紀州のドン・ファンの遺産相続費用に田辺市が約2億円投入の謎
「普段はのどかな田舎町ですからね。ドン・ファン事件は、市民の間でも非常に関心を集めています。それだけに、今回の予算計上にはみんな怒っていますよ。金額が大きすぎるし、何より、使い道の説明がないのがおかしい」(市民オンブズマンわかやま事務局長の畑中正好氏)
紀州のドン・ファンこと資産家・野崎幸助氏(享年77)の怪死事件を巡る新たな謎が浮上し、氏の地元である和歌山県田辺市の市民が怒りの声をあげている。
貸金業や酒類販売業で富を築いたドン・ファンの遺産は、約13億円にのぼる。〈財産を田辺市に全額寄付する〉という旨の内容が書かれた野崎氏のものとされる遺言書も見つかっており、田辺市は昨年9月に遺産の受け入れを表明した。 田辺市に莫大な遺産が入ることになれば、市民にとってもありがたいはず。なぜ、怒っているのか。
「問題は、遺産受け入れにかかる費用として市が計上した予算です。昨年9月の時点で約6500万円。そして今年3月、そこにさらに約1億2000万円を追加したのです」(前出・畑中氏)
合計で1億8000万円超。田辺市はホームページでその内訳について、「鑑定評価手数料1254万5000円」などと公表しているが、驚異的な金額となっているのは「弁護士委託料」である。その額なんと、1億94万6000円だ。
遺産の受け入れ業務を委託するだけなのに、そんなにカネがかかるものなのか。自治体からの委託業務に詳しい弁護士が言う。
「委託料は遺産額から算定されるケースが一般的です。野崎氏の遺産が13億円だとして、自治体からの依頼ということも考慮すると、3000万円が妥当。どんなに多くても6000万円が上限だと思います。遺産受け入れに関する弁護士業務としてはまず、遺族とのやり取りがある。野崎氏は貸金業を営んでいたということなので、債務者との交渉などもあるかもしれません。これくらいの案件で1億円を超える委託料は聞いたことがありません。この金額なら、弁護士は誰だってやりたがりますよ(笑)」
前出の畑中氏は田辺市に対し弁護士費用に関する情報開示請求をしたが、呆れるような回答が返ってきたという。
「6月29日に来た回答は、『弁護士の業務に支障をきたすので公開できない』という内容でした。意味不明でしょう。なぜ税金で雇った弁護士の業務内容を明かせないのか。何か隠しているのではないかという疑念も膨らんできています」
本誌既報通り、〈田辺市に全額寄付〉というドン・ファンの遺言書については、今年6月に野崎氏の遺族が無効を求める裁判を起こしている。今後裁判が進む中で遺言書が偽物であることが明らかになれば、田辺市が受け取るつもりだった遺産もすべてパーになるわけだ。
本誌の取材に対し田辺市は、
「係争中の案件ですので弁護士費用の詳細についてはお答えしかねます」
と、回答。多額の税金を投入して一銭も遺産が入らないという事態になれば、市民の怒りはさらに燃え上がりそうだ。
FRIDAY2020年7月24日号より