DV、性犯罪…表沙汰にしにくい女のトラブルに効く「おとめ六法」

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犯罪被害者の支援を続ける弁護士2名による、女性が遭いやすいトラブルに関する法律をまとめた書籍『おとめ六法』(KADOKAWA)が話題だ。

『おとめ六法』上谷さくら・岸本学共著(KADOKAWA)

「女性向けの法律の本を作りたい」という、編集者のオファーにより、弁護士の岸本学氏、上谷さくら氏がまとめた本書は、恋愛のトラブルにはじまり、SNSやインターネット、学校や仕事、結婚など、あらゆる世代の女性の困りごとについて、アドバイスが明確に示されている。

本書に込めた思いを、共著者の上谷さくら氏に聞いた。

『おとめ六法』共著者の弁護士・上谷さくら氏

——本書では「恋愛」「SNS・インターネット」「学校」など6つの章に分け、様々な相談とその解決法が示されています。

一例を挙げれば「嫌だと言っているのに性行為をさせられる」といった相談や「SNSで知り合った相手に裸の写真を送ったところ、インターネットにその写真が流れていることがわかった」などですが、これらは先生が普段、女性から多く受ける相談事を、本書に盛り込んでいるのでしょうか?(高橋ユキ氏 以下同)

「基本的に私と岸本先生が受けたことのある事例を少し抽象化したものです。守秘義務もあるのでそのまま出している事例はありませんが、似たような事例をミックスしたり場面を変えたりしています。日頃受けている相談の再現に近いと思っていただいて構わないです」(『おとめ六法』共著者・上谷さくら氏 以下同)

——「実父が勝手に10代前半の娘の自室に入りベッドに入ってきた。体を触り、男性器を口の中に入れてきた」というような家族からの性被害も?

「実父や義父が娘に、というのはそれなりによくある話です。子供の被害で多いのは“関係性”を利用したものです。親はもちろんですが学校の先生、塾の先生、スポーツ教室の先生、よく遊んでくれる近所のお兄ちゃん。

保護者も当事者である子供も、『まさかその人が変なことするわけがない』という元々の信頼感があるんですよ。そして子供本人は、被害を受けた時点では『別に変なことをされてるわけじゃない』と思ってしまう。また相手から『これは2人だけの秘密だよ』とか『内緒だよ』などと言われると、自分が特別に大事にされていると思ってしまうんです。それに子供はその約束を素直に守ろうとするんですよね。

最終的に変だと気づいた時には中3とかになっていたりする。『内緒だよ』は多いです」

——幼い頃に性被害を受けた場合、その行為の意味を大きくなって知り、傷つくのではと心配する親御さんの調書など、刑事裁判で聞いたことがあるのですが。

「例えば5歳6歳でそういう被害にあったとき、その時は分かっていなくても、性教育が始まる10歳頃にはだんだんとその意味が分かってきます。何も症状がない状態がずっと続いていてもそのときにPTSDが発症してしまったりするんです。

一方で、被害後にPTSDを発症して、友達と頻繁にトラブルを起こすようになったり、性格が別人のように変わったりする場合もあります。ただそれも、定期的にケアを受けていけば回復できますし、直後から必ず専門家と繋がっておくことが大事です。

専門家がおっしゃるには、思春期、初めての彼氏ができたとき、初めてのセックスのときというタイミングで、こうした性被害の記憶を思い出し不安定になることがあるのだそうです。その時に備えて、すぐに先生とつながるという体制を整えておくこともすごく大事です。

見なかったこと、なかったことにしても忘れられないし、だんだん意味がわかって来て悪化するので、それはきちんと専門家に任せて、親は、子供に対しては『体調大丈夫かな』『ご飯食べられてる?』とか『また先生のところに行きたくなったらいつでも言ってね』とか、そんなふうに接する感じですかね」

——もし子供が被害にあった場合、親として事件のことにはどのように触れるのがよいのでしょうか。

「親は、直接子供に根掘り葉掘り聞いちゃいけないんですね。というのは、事前に親が『こうじゃないの?』『ああじゃないの?』と聞いていると、刑事事件として調べようとする時に、子供のなかで、自分の体験と人から聞いた話がごちゃ混ぜになってしまうんです。結果、供述の信用性に疑いが出てきてしまって無罪になってしまう場合も……。

