中居正広「音楽の日」での“後輩イジリ”に見る稀有な愛され力 | FRIDAYデジタル

中居正広「音楽の日」での“後輩イジリ”に見る稀有な愛され力

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あの瞬間から…

いろいろな意味で、記憶に深く刻まれる生放送になった。

7月18日にオンエアされたTBS系大型音楽番組「音楽の日2020」。東日本大震災の年に「音楽で日本を元気に」というテーマで始まったこの番組も、今年で10回目を迎えた。9時間超えの生放送だったが、夜7時から11時18分までの平均視聴率は13.6%を記録(午後2時から7時までは9.9%)。

番組ホームページで司会の中居正広は、「今までの年とは違い、ある意味で真価を問われるのではないかと感じています」とコメントしていたが、日本中がまだまだコロナ禍にあえぎ、さらに多くの地域が水害に苦しめられる未曾有の事態の中で、まさに音楽に勇気づけられ、励まされる思いがした視聴者も多かったのではないだろうか。

ジャニーズ事務所の退所会見で、元SMAPのメンバーについても語った中居正広
ジャニーズ事務所の退所会見で、元SMAPのメンバーについても語った中居正広

この番組を象徴しているのが、中居正広の存在である。紅白歌合戦の単独司会をはじめとして、ジャニーズ事務所のMC枠を情報番組やバラエティ、スポーツのみならず、“歌番組”にまで広げたトーク部門の圧倒的功労者。彼がジャニーズ事務所を退社した今年、ジャニーズからは総勢14組が出演したが、一昨年までは、嵐の櫻井翔が司会を務める「THE MUSIC DAY」(日テレ系)との棲み分けなのか、ジャニーズ所属の出演アーティストは、中居と縁のあるKinKi KidsやKis-My-Ft2など、かなり限定されていた。

昨年7月9日に事務所社長であるジャニー喜多川氏が逝去。同年の「音楽の日」では、その追悼の意味を込めたコーナーで、ジャニーズJr.のローラースケートを得意とする5人組Hi Hi Jetsが、TBSの坂をローラーで駆け上り、デビュー発表前のSnow Manが腹筋太鼓を披露するなどし、それを嵐やKinKi KidsやV6、(Snow Manに同期もいる)Hey! Say! JUMPが見守るなど、ジャニヲタにとって後世まで語り継ぎたくなるような胸熱な場面が展開された。

そして今年。前日の17日から、ジャニーズ直属の“中居チルドレン”であるKis-My-Ft2のメンバーは、有料のブログに「音楽の日」リハーサルであることを報告し、「久しぶりに中居さんと会えるのが楽しみ」と綴った。

当日も、SexyZoneの中島健人が、「音楽番組の司会をすることになった時、中居さんとお会いしてアドバイスを頂いた」というエピソードを本人を目の前にして披露したり、往年のヒットメドレーのコーナーで、SMAPの「BANG! BANG! バカンス」がほぼフルコーラスで流れ、ツートップと呼ばれる中居と木村拓哉の背中合わせ場面が見られるなど、中居MCならではのスペシャル感が満載。

King&Princeのパフォーマンスを眩しそうに見つめ、直後に登場したKis-My-Ft2のメンバーのキラキラ感のなさをいじるなど、ジャニーズは去っても後輩との関係性はそのままであることが、この番組を通してはっきりと伝わってきた。

「音楽の日」初登場だった関ジャニ∞やジャニーズWESTとは、スタジオが離れていてい絡みはなかったが、Kis-My-Ft2の登場辺りから、歌番組では常に淡々と進行する中居の表情が一気にほぐれるようになった。

以前、SMAPのリーダーとして歌手活動も行なっていた時は、司会からパフォーマーになった時のギャップに、中居のエンターティナーとしての才能がギラギラと光るのを感じていたが、SMAPが解散し、「音楽の日」で司会に専念するようになってからは、冷静に淡々と進行するスマートな大人っぽさの中で、後輩たちを前にガキ大将のようなヤンチャさ、いたずらっ子の顔が表出する瞬間が楽しみになった。そういう意味でこの日は、キスマイやKinKi Kidsとの絡みの中で、前からずっと変わらない中居の心底楽しそうな笑顔が見られたことに、音楽ではない部分でも元気をもらった。

特に、キンキの新曲「KANZAI BOYA」で堂本光一が、いつもジャニー氏が被っていたキャップにサングラス姿で歌い出したときは、なんとも言えず嬉しそうで、人が喜んでいる姿を見るのはこんなにも嬉しいものなのかと、あらためて実感したほどだ。

思い起こせばSMAPのライヴでも、誰よりもSMAPを愛し、誰よりもライヴを楽しんでいたのが中居だった。歌がヘタとかダンスが揃わないとか、いろんなことをネタにしていたSMAPのライヴがとてつもなく楽しかったのは、グローバル化する社会で最も大切な「多様性を受け入れる」ことを、SMAPがいち早く体現していたからではないだろうか。自分たちの弱点を恥じたり隠したりするのではなく、“個性”という一つの武器にする。それがつまり、ジャニーイズムでもあるのだろう。

昨年、嵐は、SnowManのパフォーマンス直後に登場し、二宮和也は、「今の時代に我々がオーディションを受けたら、受かっていなかった。そのくらい、Jr.のレベルは上がっている」というようなコメントをしていた。でも、それは今の子供たちの方がダンスに触れる機会が多いから踊り慣れていたりするだけで、もし今、二宮のような強烈な個性を持った子供がオーディションを受けていたら、それはそれで目立つだろうし、タッキーの目にも留まるに違いない。

「何もない」ところから始まっているからこそ、ジャニーズのタレントには、いい意味での雑草魂がある。そして中居は、その雑草魂があるから、今も弱者に寄り添う視線を忘れないでいるのだろう。

筆者が好きな中居の名言に「“好き”を作らない」というのがある。「“好き”を作ってしまったら、必然的に、“苦手”とか“嫌い”という感情も生まれてしまうんじゃないかと思うから」と彼は言う。トップスターになって仕事の幅が広がっていくと、媚を売ってくる人もいただろうし、利用しようとする人もいただろう。そんな中で中居は常に、困っている人や、弱っている人に手を差し伸べる。「ニュースな会」のような報道番組の司会をしていても、ニュートラルな姿勢を保ち続ける。

「音楽で日本を活気づけたい」という目的を持ってスタートした「音楽の日」は、中居がジャニーズを離れた今年、初めて14組ものジャニーズグループが出演した。9時間半、それぞれのアーティストのそれぞれの歌を聴きながら、あらためて、日本にはたくさんの応援歌があることに気付かされた。

大トリを務めた嵐を紹介する際、「来年以降、ちょっとお休みすることになっているそうですが」と、ファンを安心させるように、“ちょっとお休み”という言葉を使ったこと。普段は静かな大野智が中居に噛みつく、「うたばん」でお馴染みだった「下克上コント」が2年連続で展開されたこと。そういった安定の気遣いと幸福な茶番が共存していることにも、「やっぱりジャニーズっていいな」としみじみした。

何より、「来年またお会いしましょう」の言葉に、元気をもらった。こうして、たくさんの歌い継がれる歌があることに。

  • 取材・文喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。

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