銀座クラブ・美人ママが専門家に聞く「徹底コロナ対策」

「売上は半減しています。どうすれば、お客様が戻ってくるでしょうか」

「店が十分な対策をしているとわかれば、客足は徐々に増えると思います。対策の認定証を作り店の前に貼れば、お客さんも安心しますよ」

東京・銀座にある高級クラブ「Nanae」。美人ママ・唐沢菜々江さんの疑問に答えるのは、順天堂大学の谷川武教授（公衆衛生学）だ。感染拡大する新型コロナウイルスは、銀座の高級店にも影を落としている。客足が遠のき売上が激減。閉店に追い込まれるクラブもあるのだ。

菜々江ママが語る。

「ウチも４月上旬から６月中旬まで、２ヵ月以上店を閉めていました。その間、収入はゼロ。ワインバーやカラオケなども経営しており、家賃だけで負担は600万円近くになります。店を再開しても、なかなかお客様は戻ってきませんね。コロナ拡大前は一日に40組ほどいらしていましたが、今は15組ぐらい。最盛期で月に１億円あった売上は、4000万円にまで落ち込んでいます。幼い子どもや高齢の親と同居するスタッフのなかには、７月に入り再び感染者数が増え不安を口にする女性もいますよ」

「Nanae」はコロナ対策を怠っているワケではない。入口には体温測定器や消毒液を設置。客には海外への渡航歴などアンケートに記入してもらい、マスクの着用を必ずお願いしている。

「店のスタッフにも、フェイスガードの着用や30分ごとのこまめな手洗いなどを義務づけています。銀座では店のオーナー同士が頻繁に話し合い、対策を考えているんです」（菜々江ママ）

だが「それでも万全と言えない」と、前出の谷川教授は語る。

「コロナの感染経路は主に三つです。一つは飛沫感染。次に接触感染。三つ目が空気感染です。店のスタッフもフェイスガードやマスクをし、テーブルにはアクリル板が置いてあるので飛沫感染対策はOKでしょう。手や指の消毒がきちんとされていて、接触感染の心配もありません。

問題は空気感染です。例えば体内から煙が出る喫煙に関しては、特に注意が必要です。重要なのは、店内の空気を外部に流すような換気システムを導入することでしょう。ただ店が独自に換気システムを設置しようとすれば、大きな負担になります。対策を徹底している店に対しては、国や自治体が助成金を検討べきだと思います」

四つの独自認定レベル

谷川教授は、独自のコロナ対策レベルを考案。客が安心できるよう、協力してもらえる店には認定証を贈ることを考えている。

「認定レベルを四つに分けるんです。入店時にアルコール消毒をするなど、基本的な対策がなされている店は『シルバー認定』。喫煙ルールが守られ入店者数をコントロールしていれば『ゴールド認定』。“３密”を避ける環境が整備されていれば『プラチナ認定』。換気システムが導入され、ほぼ完ぺきな対策がされていれば最高の『ダイアモンド認定』と。

店の前にそれぞれの認定証が貼ってあれば、お客さんも安心してお酒や女性との会話を楽しめるでしょう。私たちの提案を受け入れてくれる店を探し、どれだけ効果があるか実証したいと思います」

谷川教授は、コロナの影響で一概に営業を自粛することに疑問を感じている。生活が困窮しウツになったり、自殺に追い込まれる人が続出する可能性があるからだ。

「拡大を抑えながら、経済も回していかなければなりません。そのためには、経済活動を再開しても感染対策を並行して行うことが大切です。

“疫学の父”と呼ばれたジョン・スノウは、コレラ菌が発見される約30年前に偉大な実績を残しました。当時ロンドンでコレラが大流行した際、患者がどこで感染したのか徹底的に調査。その結果、大半の患者がブロードアベニューという通りの周辺で感染していると特定したんです。その通りでは下水道が上水道に流入し、極めて不衛生でした。スノウの助言により、その地域の井戸を閉鎖すると、感染者は一気に減少。コロナに関しても、感染源がわからなくても、対策をしっかりとることが重要です」

谷川教授は銀座を回り、換気システムの導入など対策の強化を店にアドバイスしている。