コロナ対応「デジタル先進国」デンマークと日本の驚異的な差

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新型コロナウイルスの給付金で露呈! ボロボロだった日本の行政デジタル化 

今年4月、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、全国民に1人10万円が給付されることになった。オンラインでも申請できるということだったが、実際にオンラインで申請すると、住民票と紐づけられていないことから、自治体職員が手作業で確認。あまりに時間がかかると、オンライン申請を受け付けない自治体も現れた。 

一方、保健所では、感染者数の報告をFAXでやりとりしているなど、想像以上にデジタル化が遅れていることが露呈した日本。デジタル政府で最先端を行くデンマークでの“当たり前”をコーディネーターのウィンザー庸子さんに聞いた。 

関東地区では、7月に入っても給付金の給付率は50%以下だという

デンマークでは、生後2~3時間後に「個人番号」が付与される

3年連続EU内でもっともデジタル化が進んでいる国に選ばれたデンマーク。ウィンザー庸子さんは、2003年から家族(デンマーク人の夫と子ども3人)でコペンハーゲン郊外で暮らしている。

「デンマークでは、日本のマイナンバーカードにあたるCPRナンバーが生まれてすぐ付与されます。10ケタの数字で、デンマークでは、これがないと何もできません」(ウィンザー庸子さん 以下同)

銀行口座の開設をはじめ、免許取得やクレジットカードを作るのにもCPRナンバーは必要。病院で診察を受けるのも、図書館を利用するときも、交通系ICカードの購入にも、DVDなどを借りるときも、携帯電話を契約するときも、とにかく個人を特定するサービスをうけるときには必ずCPRナンバーカードの提示を求められると言う。外国人であっても、3ヵ月以上滞在するときは、CPRナンバーを取得しなくてはならない。それほどデンマークで暮らすためにはなくてはならない番号なのだ。

全国民は、必ず政府に一つの銀行口座を届け出る必要があり、納税や各手当の支給は、この口座が利用される。銀行口座に紐づいているので、当然収入も貯金高も国は把握している。脱税などできない仕組みだ。

デンマークでは、名前は生後6ヵ月以内に決めればいいことになっている。対して、CPRナンバーが付与されるのは、生後2~3時間後だとか!

「助産婦さんが市民が1人誕生したという通知を政府に報告すると、すぐシステムに組み込まれるんです。その時点で、デンマーク人としての権利も保証され、たとえば児童手当など申請しなくても3ヵ月後に母親の口座に振り込まれます」

新型コロナウイルスが蔓延したとき、デンマークもロックダウンしたが、売り上げが30%減った企業や個人事業主に対して給付金が支払われた。デンマークでも、なかなか支払われず、企業や個人事業主が苦労しているという批判を受け、処理を早める政府決定がなされた。その結果、企業の固定費の補てんと個人事業主の収入補てんは2週間以内に行うことが決まった。

そして、日本。関東34市区では5月末の時点で全体の2.7%しか支給されず、7月に入っても関東では47%にしか給付金が届いていないという。

女性の首相としてデンマーク史上2人目のメッテ・フレデリクセン氏。2019年6月に最年少の41歳で首相に就任した。学校が休みになり自宅待機になった3月、「子どものための記者会見」を開いたことで話題に

郵便物は、ほぼゼロ。お知らせはすべてメールで 

CPRナンバーは経済活動に必要なだけではない。CPRナンバーが振り分けられると、同時にE-BOXというメールボックスが作られ、さまざまな通知がそこに届く。役所や警察といった公的機関だけではなく、民間の銀行や保険会社からのお知らせもそこに届く。通知が来たことはメールで知らされ、E-BOXを開くときは、自分のCPRナンバーとパスワード、さらに自治体から配られた乱数表に記されている数字を打ち込む。セキュリティも万全だ。

このシステムができてからは、郵便物はほとんどなくなったと言う。

高齢者や障がいのある人は特例と認められれば、郵便で受け取ることができるが、デンマークのインターネットユーザーは全国民の95・72%! 子どもから高齢者までがオンラインを利用しているのだ。

「住所変更も、幼稚園や学校の入園・入学手続きもすべてオンライン。住所変更などをしたときは、公的機関だけでなく、銀行やクレジットカード会社の情報も変更されます。以前はそれらを受け付ける役所の支所のようなものが図書館などの一部に設けられていましたが、今はそのための窓口は少なくなりました」

「天下り」も“汚職”! 政治を信頼するデンマーク人の意識がデジタル化を成功させた

そもそもデンマークがデジタル化に取り組み始めたのは、2000年に入ってから。2001年にはCPRナンバーとパスワードを用いた電子署名、2003年には市民と医療機関で医療データのやりとりができるポータルサイト、2010年以降には国のあらゆる分野で電子政府システムの構築を始めている。

2018年には「デジタル化のフロントランナーになる」との国家戦略を発表した。デジタルテクノロジーでどれだけ国家を成長させられるのか、国民の生活を向上させられるか、デジタル化の狙いとプロセスを明確にし、国民にしっかり浸透させたことが、デジタル化を成功させている大きな要因だと考えられている。

対して、日本はどうか。

マイナンバー制度が始まったのは2016年1月。4年たった今でも普及率は16%だと言われる。

普及率を上げる大きなチャンスは、給付金申請のときだった。このときマイナンバーを使ってスムーズに申請手続きが行われれば、一気に活用が広がったことだろう。ところが、住民台帳と自動照合できず、紙に印刷し、確認するという考えられないことが起きた。

普及率を上げるために総務省が始めたのが、マイナンバーカードを取得し、キャッシュレス決済サービスに紐づけチャージや買い物をすると、1人当たり上限5000円分のマイナポイントがもらえるというお金で国民の注目を集める作戦だ。

それでいいのか?

大切なのは、デンマークが行ったように、これによって生活がどう変わるか、どんなメリットがあるかということをしっかりと説明し、それに沿ったシステムを構築していくことではないだろうか。いくら「便利になる」と言われても、給付金のときのようなことがあると素直に信じることができないし、本腰を入れて取り組んでいるように思えない。国に何もかも知られるのがイヤという気持ちもある。

「デンマークでは、王室の収支も新聞に載るくらい経済活動に関して透明性が高いです。議員の収支報告もだれもがチェックすることができる。

私も日本人ですから、プライベートな家計まで知られることに抵抗がありますが、デンマーク人は、悪いことをしていなければ隠す必要はないと考えている。『なんだかイヤ』という説明できないことは、語るに値しないと思っているようです」 

コロナ禍中、首都コペンハーゲン近郊のデザイン博物館のオープニングイベントに参加したデンマークのメアリー皇太子妃。デンマークでは、王室の年間の衣装代も国民に開示されている

汚職に対してはたいへん厳しく、2010年に、ある議員が企業からもらったロレックスの時計をしていたことから、たいへんなスキャンダルになり、議員は時計を返還したという。 

「天下りも、自分の地位や経歴を利用した汚職以外の何物でもない、とデンマーク人は考えています」 

国民は政治を信頼し、政治家がそれを裏切るようなこともない。デンマーク人はみんなそう思っていると言う。そうならなければデジタル化はむずかしいのだろうか。だとしたら、日本は……?

ウィンザー庸子/Yoko Winther デンマーク公認ガイド・通訳・コーディネーター。17年前からデンマーク在住。現在、デンマーク人の夫と3人の子どもと暮らしている。

ウィンザー庸子さんの「北欧デンマーク観光・プライベートガイド」の案内はコチラ

  • 取材・文中川いづみ

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