「少年刑務所を出た若者」を支援する経営者の壮絶人生 | FRIDAYデジタル

「少年刑務所を出た若者」を支援する経営者の壮絶人生

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人生は長い。長いからこそ失敗することもある。多くの失敗は、挽回できる。しかし、その失敗が「犯罪」だった場合、そこから立ち直ることはなかなか難しい。

諸外国に比べ犯罪率が低い日本。良し悪しは別として、一度犯罪に手を染めれば、周りからは冷たい目で見られてしまうのが現実だ。

しかし、そんな偏見をものともせず、更生し未来に向かって懸命に生きている人たちもいる。

27歳のAさんは、22歳の時に無免許運転で交通事故を起こし、少年刑務所に入った。退院後、ある人物と出会ったことで、人生を立て直すことができたという。

Aさんはまず、少年院に入った直後のことを振り返る。

「同乗者の友人を死なせてしまったことで入ることになりました。期間は4年。当時は喧嘩っ早くて、少年刑務所でも何度も問題を起こしました。少年刑務所では問題を起こすと懲罰を受けるルールがあったのですが、僕はその懲罰を何度も受けました」

少年刑務所でも、模範生であれば夕食後から消灯までは本を読んだり、手紙を書くなど自由に過ごせる。しかし、懲罰を受けるとその自由がなくなるという。

「休憩時間の5分や昼食後の20分の休憩でさえ喧嘩してましたから、教官たちには気に入られていませんでした。当然僕が悪いんですが、少年刑務所でどんどん自由がなくなり、苦しかったですね」

早くここから出たいと思っていたAさん。しかし、出所が近くにつれ不安が募ったという。

「教官から『お前はシャバで普通に生活するのは無理だ』と言われていて……。表面上は平気な顔でいましたが、内心は不安でしかなかったです。

そんななか、出所の3ヶ月前から就労支援があって、出所後の就職先を探すためにいろいろな会社の人にあって話を聞くんですが、そこで『社長』に会ったんです。社長の話を聞いて、すぐに『俺もこういう人になりたい!』と思い、社長の元で働くことを決めました。不安だった自分を救ってくれて、感謝しかありません」

Aさんが目を輝かせて話す「社長」とは、(株)Saaaveの現代表で取締役会長・星山忠俊氏のことである。星山氏は2019年の春から更生保護活動を始め、少年刑務所から出所した人たちを会社に受け入れてきた。

星山氏は、なぜ出所者の就労支援を行うようになったのだろうか。

「私が起業したころ、仕事は順調に伸びていったのですが、人手不足で大きく悩んでいました。人を採用するためにいろいろと動く中で、刑務所を出院した人たちの就職を支援する『就業支援制度』を知り、更生保護活動を始めました。

実は私自身、若い時に過ちをおかしています。人身事故を起こしてしまったんです。しかし、当時、私に温かい手を差し伸べてくださった方々との出会いのおかげで、立ち直ることができました。その経験も生かして、どんな過去があっても、更生したいという気持ちがある若い人たちの応援ができれば…そんな気持ちをもったのが、一つのきっかけでした」

星山氏は当時を振り返り、真面目に人生と向き合うことで、未来を変えることができると熱く語る。

「田舎は長野で、18歳の時にミュージシャンを目指して上京しました。26歳くらいまで真剣に夢を追いかけていましたね。バンドをやっていて腕にタトゥーもいれていました」

しかし、付き合っていた彼女が妊娠したことをきっかけに音楽を諦めることに。

「やはり子供ができたので責任がありますから、働こうと考えました。しかし、腕にタトゥーが入っているからという理由で、どの会社にも採用してもらえない。頭を抱えていたところ、友人から『建設現場の足場を組む仕事は、真面目にやればタトゥーのことも、今までの経歴も関係ないよ』と言われまして。そのひとことがきっかけで『よしっ!それならやってみよう』と足場を組む会社に就職しました」

悲しいことに、人身事故を起こしたのは就職して間も無くのことだった。

「花火大会へ車で出かけた時、道路沿いのフェンスから突然、人が落ちてきて……車がその人に乗り上げてしまい、即死でした。しかし、死亡した相手方に過失があるということで、私は実刑を受けることはありませんでした。とはいえ、私に対して偏見を持つ人もいましたし、私自身も人が亡くなったことで深く罪の意識を感じ、そのことを償う意味と、会社へ迷惑をかけないように退職しようとしたところ、当時の社長が『それなら独立して、うちの会社の下請けをしたらどうだ』と言ってくださって。

その一言のおかげで、小さくても自分の会社で頑張ってみようと起業することができました。事故を起こした私を温かく見守ってくださり、本当にありがたいと思いました」

かつての自分と同じような若者をサポートしたいと考え、星山さんは更生保護活動を始めた。熱い思いで始めた活動だが、しかしたびたび困難に見舞われたという。

「出所後に一度自立支援ホームやNPO法人を経てから社会に出るケースと、少年院や刑務所からダイレクトに会社に入るケースと、大きく二つタイプがあるんですが、二つのタイプでまったく違うのです。出所後にダイレクトに入社する場合は、更生に真剣でこちらも向き合いやすいのですが、一度外に出てしまうと、気が緩んでいる場合が多い。

良くも悪くも世間が自分たちに向ける目をわかっているし、人を頼ることを覚えているのと同時に裏切ることも覚えている。昨年末に『入社したい』とやってきた少年は、出所後就職先を決める前に一度社会に出てから、うちに来ました。更生する気持ちをまじめに語っており、『仕事が見つからずお金もない』というので、入社させることを決めて、少しばかりですがお金を渡しました」

ところが、翌朝、お金と共に少年の姿は消えていたという。

「消えた少年は、きっと今後も同じことを繰り返すのかもしれません。そう思うと残念でなりません。ここにきてまじめに働けば、やり直せるチャンスがあったのに…。

しかし、私自身も罪の意識に苦しんだり、自分の居場所がわからなくなり自暴自棄になった時期もありますので、裏切られても裏切られても、心を折ることなく、支援を続けていきたいと思います」

一人で立ち直ることは難しい。誰かが支えてくれるからこそ、人はもう一度立ち上がれる。

  • 取材・文吉澤エリ

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