多部未華子『私の家政婦ナギサさん』で発揮した「驚異の存在感」

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今期屈指の話題作

多部美華子(31)主演の連続ドラマ『私の家政婦ナギサさん』(TBS、火曜夫後10時)が好評だ。

7月7日に放送された初回の視聴率は14・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。同14日放送の2話は12・8%。初回放送後にはツイッターのトレンドで国内3位となり、2話放送後は同2位に付けた。今期の連ドラの中で屈指の話題作なのは間違いない。

多部が演じる主人公・相原メイは、天保山製薬横浜支店のやり手MR(医薬情報担当者=営業職)。28歳の若さで支店のチームリーダーに就いた。周囲はメイを「完璧な女性」と見ている。

ところが、自宅は汚部屋。家事全般がまるっきりダメなのだ。恋人もいない。「仕事が出来る女性になりなさい」という母親・美登里(草刈民代、55)の教えを忠実に守ってきたせいである。

見かねた妹の唯(趣里、29)が、メイのためにスーパー家政夫の鴫野ナギサ(大森南朋、48)を雇う。当初はナギサに強い拒絶反応を起こしていたメイだが、やがてナギサの図抜けた家事能力と包容力に魅入られていく――。

仕事や恋愛など悩み多きアラサー女性にスポットを当てたストーリーが身近に感じられていい。強面の役も多い大森南朋の家政夫役も新鮮で面白い。ちょうど1年前に放送された『凪のお暇』(TBS)と同じチームによる演出もポップでテンポがいい。

とはいえ、このドラマを上昇気流に乗せている最大の功労者は多部に違いない。もともと抜群に巧い人だが、その演技力やキャラクターが今回は存分に生かされている。

例えば初回でのこと。メイは新任支店長(冨田靖子、51)からチームリーダーへの大抜擢を打診されると、目をビー玉のように丸くした。その目には驚きや躊躇、喜びが入り交じっているのが見て取れた。結局、メイは「やらせていただきます」と答えたのだが、目だけでここまで心象風景を表せる女優はそういないだろう。

同じ初回でメイはライバル会社のMR・田所優太(瀬戸康史、32)に営業競争で敗れ、憔悴する。ナギサから励まされても聞く耳を持たず、「あなたに何が分かると言うんですか」と睨みつけた。メイはただナギサの言葉に腹を立てたわけではない。自分の能力不足にも苛立っていた。その心情も多部は目で表現し切った。

多部は声と口跡(言葉使い、物の言い方)も抜群にいい。身のこなしも俊敏。若くて愛くるしいので、そう思わせないが、並大抵の女優ではない。

なにしろ早くから演技力が高く評価されていた。映画では「ブルーリボン賞新人賞」(2005年)、ドラマなどでは「エランドール賞 新人賞」(2010年)、演劇では「読売演劇大賞 杉村春子賞」(2011年)をそれぞれ受けた。その後も受賞を重ねている。ドラマも映画も演劇も評価される俳優・女優はそうはいない。

演技ではつくれない持ち前の清潔感も多部の強みに違いない。代表作である『デカワンコ』(日本テレビ、2011年)や『これは経費で落ちません!』(NHK、2019年)など清潔感が功を奏した作品は数多い。

例えば『これは経費で――』の主人公で熱血経理ウーマンの森若沙名は清潔感がないとこなせなかったはず。一点の曇りもない堅物である一方、上司であろうがルール違反は許さないのだから。

『私の家政夫――』もまた清潔感が奏功している。ナギサがやって来る前、メイは汚部屋で暮らしていたものの、見る側はメイに嫌悪感を抱かなかった。なぜかといえば、多部自身に清潔感があるからにほかならない。そうではない人がメイを演じ、汚部屋で生活してたら、見る側は親しみを抱きにくいはずだ。

半面、妖女も演じられてしまうのが多部の巧さ。主演映画『ピース オブ ケイク』(2015年)で演じた梅宮志乃はバイト仲間と浮気して彼氏に振られたり、アパートの隣人(綾野剛、38)を一方的に好きになったりする自由人だったものの、真に迫った演技を見せた。綾野との激しいベッドシーンあったが、妖艶の一語だった。

では、多部の素顔はというと、真面目な人だろう。名門・東京女子大の出身。推薦入学だった。高校時代も芸能活動はしていたものの、学業は怠らず、成績優秀で、さらに品行方正だったからだ。大学では仕事の都合で2回留年したものの、それでも中退せずに卒業したのも多部らしさかもしれない。

生まれ育ったのは東京都西東京市。2019年5月には地元のホールで多部が自ら企画した30歳記念特別公演「MIKAKO30~多部の素~」を行った。自分を応援してくれた市民への感謝の気持ちを表したのだ。演歌歌手の凱旋公演ならよくあるが、こんなことをする女優は聞いた試しがない。真面目である上、茶目っ気もあるのだろう。

この公演決定時に多部が出したコメントにはこうある。

「多部未華子は2019年1月25日に30歳を迎えました。15歳からお仕事をはじめ、山あり谷ありでしたが、なんとかここまで運よくやってこれました」

努力もしたはずなのに、「運よく」と言い切ってしまうところも多部の人柄ではないか。

この公演では『これは経費でーー』で共演した吹越満(55)と2人芝居を演じ、市民を喜ばせた。

多部らしさが表れていた仕事はほかにもある。地元公演を行う1年前の2018年5月、関西の人気番組『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)に自ら望んで出演し、秘書見習いを務めたのだ。

多部は「このお仕事を始めて、初めてマネージャーさんに自ら志願して、今日ここに座らせてもらっています。もう夢のよう」と興奮気味だった。やっぱり真面目で茶目っ気のある女性なのだろう。当時の西田敏行局長(72)と探偵陣は大喜びした。

多部によると、両親がともに関西出身であるため、子供のころから『ナイトスクープ』を見て育ったという。在京キー局では放送されていないが、MXテレビなどによって都内でも見ることが出来るのだ。

地元向けの30歳記念特別公演と『ナイトスクープ』への出演志願・・・。多部が31歳になろうが、昨秋にカメラマンの熊田貴樹さんと結婚しようが、ファンらの間で「多部ちゃん」と呼ばれ続けているのもうなずける。

  • 取材・文高堀冬彦

    高堀冬彦 ライター、エディター。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部記者、同専門委員、毎日新聞出版社サンデー毎日記者、同編集次長などを経て独立。スポニチ時代は放送記者クラブに所属

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