ラグビー代表・鉄人ラファエレが明かす「志村けんさんとの思い出」

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『天才! 志村どうぶつ園』の収録の時に撮影した2ショット。今年1月11日にオンエアされた(ラファエレ・ティモシーのインスタグラムより)

昨秋のラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表で全5試合ともフル出場を果たしたラファエレ ティモシー。社会現象を巻き起こした大会後に、彼は生前の志村けんさんと共演していた。9月末で16年の歴史に幕を閉じることが決まった『天才! 志村どうぶつ園』だった。

サモア生まれの鉄人は、新型コロナウイルスの感染拡大により3月に死去した伝説のコント職人の笑いを、言葉がわからないうちから楽しんできた。志村さんや、夢の共演が実現した番組に思いをはせた。

お気に入りのコント

ラファエレはオンライン取材の途中、スマートフォンで動画投稿サイトのYou Tubeを開いた。お気に入りだという志村さんのコントを探す。

日本有数のコメディアンの存在を知ったのは、2010年春から4年続いた山梨学院大学時代のこと。コカ・コーラ入り後の2016年に日本代表となってからも、そのお気に入りの1本を何度も見返してきたという。

満員電車のなかで、乗客が順に携帯電話を鳴らす話だった。最初の数名は通常通りに当時のガラパゴス型を開いたが、途中から履いていた靴、テニスラケットを耳に当てて「もしもし」と応じる。確かにこれなら、異国の言葉に不慣れな留学生も楽しめそうだ。

志村さんが演じたキャラクターについてより詳しく聞かれると、英語のインタビューなのに「Maybe 変なおじさん」と日本語を交えて返答。ほくろや青い髭のメイクを施した男性が歌って踊る奇妙さもまた、国境を越えて伝わるのだろう。ラファエレは表情を崩した。

「きちんと意味をわかっていたわけではないんだけど、楽しんで観ていたな。彼のやることは何でも面白かった」

2017年に日本国籍を取ったラファエレが憧れのコメディスターと対面したのは、ラグビー人気が爆発していたW杯直後。ジャックスという黒柴を飼っていたことから、志村さんの動物番組から出演依頼を受けたのだ。

周りに共演を伝えると、この国で出会った多くの友人から「俺と代わってくれ」などと羨ましがられた。緊張感が高まり、より興奮した。

さらに収録当日になると、本物の志村さんの慎ましさという名のオーラに触れる。楽屋へ挨拶に行くや握手を求められ、丁寧に、謝辞を伝えられたのである。

「きょうはご出演いただき、ありがとうございます。是非、収録を楽しんでください」

いざカメラが回れば「圧倒されっぱなしであまりよく話せなかった」。それでも出演者全員での記念撮影が叶い、笑顔を浮かべた。志村さんと自分が並んでいる部分をトリミングすればSNSなどでアップしてもよいと言われた。

その写真は結局、本人の死去を悼む際に用いた。新型コロナウイルスに感染した志村さんは3月29日、帰らぬ人となった。ラファエレが志村さんと対面してから、約3~4か月後のことだった。

「お目にかかった時はお元気だったので、とても大きなショックを受けました。志村さんは世界中から愛されていたんだと思います。ネット上では様々な追悼コメントが寄せられ、いかに皆を笑わせてきたかがわかりました」

W杯後に行われた2月23日のトップリーグの神戸製鋼―東芝戦でラファエレは東芝に所属する日本代表主将、リーチマイケルとも対戦。57-0の完勝だった(アフロ)

志村さんとラファエレの共通点には、自分の仕事と謙虚に向き合ってきたこと、日本中の子どもから動きを真似されていることが挙げられよう。

幼少期からニュージーランドの叔父のもとで楕円球を追いかけてきたラファエレは、近隣のセントビーズカレッジで過ごした10代の頃から練習後の走り込みを自らに課す。走路の向こう側に、プロ選手としての契約書があると信じた。

チャンスを広げるべく来日。山梨学院大学の寮に入る。普段は志村さんや総合格闘技の動画を楽しむ傍ら、グラウンドでは当時の伊藤武コーチの指示で「3、2、1(グラウンドを3周×4本、2周×5本、1周×10本)」という変則的なランニングメニューを遂行する。

コカ・コーラでも練習熱心で知られ、同僚で同じセンターのポジションを務めるニュージーランド人、ティム・ベイトマン(現東芝)との個人トレーニングを通し基本スキルや早めにスペースを見つける習慣を身に付けた。

さらに日本代表ではチームリーダーの1人として、トニー・ブラウンアタックコーチの唱えるち密な攻め方を学ぶ。その実践のために用いた得意のゴロキック、オフロードパス(タックルされながら球を繋ぐプレー)は、大舞台のトライを演出するばかりか、W杯直後に公園でラグビーごっこをする少年たちの見本にもなったのである。

現代の子どもたちの憧れだった志村さんと出会ったのは、ちょうど初の自著の制作が始まるタイミングでもあった。2020年5月に発売された『つなげる力 最高のチームに大切な13のこと』は発売即重版と売り上げは好調。最近はこんな出来事があったという。

「先日、レストランで朝食を摂り終えたところで本を持ったファンの方にサインを求められました。とても驚きました! これからも道でサインを頼まれたら喜んで。人気があることはとても嬉しいことです。ただ、付け上がらず、いつも通りの自分であろうとしています」

ウイルスはこの国のラグビー界をもむしばむ。ラファエレが神戸製鋼の一員として臨んだ2020年1月からの国内トップリーグは、2月下旬から延期や中止を繰り返した末に史上初のシーズン不成立で終わった。

W杯日本大会時の体制を保つ日本代表も、6月下旬以降のウェールズ代表戦、イングランド代表戦の実施がお預けとされた。

しかし、引き続き代表候補に名を連ねるラファエレは「体力を維持し、体型を保てるようトレーニングに励んできました」。神戸市内の自宅近くのトラックへ出かけ、学生時代を懐かしむ気持ちで汗を流す。不測の事態に直面しても、やるべきことはやる。

「6~7月の試合の中止は賢明な判断だと感じます。新型コロナウイルスのことが片付くまでは、ラグビーどころではないと思うので。ジャパンの皆とは毎週、zoom(オンライン会議アプリ)でミーティングをしています。試合が再開される時に向け、自分たちが何をしているか、何をしなければいけないかを話し合います。(日本代表の)スコッド全員が参加しているので、皆の顔を見るにはスクリーンをスワイプし続けないといけないんだ!

ウイルス収束後は、たくさんの人にラグビーを観に来てもらいたい。いまの私の目標は、世界で一番のセンター(の選手)になることです。W杯で世界中の名センターとマッチアップして、自分も十分にいいセンターだと感じられた。だから、よりよくなりたい。そのためには、この先どれだけ努力しなくてはいけないかもわかっています。

具体的には身体づくり(が必要)。W杯前は(自分の理想とするレベルより)少し細かったり、(筋力トレーニングで)重いウェイトを持ち上げられなかったりしたからです。神戸製鋼のコーチたちがそんな自分の弱点を指摘してくれたので、克服したいです」

大舞台での派手なパフォーマンスで人々の喜びを引き出すために、日ごろは堅実に生きる。そんなラファエレの態度に在りし日の志村さんを投影することは、決して不自然ではない。

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ハーパーコリンズ・ジャパン 一般書籍編集部

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昨年9月、大会前は優勝候補にあがっていたアイルランド代表に勝利した後。左からラファエレ、CTBのコンビを組んだ中村亮土、稲垣啓太(撮影:森田直樹/アフロスポーツ)
  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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