美女グラビアにグルメ情報…浮世絵は江戸のフライデーだった!?

「おいしい浮世絵」でタイムスリップ

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「写真も雑誌もSNSもなかった時代、浮世絵は、江戸の流行を伝えるツールだったです。江戸時代の『FRIDAY』だね」

と話すのは、開催中の「おいしい浮世絵展」を監修した日本美術史学者で北斎館館長の安村敏信先生。

「春の虹蜺」(歌川国芳、味の素食の文化センター蔵)うなぎを口にするまさにそのとき、空に虹がかかる。一瞬、虹に気をとられた表情の半開きの唇がなんとも色っぽい

「うなぎの蒲焼とか天ぷらとか握り寿司とか、今では高級な料理だけど、このころは庶民の食べ物。美女が、串刺しのうなぎを食べようとしてる絵は、色彩も豊かで、女性がはつらつとしている。天ぷらも、串刺しでね、スナック感覚で食べてたんです。お寿司は、基本的に仕出し、今でいうならウーバーイーツかな。それと、屋台フード。川べりに並んだ屋台に大きな握り寿司が並んでたり、ほんと、浮世絵には当時の庶民の風俗がたっぷり描かれています」

「風俗三十二相 むまさう 嘉永年間女郎之風俗」(月岡芳年、味の素食の文化センター蔵)タイトルの通り、女郎さんが休憩時間だろうか、このころ登場した食べ物「天ぷら」をつまんでいる。浮世絵には、このように「社会風俗」を切り取った作品も多い

屋台フードのルーツは蕎麦

「江戸の街にはかなり多くの蕎麦の屋台がありましたね。蕎麦屋を描いた作品がたくさん残っています。三代歌川豊国が描いている二八蕎麦がね、1杯16文。これは今の値段にして320円。これは僕の独自調査なんだけど、現代の庶民の蕎麦っていうと「富士そば」、ここのかけそばの値段から算出して、1文=20円、そうするとね、当時の食べ物の値段がだいたいわかった。串ざしの天ぷらは1本4文で、80円か、と(笑)」

美人画だけじゃない、猫漫画も!

芸術品として驚くような高値で国際的に取引されることもある浮世絵だが、じつは、当時の庶民にとってはメディアとしての役割を担っていたという。美人画はもちろん、人気の歌舞伎役者の絵がブロマイド的に人気を博したり、猫をモチーフにした漫画のような作品もある。

「東都高名會席盡(とうとこうめいかいせきづくし)  洲崎風景 武蔵屋 弁慶」(三代歌川豊国(国貞)、歌川広重、味の素食の文化センター蔵 *)人気の役者、三代目嵐吉三郎を描いた。このシリーズは50枚綴りで、八代目市川団十郎や四代目中村歌右衛門の姿もみられる

「歌川国芳は大の猫好きで、猫の絵をたくさん描いています。この『其のまゝ地口 猫飼好五十三疋』は、東海道五十三次の各宿を、猫にまつわる駄洒落で表した戯画、今でいう漫画。猫動画が人気の現代にも通じる感覚ですね」

「其まゝ地口 猫飼好五十三疋」(歌川国芳、渡邊木版美術画舗蔵)日本橋から京の都まで、猫で構成。よく見ると「天ぷらを狙っている猫」(右下)や「焼き蛤を睨む猫」(左上)の姿も。猫好きらしく、猫の肢体、表情がじつに豊かなことに驚く

食と美男美女と猫がキラーコンテンツとは、たしかにまるで…。

「浮世絵っていうのは、写真の代わり。当時の『社会風俗』を映す速報だったんです。今、これが売れている!とか、人気の人や物、話題を描いています」

「東都高名會席盡(とうとこうめいかいせきづくし) まつのすし すしや娘お里」(三代歌川豊国(国貞)、歌川広重、味の素食の文化センター *)江戸屈指のすし屋「松の鮨」。「東都高名會席盡」は、実際の店や、料理の名前をひっかけた謎解きになっている

「ぼくはもともと、江戸時代の絵画、肉筆画が専門なんだけど、浮世絵は肉筆でなく版画にも、こういうメディアとしてのおもしろみが豊かでね。なにかを表そう、伝えようという思いがありますからね」

「食をテーマにあちこちのコレクションから集めた」というこのユニークな展覧会。食文化だけでなく、暮らしや季節のできごと、役者や美人たちのようすも見られる。

「グルメ情報があり、美人画があり、相撲のようなスポーツもあり。浮世絵を見ることは、まさに江戸時代の『FRIDAY』を眺めるようなもの。庶民の暮らしの、今に通じる部分も多く発見できます。不思議なタイムスリップを体験してみてください」

  • 「おいしい浮世絵展〜北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい〜」東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて9月13日まで開催中(展示替えのため、*マークの作品の展示は、8月13日まで)

    入場には、オンライン予約が必要。 詳しくは公式サイトでhttps://oishii-ukiyoe.jp

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