木村拓哉ライヴDVDで歌うべきでなかった「アノ曲」とは?

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6月24日にリリースされた木村拓哉の、ソロとして初のライヴ映像「Go with the Flow」は、初週だけでDVDとBlu-rayを合わせて6.5万枚のセールスを記録した。後輩である山下智久の最新ライヴ映像(2019年5月発売)は3.9万枚だったことを考えても、ソロアーティストとしては、上々の滑り出しと言えるだろう。

ソロアーティストとしては上々の滑り出しを見せた木村拓哉

「Go with〜」は、2月8日、9日、11日に代々木第一体育館で、19日と20日には大阪城ホールで開催され、単純計算すると5日間で約7万人強を動員したことになる。収録されたのは、2月20日の大阪城ホールの回。

木村拓哉という存在のOne and Only感

登場して最初の印象は、「さすが、仕上げてきたな」。

映像なので、多少加工はあるにせよ、関西弁でいうところの“シュッとした”感じが尋常ではない。細くて若くてしなやかで、衣装やヘアメイクはロックミュージシャンっぽいアプローチだが、アイドル的なキラキラ感も健在だ。

冒頭のインストゥルメンタル曲「Flow」は小山田圭吾の作編曲。SMAP黎明期に“シブヤ系”として、当時の感度のいい若者たちの心を鷲掴みにしたアーティストの生み出す最新の音が、四半世紀以上前の“尖り”や“渇き”を、不思議な心地よさで“今”へと呼び覚ます。「“Flow”(=流れ)に身を任せてきただけで、俺はあの頃から何も変わってはいないんだよ」そんな、木村拓哉の心の声が聞こえるようだ。

決意表明のような曲「NEW START」の後は、忌野清志郎から楽曲提供された「弱い僕だから」(SMAPの1997年リリースのアルバム「ス」収録)だったが、23年前、「ス」のアルバムツアーで、24歳の木村の「弱い〜」に痺れた身としては、やはりオリジナルバージョンに軍配があがる。荒削りでどこか雑なところが、木村とロックのいい距離感だった気がしていたのに、今回は彼本来の真面目さが出すぎてしまっていたように思うのだ。

ただ、2008年にリリースされたアルバム「super. modern. artistic. performance」(通称“スパモダ”)で久保田利伸が作曲を担当した木村のソロ「Style」は、47歳の今しか出せない成熟した色香が溢れ、見応えがあった。本人は、ソロではロック思考が強いようだが、やはり根っこはアイドル。ダンスが入る曲とそうでない曲では、魅力の爆発の仕方が段違いなのだ。

続いて、“12年ぶりに懐かしい曲を披露したんだからこんなのもアリじゃない?”とバンドメンバーたちが悪ノリしたテイで、「SHAKE」のイントロが流れてきた。木村が「え、それやっちゃうの?」と戸惑いをみせるというちょっとした茶番の後、ソロでSMAPのライヴの鉄板曲「SHAKE」を歌った。

そのときは、「SMAPの曲を一人で歌っちゃうんだ」という若干の驚きというか落胆はあったが、元々メッセージ性は感じられない曲だし、他のジャニーズのグループやJr.がライヴで歌うのを何度となく目にしているので、なんとなく木村拓哉が一人で頑張ってSMAPの曲をカバーしているような印象で聴くことができた。

後半戦の見所は、「あすなろ白書」の主題歌である「TRUE LOVE」(藤井フミヤ)に、「若者のすべて」の主題歌「Tomorrow never knows」(Mr.Children)、「ロング・バケーション」の主題歌「LA・LA・LA LOVE SONG」(久保田利伸with NAOMI CAMPBELL)のカバー。

スクリーンには作品の映像も流れ(「若者〜」だけは動画ではなくスチール)、歌手兼俳優として、四半世紀以上活躍している木村拓哉という存在のOne and Only感に圧倒されつつも、個人的には、Alexandrosの川上洋平が楽曲提供した「Your Song」と「Leftovers」の2曲に、歌手・木村拓哉の新たなる可能性を感じながら本編が終了した。