だから親はそこを突っ込んじゃいけなくて、まず警察に行って調書をとってもらうのが大事です。『何かおかしい、性的なことがありそうだ』と判断したら、警察やワンストップセンターなどの相談機関にいくのが一番大事で、何があったかは警察から聞いてください」

——「強制性交等」や「妊娠と中絶」の相談にも関係ありますが、最近、性的暴行の結果妊娠した際の人工中絶手術について、医療機関が「加害者である父の同意も求める」ケースが相次いでいるというニュースに驚きました。先生の元にも、そうした相談が寄せられましたか? またこうした女性たちが手術のために病院を転々とするという事態もあるのでしょうか。

「実はこの件は、西日本のある弁護士さんから相談を受けて知りました。その弁護士さんによれば、相談者は未成年者の元彼に暴行されて中絶したい、警察も入って事件になっているけど加害者は逃げてまだ捕まっていない状態。でもワンストップセンターと連携している病院に行っているのに『加害者の同意がないと手術できない』と言われたということです。

あちこち回っても同じ対応だったらしく、その時は『東京でもそうですか? 地域的な問題でしょうか』という相談を受けたんですね。そこで知り合いの産婦人科の先生に聞いたら『それはもう全国的な問題ですよ』と言われてすごく驚いたんです。

初期のうちに中絶したほうが母体としては安全なんですよね。初期を過ぎると手術ではなく死産になりますので、母体に負担もかかり手術費用も金額が全然違う。入院も必要になりますし。しかも被害者としては、このまま中絶できなかったらどうしよう、という不安がありますよね」

——性的暴行の被害に遭い、その結果妊娠した場合、法的には加害者の同意は不要ですよね。

「もちろん、母体保護法に規定があって、経済的理由などで既婚者が中絶するときは、本人と配偶者の同意が必要と定められていますが、性的暴行の場合、本人の同意があれば手術は可能です。

おそらく今の状態は『配偶者の同意が必要』という『配偶者』を拡大解釈して、おそらく『父親と思われる人』としているんだと考えられます。どうやら加害者から訴えられることを恐れての対応のようなんですが、条文にない案件を勝手に付加して、それで中絶を断っているとすれば言語道断です。

母体保護法に関する厚生労働省の通達には、人工妊娠中絶の項目に『いやしくもいわゆる和姦によって妊娠した者が、この規定に便乗して人工妊娠中絶を行うことがないよう十分指導されたいこと』などと記されています。しかもこれは、昭和28年の通達文言がそのまま残っている。昭和28年の条文が令和に生きてるっていうのが恐ろしいことです。

だから、これはもう通達を厚労省に新たに出し直してもらわないといけないなと思っています。先日は日本医師会に要望書を出しましたが、今度は厚労省に、『加害者の同意を取る必要はない』という通達を出してもらおうと動いています。

そもそも配偶者の同意がいるというのも国際社会から強く批判されているんですけどね」

——こうした間違った運用の結果、人工妊娠中絶ができなかった場合、手術を断った医師に損害賠償なども求めることができますか?

「ええ。レイプによって妊娠した子を産み育てる精神的苦痛や費用等を請求することは、十分可能だと思います。医師は、むしろ加害者に訴えられる心配より被害者に訴えられる心配をしたほうがいいと思います」

——『おとめ六法』という書籍名ではありますが、女の子を育てるお父さんや、恋人の困りごとを理解したい方など、男性にもすごく参考になる本なのではないかと感じました。

「男性も、自分の奥さんや子供、同僚などに対して、知らないうちに自分が何かやらかしているかもしれないと認識すべきです。いわゆる加害行為を故意にやっている人は本当に少なくて、何気なくやらかしている人が大半。彼女の裸の写真を友達に見せちゃったりね。そういう話はよくあることなので、どういうことで女性が傷ついているのか。

男性も育休を取るようになり、それで降格なんてことも起こっている今、立場を変えたら男でも嫌ということはいっぱいあると思うんです。女性に対してこういう振る舞いをするとNGなんだなということも知ってほしいですし、男性同士でも当てはまる話は山ほどあると思います。

老若男女、いろんな人に読んでほしいです。何か困ったことがあったとき、そういえば本に書いてあったな、と思い出してもらえたらいいなと思っています」

上谷さくら 弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司

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  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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