ライバル脚本家が松嶋菜々子『やまとなでしこ』を一番と評したワケ | FRIDAYデジタル

ライバル脚本家が松嶋菜々子『やまとなでしこ』を一番と評したワケ

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すっぴんでもオーラ全開の松嶋菜々子(‘19年)
すっぴんでもオーラ全開の松嶋菜々子(‘19年)

コロナ禍でドラマ撮影が遅れた影響で、”20周年特別編”として二夜に渡って甦ったドラマ『やまとなでしこ』(フジテレビ系)。

貧しい家に育ち、最高のお金持ちとの結婚を目指して”合コンの女王”となるCAの桜子(松嶋菜々子)と、将来を嘱望される数学者だったが家庭の事情で留学を切り上げ、魚屋を継いだ欧介(堤真一)とのロマンチック・コメディを描いたこの作品。‘00年12月18日に放送された最終話の平均視聴率は、なんと34.2%。恋愛ドラマの金字塔を打ち立てた。

「80年代のトレンディドラマがバブル崩壊と共に恋愛ドラマも様変わり。そんな中、登場したのが‘91年の1月期にスタートした坂元裕二脚本の『東京ラブストーリー』や、野島伸司脚本の『101回目のプロポーズ』(共にフジテレビ系)。これをきっかけに、新たな脚本家による恋愛ドラマが数多く誕生しました。

その中でも‘92年『素顔のままで』、‘93年『あすなろ白書』(共にフジテレビ系)、‘95年『愛していると言ってくれ』(TBS系)、‘96年『ロングバケーション』(フジテレビ系)を大ヒットさせ、”恋愛の神様”と呼ばれるようになった脚本家・北川悦吏子に、猛烈なライバル心を燃やしていたのが『やまとなでしこ』の脚本を手掛けた中園ミホではないでしょうか」(ワイドショー関係者)

‘95年『For You』(フジテレビ系)、‘96年『Age,35恋しくて』(TBS系)、‘97年『不機嫌な果実』(TBS系)と数多くのヒット作に恵まれた中園。だが、みずからの体験が色濃く出ているのは、中山美穂がシングルマザーを演じて話題を呼んだ『For You』のみ。綿密な取材を信条とする”取材の中園”は、フジテレビ社員とCAの合コンを設定するなどきめ細かい取材を行い、松嶋演じる桜子像を作り上げていく。

「今回の特別編を放送するにあたり、松嶋自身も『愛よりもお金とはっきり口にする桜子に驚くかもしれません』とメッセージを寄せていますが、当初『こんなヒロインで大丈夫か』という声は制作陣からも上がっていました。ところが放送が始まると、大きな反響があり、手応えをつかんだ中園は”女たちが言えずにいる本音を、きれい事でなく書いてもいいんだ”という確信に至っています」(前出・ワイドショー関係者)

みずから”無頼派”と名乗り、10代の半ばから二回りも三回りも年上の男たちと浮名を流し、34歳の時シングルマザーとなり、脚本家として生きて来た中園には、ある覚悟があった。

「中園の描く主人公は『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)にしろ、『ハケンの品格』(日本テレビ系)にしろ、いずれも逆境を生きる孤高のヒロイン。中園自身も『逆境に興味があって、そこから這い上がるドラマが好き。逆境から、人生がどう変わっていくのか描きたい』とインタビューに答えています」(制作会社プロデューサー)

思えば、‘18年に放送された大河ドラマ『西郷どん』(中園脚本)の主人公・西郷隆盛(鈴木亮平)も貧しさから這い上がって、2度の島流しを乗り越え、国事に奔走した薩摩隼人。“逆境”こそ、中園を奮い立たせる媚薬なのかもしれない。

今回の“特別編”を観て、入らなくて残念に思ったシーンがいくつかある。

「中でも最終回で、大病院の御曹司・東十条司(東幹久)との結婚式をすっぽかし、東十条の親に責められまくる桜子が『私が悪ぅございました』を連発して謝る場面は、ぜひ入れて欲しかった。なぜなら、あの場面があるからこそ海を見て桜子が『私は悪くなーい!』と叫ぶシーンが活きてくる。

中園自身も『人生には、ふとケモノ道に入り込んでしまうことがある。それでも、この先に必ず良いことがあると信じて生きる』『これからもそんな女や男を書き続けたい』と思いを語っています。あの自己肯定感の強さこそ、中園脚本の真骨頂ではないでしょうか」(前出・制作会社プロデューサー)

当時、中園がライバル心をむき出しにしていたであろう脚本家の北川悦吏子は、今回の“特別編”の放送決定を知りツイッターで

《一番、中園さんらしい作品だよね。あの頃は仲が悪かったです。今は仲良いです》

と当時を忍ばせるコメントも寄せている。コロナ禍で、様々の名作ドラマが甦ったからこその邂逅。これもドラマファンにとって、楽しみの一つに違いない。

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  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO坂口靖子

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