「野菜350g」は本当にカラダにいいの…?食生活のウソホント

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「バランスいい食事」で人は本当に健康になれるのか? 

1日に野菜は350g、タンパク質は体重1㎏あたり0.8gを摂取することが必要とされている。が、実際にこれだけ食べている人は少ないだろう。TVのCM通り、足りないと青汁やサプリメントで補う必要はあるのか? そもそも、必要量を摂取しないとどうなるのか? 生命の危機に陥るのか?

さまざまな病気の原因で、肌や骨などの老化の元凶とされるAGE(終末糖化産物)の研究に30年以上携わる医師・牧田善二氏に話を聞く。

野菜がカラダにいい、というのは正解?(写真:アフロ)

「1日30品目食べる」ことが推奨されたのは昔の話

野菜を食べなくてはいけないことは知っている。けれど、毎日の食事で350g食べるのは無理。だから、野菜ジュースを飲んでいるという人は多いだろう。1日30品目の食品を摂らなくてはいけないと言われているけれど、野菜ジュース1パックでかなりの種類の野菜が摂れる。ところが、

「“1日30品目食べる”というのは、昔の話で、今は厚生労働省も推奨していません。 

しかも野菜ジュースには、たとえ『砂糖・甘味料不使用』と書いてあっても、飲みやすくするために糖質が多く含まれている。“炭水化物”も糖質です。 青汁にも実は糖質が多く含まれているんです」(牧田善二氏 以下同)

「1日30品目食べる」というのは、厚生労働省(当時・厚生省)が1985年に作成した「健康づくりのための食生活指針」で提唱されたもの。しかし、1日30品目食べると、かなりの確率で食べ過ぎになることがわかり、肥満や生活習慣病を増やすことから、2000年に削除されているのだとか。しかも、

「人間には消化と吸収という大事なシステムがある。液体にすると胃で消化するということがなくなり、小腸での吸収が異常に早くなり血糖値スパイクを作ります。嚙むことによって、脳に刺激が与えられ、腸の動きもよくなります」 

歯は“歯根膜”というクッションのような器官にめり込んでいて、嚙むと歯根膜にある血管が圧縮され、血液を脳に送りこむ。嚙むことで脳に血液がどんどん血液が送られ、その結果、反射神経、判断力、集中力が高まると言われる。さらに嚙む回数が少ないと、アルツハイマー型認知症を引き起こすと言われるβアミロイドも増える。認知症予防にも嚙むことは大切だ。そのうえ、リンパ球を増やし、免疫力を高める効果もあると言う。

「正直にいうと、なんでそんなにジュースにしたがるのかが私にはわかりません。まとめて簡単に素早く食べたいからでしょうか? 普通に野菜を生で食べたり、調理してそれぞれの野菜の美味しさを楽しむという考え方はできないのでしょうか。野菜はどれもおいしいのに、ごちゃ混ぜにしたら本来の味が損なわれてしまうと思うのですが、いかがですか」 

お手軽だからといって、ジュースやスムージーに頼らないほうがよさそうだ。

ジュースを飲んでも、野菜を食べたと言えない!?

厚生労働省の指針に沿った「バランスがいい」食事では糖質過剰に! 

厚生労働省は、炭水化物を50~65%、脂質を20~30%、タンパク質を13~20%の割合で摂ると栄養バランスがいいとしているが、

「この割合で摂ると、たいていのビジネスパーソンは糖質過剰になります。

頭脳労働には甘いものが必要だと思いこんでいる人が多いようですが、仕事中に糖質を補給しなければならない職業はほとんどありません。強いて言うなら、山岳救助隊のような仕事をしている人でしょうか」 

プロテインなどでタンパク質を摂り過ぎると腎臓病になる危険性あり 

糖質を減らした分のエネルギーはどこで補えばいいのか? タンパク質か? 最近はさまざまなプロテインが販売され、コンビニでも手軽に買える。これなら手軽にタンパク質を補給できる。

「ふつうに食事をしていれば、タンパク質が不足することはありません。むしろタンパク質を摂り過ぎると、それを体外に排出するために腎臓に負担がかかり、腎臓病を起こします。

