小池都政とコロナで急速悪化の「東京財政」いつまで持つか | FRIDAYデジタル

小池都政とコロナで急速悪化の「東京財政」いつまで持つか

「ひでえところに嫁に来ちゃったなぁ」

1999年、石原慎太郎氏が都知事となった際、東京都の財政は未曽有の危機に瀕していた。前任の青島幸男知事の無策とバブル崩壊で、一般会計の赤字は3500億円に達し、財政再建団体への転落は目の前だった。財政再建団体とは、企業でいえば、会社更生法の適用に当たるもので、財政再建団体になれば、国の管轄下に置かれ「ボールペンを一本買うのも国が目を光らせる」といわれる。

石原氏は都知事へと就任した喜びも束の間、東京都の財政の実態を知り、冒頭のようにぼやいたといわれている。

都政一期目、石原知事は自らの給与1割カット、都職員の給与4%カット、新卒採用の見送りなどを断行し、財政再建を図った。自治体の内部留保にあたる財政調整基金は、好景気にも助けられ、猪瀬直樹氏、舛添要一氏、そして初の女性都知事となった小池百合子氏へと引き継がるなかで、2020年3月末時点で過去最大の9345億円まで増えていった。

いまや東京は日本のGDPの2割を稼ぐ「超巨大都市」で、一般会計7兆円の予算規模はスウェーデンの国家予算に匹敵する。人口1400万人。今期の都税収入は8年連続の増収で、過去最大の約5兆6000億円。自主財源の収入が多く、国から地方交付税交付金をもらわずに成立する「裕福な自治体」にまで成長したのだ。

ところが――その財政が小池都政下で急激に悪化しているのだ。

「都の貯金箱はスッカラカンで、いま大規模な自然災害に襲われたらお手上げ」

都庁幹部が、石原都政時代から貯めてきた財政調整基金の激減について、こう嘆息する。

「新型コロナウイルス対策にはこの財政調整基金を切り崩していた。1兆円近くあった財政調整基金が残り807億円と9割も消えてしまった。ちなみに大阪府1562億円、神奈川県610億円であることを考えれば、それまでの東京都の財政がいかに裕福であったかわかるでしょう。

それが、小池都政以降激減した。コロナ対策費もさることながら、都知事が打ち出した無電柱化や子育て支援策の推進、また都議会の体制を盤石にするために都議会公明党の政策であった私立高校の実質無料化などに使ったことも原因です」

すでに1兆円強を新型コロナウイルス対策に充てているものの、7月に入ってから感染者数が一日200人を超えるなど、第二波、第三波も警戒せねばならない状況だ。経済停滞により、企業から得る法人税などの目減りが起こることも確実視されている。

さらに小池都政の目玉である東京2020オリンピック・パラリンピックも延期をしたことで、追加費用の負担問題もある。独統計調査会社「スタティスタ」は大会延期に伴う追加費用を約6400億円と試算。組織委員会やIOCとの話し合いとなるだろうが、少なくない額を開催都市が負担することは間違いない

税収減、五輪の追加費用、コロナ対策……と三重苦の中、小池知事には厳しい舵取りが待ち受けている。

「財政調整基金の他にも『もうひとつの財布』と呼ばれる特定目的基金が約7000億円あるが、その切り崩しで済むのか。山本太郎氏が都知事選で『15兆円の都債発行』を語っていた。数値は机上の理論値だが、的外れでもない。リーマンショックの時も5000億円規模の都債を発行しており、山本氏が大仰に語ってくれたおかげで、5000億規模の都債発行への抵抗が薄れていることが、唯一の救いかもしれない」(若手都議会議員)

しかし、都債はいわば「前借り」である。いずれ返さねばならないのだ。財政が急激に悪化する中、都営地下鉄、都バス、都立病院、動物園・水族館・植物園、美術館・博物館、劇場など都民へのサービスが今の価格のまま維持できるのか。東京都には土地や株などの金融資産もあり、ただちに住民サービスへと影響することはなさそうだが……。

前述の都幹部は、こうした財政問題が来夏の都議選にも影響を及ぼすのではないか、と予測する。

「北区の都議補選で大敗を喫した都民ファーストの会が、都議選に向け『都議会議員の給与カット』をマニフェストに掲げてくるだろう。知事の数少ない美点はお金にこだわりがないことで、自身の給与は半減(約1300万円)にしたまま。コロナ禍で民間が苦しい中、都議会自民党も共産党も大きな声で反対を叫べない。さらに景気次第では、『役人は不景気でもリストラされず、危機感がない』と都職員をスケープゴートに都民の支持を得ようするのでは」

財政問題を抱える小池都知事。次の知事が、「ひでぇところに嫁に来ちゃったなぁ」とぼやかずにすむよう、この困難を乗り越えられることを願うばかりだ。

  • 取材・文岩崎大輔

岩崎 大輔

ライター

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