区間のこと。
東京都は2030年代に向けてこれら路線の整備を優先的に進めていく方針を固めており、事業化に向けた「鉄道新線建設等準備基金」を2018年に創設している。小池氏は改めてこの「6路線」の整備を推進する姿勢を明確にしたと言える。

このうち、既に実現に向けて動き始めているのが、都心と羽田空港を結ぶ新線「羽田空港アクセス線」だ。JR東日本は2029年の開業に向けて、昨年5月に環境影響評価手続きに着手しており、数年以内に着工する計画だ。開業すれば上野駅や東京駅から羽田空港まで乗り換えなしで直結されることになる。

現状では東京都と江東区の要望は折り合わない

一方、東京都が主体となって検討を進めているのが、有楽町線の豊洲駅から東西線の東陽町駅を経由して半蔵門線の住吉駅まで結ぶことで、墨田区・江東区の南北交通を改善しようという「有楽町線延伸」計画だ。この地下鉄計画が浮上したのは約半世紀前の1972年のこと。特に都電の廃止以降、区内を南北に結ぶ鉄道が無くなった江東区は整備を強く求めてきたが、長らく構想のまま留め置かれていた。

ようやく近年、豊洲の再開発が進み、臨海部の拠点としての重要性が増していることから、構想が具体化。2011年7月に江東区は豊洲市場を受入れる条件として「土壌汚染対策」「地下鉄8号線(有楽町線)の延伸を含む交通対策」「市場と一体化した観光拠点の整備」の3点で東京都と合意した経緯がある。

東京都は2019年3月、江東区議会の特別委員会において「都内6路線のうち8号線(有楽町線)延伸に一番力を入れて取り組んでおり、関係者との協議、調整を最大限加速し、進めていく」と述べ、実現に向けた決意を示している。しかし同時に「都としては東京メトロによる整備、運行が合理的」と述べ、延伸した場合の構造や設備などの調査を、東京メトロに依頼すること表明した。

東京メトロは2008年に開業した副都心線を最後に、自己資金での新線建設は行わない意向を示している。このまま東京都が東京メトロによる整備にこだわるとなれば、有楽町線の延伸計画の実現は不透明になってくる。豊洲市場受け入れの「対価」として地下鉄整備を求めていた江東区との関係がどうなるか注目したい。

これに対して「6路線」には含まれていないながら、昨年、急浮上したのが銀座から中央区の臨海部地下鉄計画である。中央区が2014年から2015年にかけて実施した「都心部と臨海部を結ぶ地下鉄新線の整備に向けた検討調査」に端を発するこの構想は、東京オリンピック後の再開発などにより今後さらに発展が見込まれる臨海部の交通網を抜本的に改善する方策として位置づけられたものの、まだ構想の域を出ないものとして受け止められていた。

ところが昨年4月、読売新聞が都関係者の話として「オリンピック後、臨海部に地下鉄新線を建設へ」と報じたことから、検討が具体化しつつあることが明らかになった。

検討されているのは、銀座のみゆき通りから出発し、築地市場跡地、勝どき、晴海を経由し、豊洲に入って環状2号線に合流、りんかい線国際展示場駅まで向かうルートだ。総事業費は約2500億円と見込まれている。ただ、銀座~国際展示場間だけでは採算性が確保できないので、つくばエクスプレスの東京延伸構想と一体的に整備し、つくばエクスプレス~東京~銀座~国際展示場を結ぶ路線とする案が有力だ。

ただ、新型コロナウイルスの感染拡大により、鉄道需要は大きく落ち込んでいる。テレワーク・時差出勤の普及は、20年近く続いてきた都心回帰にも影響を及ぼす可能性が高く、今後の鉄道計画は見通しづらい状況に陥っている。いずれにせよ、地下鉄の建設には10年近い年月を要する。小池都知事の在任中に、これら路線が開業することはないにせよ、今期中に、何かしらの方向性を示せるだろうか。

有楽町線・豊洲駅から東西線・東陽町駅を経由して半蔵門線の住吉駅まで結ぶことで、墨田区・江東区の南北交通を改善しようという「有楽町線延伸」計画
有楽町線・豊洲駅から東西線・東陽町駅を経由して半蔵門線の住吉駅まで結ぶことで、墨田区・江東区の南北交通を改善しようという「有楽町線延伸」計画

 

左がすでに動き始めている「羽田空港アクセス線(田町駅付近~羽田空港)」、右が「新空港線(蒲田~京急蒲田)」
左がすでに動き始めている「羽田空港アクセス線(田町駅付近~羽田空港)」、右が「新空港線(蒲田~京急蒲田)」
左が「大江戸線延伸(光が丘~大泉学園町)」、右が「多摩都市モノレール延伸(上北台~箱根ケ崎、多摩センター~町田)」 (路線図はすべて平成28年7月、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会で公表された「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」から抜粋)
左が「大江戸線延伸(光が丘~大泉学園町)」、右が「多摩都市モノレール延伸(上北台~箱根ケ崎、多摩センター~町田)」 (路線図はすべて平成28年7月、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会で公表された「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」から抜粋)
  • 取材・文枝久保達也

    (鉄道ジャーナリスト)埼玉県出身。1982年生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)に11年勤務した後、2017年に独立。東京圏の都市交通を中心に各種媒体で執筆をしている。

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