低収入・非キラキラ系ユーチューバーの動画がいま、なぜウケる?

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新型コロナウィルス感染拡大がまだまだ収束の兆しをみせない中、経済活動が抑えられることによる企業倒産や閉店が相次いでいる。

非正規労働者には景気の悪化で仕事が減ったり仕事を失ったりする人も増えているが、その一方でお金を使わずに粛々と暮らし、丁寧かつ充実した日常を送る人々もーー。

そんな何気ない暮らしの配信で、注目を集めるYouTuberが今、増えている。

新型コロナウイルス感染拡大が収束しない中、非正規労働者には仕事が減ったり仕事を失ったりする人も増えている 写真:松尾/アフロ

顔出し、喋りなしでも、チャンネル登録者数 4.61万人!

「視聴者からの反響に驚きました。『こんな働き方、生き方もあるんだ』『辛かったけど気持ちが楽になりました』というようなコメントをいただいています」

と語るのは、そうしたYouTuberの1人として「結婚願望ゼロ独身パート勤務の暮らし」チャンネルを運営する、あおみ氏。パートで働くアラサーの独身女性だ。4.61万人が登録するチャンネルには、あおみさんの「パート勤務低収入ワンルームの一人暮らしの日常」がアップされており、緊急事態宣言下の5月中旬に配信された回は、100万回視聴を超えた。

 

動画は「食べるの大好き」というあおみ氏が部屋で1人食事をする様子を映したものが多く、サムネイルにはおいしそうな料理写真が並ぶ。動画には本人の顔出しも、賑やかなお喋りも無い。キッチンで料理を作り、それを食べ終わるまでが字幕とともに淡々と流れる。凝った演出もきわどいテーマもないのに、多くの人が惹き付けられるのは何故なのか。

ーーYouTuberを始めたきっかけは?

「きっかけはこれといって特になく、意気込んで始めたわけでもないのであまり覚えていないのですが、物を減らし始めた時にたまたまミニマリストさんのYouTubeを観たんです。その関連動画で日常系の動画が出てきて、こういうジャンルがあるのだと知りました。

YouTubeチャンネルはヒカキンさんや、はじめしゃちょーさんのような企画物のイメージがあり私とは無縁と思っていたのですが、日常系なら私でも出来そうだなと思ったのが始まりかもしれません。インスタやTwitterやブログはやったことがあったので、動画のSNSという感覚で始めました」(「結婚願望ゼロ独身パート勤務の暮らし」あおみ氏 以下同)

ーーどんなテーマで動画を配信していますか?

「日常vlog(vlog=動画版のブログ)です。食べることが好きなので自炊動画が多くなっています。料理は特に好きなわけではなく上手くもないので、これでは観ている側もつまらないだろう思い、生活費や“ゆるミニマリスト”な話、生活スタイルについても字幕で話しています。

会社員(正社員)として働き、結婚して子供を産むのが良いとされる風潮はまだまだ残っているようですが、私は独身でパート。自分が生きるための最低限の労働をして、自分の時間を楽しむ暮らしを選んでいるので、それを動画にしています」

ーー動画配信を始めて感じたことは?

私の話に共感していただくことが多くて驚いています。会社員という働き方を否定するつもりもなく、私の生活スタイルを推奨するつもりもないのですが、動画を見て何かを感じたり何かを考えたり、見てくださっている方に何かしらのプラスがあれば嬉しいです。

動画配信で変わったこととしては、視力が落ちました(笑)。動画を作るのに物凄く時間がかかるので、視力低下と頭痛はもれなくついてきます。寝ても覚めても動画を作っている時期があったのでさすがに体に悪いと思い、今は程々にのんびりやっています」

ーー収入に関係なく、暮らしを楽しむコツは?

「『自分が好きなことをしているか』『自分が嫌なことをしていないか』だと思います。好きなことが特に思いつかない場合は、自分が嫌なことをしない人生にすれば、自ずと幸福度は上がると考えています。

私は家でネットをしてドラマを観てご飯を食べるという、言ってしまえば『何もしない時間』が好きでたまらないんです。たまに気分転換と運動も兼ねて外に出ますが(主にスーパーですね笑)、私は超内向型人間なので外に出て人に会っている時間が長いと疲れてしまいます。

たまに会う分にはすごく楽しいし、おしゃべりも弾みますが程々で良いのです。私の場合、外に出る時間を少なくすることで幸福度が上がっています。将来の夢は、特にありません。自分で歩けて自分でご飯が食べられて、ネットができれば幸せです」

コロナ後に必要なのは、自分の価値観に沿って生きる静かな強さ

話を聞いたあおみ氏の他にも、「安定した収入に支えられたキラキラした日常」とは180度違う毎日を淡々と発信するYouTuberが続々と出てきており、多くの人に支持されている。

ソーシャルディスタンスやテレワークなど、コロナウィルスは私たちの日常を大きく変えた。これまで社会が良しとする価値観を疑わずに受け入れてきた人は、世の中の変化に大きな不安を感じているのではないだろうか。

先行きが見えない時代を乗り切るには、揺るがない自分が必要だ。「自分が好きなこと」「嫌なこと」をしっかりと把握し、そこからぶれない生き方を選ぶYouTuberたちには一種の潔さを感じる。日常系YouTuberが注目される背景には、社会の評価を求めるのではなく、自分の価値観に沿って自然体で生きる静かな強さに励まされる人が多いのかもしれない。

  • 取材・文浜千鳥

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