「絶景かな」伝説のバンド「頭脳警察」PANTAが見ている未来

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「『絶景かな』ですよ。まさに、今の気持ち。今、生きてここから見ているこの景色が『絶景かな』だと」

結成50年を記念したドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』が公開中の伝説のバンド「頭脳警察」。PANTAは、こう言う。

「コロナで、日本だけじゃなく世界中が不自由になっている。音楽も思うようにできない。これ、チャンスですよ。だって世界中が同じスタートラインに立って、まだ、一歩も踏み出せない。せいぜい半歩踏み出したばかりだから」

頭脳警察でPANTAは、『世界革命戦争宣言』『コミック雑誌なんかいらない』『万物流転』を謳ってきた。そして今『絶景かな』と絶唱する

1969年、PANTAは同い年のTOSHIと、バンド「頭脳警察」を結成した。

オリジナルであること、自由であること

「ダサくても、下手でも、オリジナルなものがやりたい。そのころの日本の音楽ってね、青春?なんか、薄っぺらい歌詞だったの。17歳から曲を作り始めて、100曲くらい、全部英語の歌詞だった。でも、欧米に対抗するにはこれじゃダメだ、自分の言葉で歌おうと思った。そうしたらいろんな言葉が生まれてきて、よし、これで一矢報いたいと、頭脳警察として活動を始めた。そんなとき『世界革命戦争宣言』を知って、これを歌にしようと。ウイスパーでささやくように歌おうと思ってたんだけど、日比谷野音のステージに上がったら、頭に血がのぼっちゃって叫んでた。一瞬のスパーク。ラップみたいに。そうね、日本で最初のラップかも」

時代のアジテーターとして学生たちから圧倒的な支持が

これが、伝説の第一歩となった。SNSのない時代、頭脳警察の存在は口コミで全国の学生たちに広まった。

「北海道から九州から、日本中の大学で歌ったよ、でも、あの歌は、1日に3回も歌うもんじゃない」

1970年ごろの頭脳警察、PANTAとTOSHI。学園祭では、観客からの投石やステージからの挑発があり暴動状態になることも。常に熱狂になかにいた

安保反対、ベトナム戦争反対ーー国会議事堂前や学生街だったお茶の水界隈で、学生と機動隊が衝突。石を投げ、放水を受け、東大安田講堂では学生たちが立て篭もるなど反戦反体制の嵐が吹き荒れていた。

「自分は正しい。周りはみんな敵くらいに思ってた。危険な正義感だよね。でも、自分が正しいと思ってるから『ふざけるんじゃねえよ』って。『くそったれ馬鹿野郎』なんて歌詞はそのころの日本の音楽にはなくて、でも、アメリカでは『FUCK』って歌ってるんだよね、ロックは。今思うとさ、若気の至りなんだけど、世の中も自分自身も苛立って、闘ってた。ニュースにもできないような事件もいっぱいあった」

頭脳警察のステージは、演奏中に投石があり、舞台からの挑発があり、客席は乱闘で血だらけと常にスキャンダラスだった。1972年にリリースした1stアルバムは発売禁止。2枚目も放送禁止から回収、発売禁止になった。が、その過激な歌詞を自由なメロディが若者たちから圧倒的な支持を受け、学生運動のアイコンになる。

「嫌になっちゃったんだよね。左翼のアイドル。イメージが固定しちゃうことに疲れちゃった。で、解散しました」

PANTAは、ソロ活動をしつつアイドルのプロデュースを手がけるなど「遊んじゃった」という。

いつだって、時代のほうが合わせてくる

「ソロで『RED』ってアルバム作って、ライブしようとしたら、一緒にやるのにしっくりくるのが頭脳警察の曲だった。じゃあ、っていうんで、1年限定で再結成をしたら、昭和が終わったんだよね」

1990年、頭脳警察の再結成のライブをFRIDAY本誌は取材している。そのときのインタビューでPANTAは「時代が、おれに合わせてくるんだ」と語っていた。

FRIDAY1990年7月20日号に掲載された「頭脳警察再結成」の記事。復活ライブのステージは過激でスリリング。PANTAとTOSHIが喧嘩になったことで、アンコールはなかった

「このときのツアータイトルは「万物流転」、人間てさ、馬鹿なことばかり繰り返すんだよね。世の中なにも変わらないなって」

それから10年を経て、頭脳警察は、今度は3ヶ月限定の再再結成をする。

「きっかけは、なんだったかな。とにかくまた、TOSHIと『最終指令自爆せよ』っていうタイトルでツアーした。ツアーファイナルの5日後、9.11が起きたんだ」

そして2019年、この伝説のバンドは結成50年を、PANTAとTOSHIは、それぞれの音楽活動を重ねながら70歳を迎えた。

「ドキュメンタリー制作が始まって、50周年プロジェクトで1年間、イベントやあちこちのステージを映像に残して、2月2日に古稀祝いのライブをやって。そうしたら、自粛だよ。これ、1年か半年か遅かったら、ライブはできないし、撮影もできなかったよね。ぎりぎりのタイミングだった」

2019年から若手の実力派が参加、6人編成で活動している。左からベース宮田岳、キーボードおおくぼけい、PANTA、TOSHI、ドラム樋口素之助、ギター澤竜次

その記録映画のエンドロール用に書いたのが新曲の『絶景かな』。撮影は3月末に、人気のない渋谷のライブハウスで行われた。

「いろいろ能書き垂れてきたけど、今までよく殺されずに済んだな。とにかく今、君と見ている未来は絶景かな、っていう歌。コロナの前に書いたんだけど、まさに今、そういう気持ち」

活動を停止していたバンドは7月、無観客で配信ライブを行った。

「配信なんてね、ライブに対する背信行為じゃないかって。けど、功罪問わず、まずはやってみようと。やって悔やめの精神でね。最初で最後のつもりだったんだけど、実際にやってみたら課題がたくさん見つかった。やりたいことがたくさん見つかったんだよね。

ミュージシャンもスタッフも、できることはたくさんある。若手も、サザンも(山下)達郎も配信にトライしてる。エネルギッシュだよ。どんどん進化していくよね。非合法なことは別として、なんでもありなんだ、今」

未来は、希望に満ちている

世界は、もう元には戻れませんから。音楽も出版も、全部。今、世界中がスタートラインに立って、進化していく。面倒だけど、元には戻れない以上、進化するしかないでしょ。大きく変革していくんだよ、みんなで。未来はね、なるようになる。自分も他人も自由に解き放って、この素晴らしい世界をさ、絶景かなって眺めながらね」

「なんで?なんで?と、いつも思っている。疑問がね、次々に湧いてくるんだよ」PANTAを動かしているのは、好奇心と情動。それを自分の言葉で歌い続ける

PANTAの語り口は、やわらかく熱い。歳を重ねたからではなく、これが、この人の本質なのだ。

「オリジナルでいたい。自分の言葉で歌いたい。今、歌いたいことがたくさんあるんだよ」

音楽界が急激にシュリンクしたコロナ禍にあっても、PANTAには、抑えがたい情動と、なにか、希望が見えているようだった。

  • 写真菊池茂夫/©︎2020 ZK PROJECT

    映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』東京・新宿K’s cinemaで公開中。ほか全国で順次公開予定

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