歌ってほしくなかったアノ曲

本編だけ観た時点では、木村拓哉の誰にも敵わない“スター性”と、これまでに達成してきた数々の“偉業”とが浮き彫りになり、「やっぱり、彼の中で音楽は自己表現に欠かせないものなんだ」と再認識できた。木村が心から楽しんでいることがわかったし、バンドメンバーやダンサーとの信頼関係が築けていることもさすがの人間力だと思った。

ただ、アンコールの1曲めで、「夜空ノムコウ」を歌われてしまった時には、「よりによって何でこの曲を、なぜアンコールで」と、悲しい気持ちになった。

筆者にジャニーズの魅力に気づかせてくれたのはSMAPが最初なので、SMAPというグループには、特別な思い入れがある。一曲一曲に、それが生まれた経緯や、ヒットするに至った理由など、自分なりの考察と思い入れがある。今回は、ライヴの鉄板という意味で、「SHAKE」までは許せた。アリだと思った。でも、「夜空ノムコウ」は、ダメだ。「あれから僕“たち”は」との歌い出しは、木村と中居正広の2人でなければ、それは「夜空〜」ではない。

サビから始まる「夜空ノムコウ」は、木村と中居という同級生コンビ(ツートップ)が歌い出しを担当することが、とても感慨深かったし、この2人だからこそ、「あれから」の“あれ”を高校時代のことだと妄想できた。

SMAPと共に大人になってゆく自分と重ね合わせながら、「日々は続いていくのか」「悲しみは消えてしまうのか」と、無常なこの世界に思いを馳せた。この曲の最大のテーマはたぶん“切なさ”で、SMAPの中で(歌声も含めて)最も“切なさ”を体現しているメンバーは中居だったと思う。だから、中居のいない歌い出しは、それだけでもう筆者の愛した「夜空〜」ではなかったのである。

個人的見解でしかないが、SMAPのオールドファンの多くは、いつか、5人ないしは6人でSMAPの曲を歌ってもらえる日が来ることを願っているはずだ。木村が歌うSMAPの曲から、「俺がSMAPの曲を守っていく」という決意が感じられたのなら、筆者もこんな(残念な)気持ちにはならなかっただろう。

また、筆者は手に入れていないがBlu-rayの初回限定版の特典には、「らいおんハート」と「$10」のスペシャルトラックが収録されているという。

「らいおんハート」は、確かに、この曲がリリースされた年に木村が結婚を発表した、彼にとってとてもメモリアルな曲だ。それはわかるけれども、これは草彅主演のドラマ「フードファイト」の主題歌で、ドラマがなかったら生まれていなかったのである。SMAPの曲に関して、「求めてくれる人がいる限り、俺一人でも歌い継いでいくから」と、木村は言いたいのかもしれないが、SMAP時代の曲をまるで“自分の曲”のようにサラリと歌われてしまうのは、古参ファンとしてはどうしても受け入れられない。耳が、その曲を拒否してしまうのである。

昔の曲に頼らなくても(ソロ曲は頼るのもアリ)、木村のソロライヴは、歌って踊ってもうすぐ30年になろうとするアーティストの迫力と貫禄と成熟に満ちていたし、若い作家と組んだ楽曲には、ミュージシャンとしての新たな可能性も感じさせてくれた。

映像の中で、彼はオーディエンスとの再会を約束していたが、来年なのか再来年なのか、次のライヴでは、純粋にソロアーティストとしてステージに立ってほしい。盛り上がる曲が欲しければ、作ればいい。それぞれが、それぞれの場所で“NEW START”した形で活躍する中、一人だけ過去の栄光を持ち出すのは、やっぱりずるい。ソロアーティストとして特別な風格のある彼だからこそ尚更、そう思ってしまうのだ。

  • 取材・文喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。

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