アスリートでない成人の場合、運動したからといって、タンパク質を増やす必要はありません。タンパク質の摂り過ぎはよくないというのは、腎臓病専門医の常識です」

体重60㎏なら、運動していてもタンパク質は1日60gで充分。肉類は総量の4分の1がタンパク質だから、250gぐらいの肉で充分補えるというわけだ。もちろん、豆類や乳製品にもタンパク質が含まれているから、肉を1日250g食べなくてはいけないということではない。

植物繊維やビタミンだけじゃない野菜のパワー。野菜類や植物由来の食品には、がんやウイルスにも打ち勝つ成分が含まれている

「野菜、きのこ、海藻、豆類、果物など植物由来の食品には、“ファイトケミカル”という大事な栄養成分が含まれているのです」

動くことができない植物は、さまざまな脅威にさらされる。強い紫外線を浴び、かびや病原菌、寄生虫やウイルスなどからも攻撃を受ける。これらから身を守るためにもつようになったのが、“ファイトケミカル”という成分だ。

植物の色や香り、辛み、苦みなどのもととなる機能性成分の総称で、大豆に含まれるサポニンやイソフラボン、トマトなどに含まれるリコピン、にんじんなどに含まれるβ-カロテンなどはすべてファイトケミカルだという。これらは強い抗酸化力をもち、ウイルスやガンに打ち勝つ成分とされている。

とくに最近、がん予防などの効果があるとして研究が進められ、注目されているのが“イソチオシアネート”という成分で、国立がん研究センターなどの研究では、男性にはがん、女性には脳血管疾患や心疾患の予防に効果があるという報告がある。

イソチオシアネートは、辛み成分の一つで、アブラナ科のからし菜、カイワレ、ブロッコリー、芽キャベツ、クレソンなどに含まれているシニグリンという成分が分解されて作られるもの。たとえば大根は、おろすとピリッとした辛みがあるが、これはおろすことによってシニグリンが分解されてイソチオシアネートが作られたことによる。何を食べるか迷ったら、アブラナ科の野菜を食べるといいと牧田氏は言う。

「それぞれ、免疫力を高めるために非常に有効な成分なのですが、人間はこれらの成分を作ることができない。だから、植物から摂るしかないのです。 

しかも、豆類にはタンパク質も脂質も豊富。豆腐のような植物由来の食品を食べていれば、糖質もタンパク質も不足しないし、ミネラルもビタミンも摂取することができます。私は、植物由来の食品だけで生きていくのが理想だと思います」

1日350gどころか、もっと食べてほしいと言う。

「私が医者になった40年前は糖尿病患者は180万人しかいなかった。それが今は1000万人以上。腎臓病の人も2100万人もいると言われている。がん患者が増えたのも、植物由来の食品を食べなくなったせいかもしれない。 

禅宗のお坊さんを見てごらんなさい。肉も魚も食べないけれど、健康で、肥満とは無縁で、長生きじゃないですか。肉をやめろ、魚をやめろ、ごはんをやめろとは言いませんが、現在の多くの人の食べ方は間違っているんじゃないかというのが私の考えです」

野菜の食べ方で、牧田氏がすすめるのは、生で食べること。加熱することで、ビタミンCやイソチオシアネートが損なわれてしまうからだ。加熱するなら、ゆでるよりも蒸すほうがいいという。 

「同じ素材でも、強い熱を加えるほど、老化促進物質である“AGE”が増えることがわかっています。健康で長生きするためには、野菜は1日最低350g、できるだけ手を加えないで食べることをおすすめします」 

牧田善二 AGE牧田クリニック院長。医学博士。糖尿病合併症やアルツハイマー病、骨粗鬆症など老化に関係するさまざまな病気の原因であるAGEの研究に30年以上携わる。ニューヨークのロックフェラー大学医生化講座にて世界で初めてAGEの免疫学的測定法を開発し、研究成果を多数発表。北海道大学医学部講師、久留米大学内分泌代謝講座主任教授を経て、2003年より『AGE牧田クリニック』を東京銀座で開業。延べ20万人以上の患者を診ている。『医者が教える食事術 実践バイブル2』(ダイヤモンド社)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)など著書多数。

  • 取材・文中川いづみ写真アフロ

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